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第三十八話:竜国王への謁見

 国竜は高く空へと舞い上がると一直線に故郷・竜王国ロシキスへと向けて翼を向けた。

 もうすでに慣れた天空の風を切る冷たさに彼女は微塵も動じず、心配しているだろう王の下へと急ぐ。

王女レティアよ・・・あそこにリディア国の王子ソルディスがおるぞ』

 国竜が示したのは中規模ぐらいの旅の一座のものと思われる馬車の隊列だった。

 レティアには遠くてどこに彼らがいるのか解からないが、気配のみで感知するかのじょには王子ソルディスがどこにいるのか感じられるのだろう。

「無事だったか・・・」

 レティアは安堵の息を吐いた。

 無事でよかった。自分の命を大切にしない彼のことを少なからず心配はしていたが、どうやら杞憂で終わったようだ。

『近寄るか?』

「いや、あちらは目立つとまずいだろう・・・せっかく見つからずに逃げているのならそのままに」

 公衆の面前でこんな目立つモノが降りて来たら、折角のカムフラージュが台無しになってしまう。それに馬車の向きからして彼らが目指すのはロシキスとの国境に駐留するガイフィード将軍のところだろう。

 それだけわかっていれば、後から会いに行くことも可能だ。

「とにかく、義父殿の所に出向くのが何よりも優先だ・・・貴族の馬鹿共を押さえつけるための手助けも必要だろうしな」

 リディアの内乱を知った貴族は、国境に駐留しているガイフィード将軍の傘下の軍が無傷であることを頭に入れず確実に国土を拡大することを国王に進言しているだろう。

 自分のできることはたかが知れているが、それでも馬鹿な真似をしないように釘を刺さねばなるまい。

「問題は山積している・・・・急ごう」

 当初の目的よりも国竜を国外に出していたことに、貴族達はまたイヤミの十や二十ぐらいくれるだろう。

 レティアは今更ながらにうんざりしながら竜を駆った。




 ──────時守の里

 竜の後姿を見送りながら、ヘンリーは傍らの姉を見上げた。

 あの恐怖の一日から姉は男が傍によるのを怖がる。自分みたいに小さい人間はいいのだが、少しでも・・・20歳を越えているような男性に出会うとむちゃくちゃに暴れ、距離をおいて威嚇するようになった。

 最悪のことにはなっていないとこの里の女医はいったが、こんなに怯えるほどの恐怖を彼女が味わったことは間違いない。

 そして記憶が封印されたことにより、恐怖の本筋が見えなくなり・・・彼女はすべての男性に怯えるようになってしまった。

「なんで、記憶を消したんだろう・・・」

 その理由はヘンリーの手元に残された5通の手紙の中に記されているかもしれない。

「レティア、かえってくる?」

 つい先ほど旅立ってしまったレティアのことを待つように彼女はその場に座り込んだ。

「ええ、帰ってきますよ・・・だから、義姉さまが帰ってきたら驚かせるために何かつくりましょう」

 ヘンリーがそういうと彼女は「うん」と素直に頷いて、まだ幼い弟に手を出した。どうやら寂しいから手をつないで欲しいようだ。

「さ、いきましょう」

 ヘンリーは遣る瀬無い気持ちを隠しながら、必死に笑顔を作って見せた。




 ──────竜王国・ロシキス 王都・ローサリア

 突如として現れた国竜の姿に、王都の市民は歓喜の声をあげた。

 ロシキス国王・ライアン・ゼントリーブは王女帰還の言葉に安堵の息を吐くと、いち早く国竜の元へと駆けつけた。

「レティア・リストラル。ただいま、戻りました・・・義父殿、義母殿」

 あいかわらず固い言葉で帰還の挨拶をした義娘の姿を国王夫妻はしっかりと抱きしめた。

「お帰りなさい」

「よくぞ、戻った」

 歓迎の言葉をくれる二人に、レティアは少し複雑な顔をする。

 今から告げる言葉を聞いて彼らはどう思うのだろうか。だが、真実を告げなくては・・・問題を明らかにしなくてはならない。

「ルミエール・フィネア王女とヘンリー・アルバルト王子のことにつきましてご報告すべきことがございます」

 彼女はぎゅっと拳を握り締めると直立不動のまま、彼らに申し出た。

 硬い表情のまま自分たちを見つめる義娘に国王夫妻は訝しげな顔をした。

 周りに控えていた貴族達も何事かとレティアに注目する。彼女は下唇を噛みながら、それでもなんとか国王へと視線を送る。

「なにか、あったのか?」

 ただならぬ様子のレティアにようやく事の大きさを悟ったライアンは、彼女を伴い王の執務室へと移動した。

レティア、とりあえず帰郷です。

ライアン王夫妻は前王の娘であるレティアの伯父・伯母にあたる人たちですが、即位と同時にレティアが義娘となることを宣言したので、義父ちち義母ははと呼んでいます。

ちなみにレティアの父親は病死、母親は健在です。あまり社交が好きな人間ではないので王宮の奥でひっそりと暮らしています。

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