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第三十五話:同行の為の賭け

 すべての慰霊が終わり、一座が村を立つ日になった。

 ソルディスは行き先を替えたあの日からその表情を余り動かさなくなった。常に心がけていた笑顔も殆ど作ろうとはしない。

「もう出るんだって?」

 あの日以来、スターリングは常にソルディスの事をつねに気遣っていた。

 彼自身、仕事があり他の村にも行かなくてはならないだろうに、それすらキャンセルしてこの村に逗留しつづけていた。

「ああ、ガイフィード将軍の宿営地まで・・・」

 ソルディスの答えに彼は少し考えてから、にやりっと笑った。

「それじゃ、俺も連れてってくれよ。俺、もともと大将軍の部下になろうと思ってたんだ」

 スターリングの突然の申し出に傍にいたグランテが目を丸くした。

「どうするんだい?」

とちらりとソルディスを見ると、彼も虚を突かれたように驚いていた。

「そんな思いつきみたいな事で兵になるなんて・・・」

 ソルディスが喘ぐように反論すると彼は腰に携えた剣をぽんぽんっと叩いて見せた。

「本当に前々から行きたいこうと思ってたんだって。剣の腕だって自信もってるし・・・」

 言い募るスターリングに対して、困ってしまったソルディスは助けを求めるように村の長老に視線を向けた。彼は二人をみるとごほんっと咳払いをした。

「それはいい。この子はこの辺りの山賊を退治することもしてますし、剣の腕はわしもお勧めできるぐらい秀でてますよ」

(いや・・・・薦めるんじゃなくて、止めて欲しいんだけど)

 意志を汲んでくれない長老にソルディスは肩をがくりと落とした。

 だが無表情の彼の顔からその言葉を読み取るものなど皆無に等しい。この中でそれが読める人間の一人スターリングは解かっていて無視しているし、あと一人グランテは状況を楽しそうに見つめている。

「そんなに強いのか?俺も手合わせしてみたいな」

 スターリングの言葉にクラウスが反応して彼らのもとに近づいてきた。

 ソルディスはそれを止めようとしたが、一歩出たところでグランテに手をつかまれた。

「クラウス王子は当代の王子の中で一番強いんだろう?だったら彼に勝てないことを理由に連れて行かないこともできる」

 手を掴む彼女に耳打された言葉にソルディスはぽんっと手を叩くと何事も無かったかのように二人に向き直った。

「それじゃ、兄上から一本でも取れたら連れて行くってことでいい?」

「おうよ」

「まかせといて」

 二人が了承すると同時にソルディスの後ろでグランテ主催による賭けが始まった。もちろん、クラウスの剣の腕を知っている一座の人間はクラウスに、スターリングの意志を尊重させてやりたいと思っている村人はスターリングにかけた。

 予測外だったのはシェリルファーナがスターリングに賭けたことだろう。可愛い妹の行動にクラウスはどこか打ちひしがれているようだった。

「それじゃ、始めっ!」

 一礼をした二人は十分な間合いを持って、睨みあった。

 16歳と13歳ではリーチも力も大夫の差がある。そうなるとソルディスみたいに卓越した技能があるか、サイラスのようにスピードのある剣で来るだろうと、クラウスは相手の剣を予測する。

 ざっと足元を然りと踏むと、クラウスは気合を篭めて間合いを詰めた。

 スターリングもそれに負けないように一気に間合いを詰めるために前に飛ぶと向かってくる刃を自らの刀の腹で受ける。


ギィィンッ


 鋭い剣戟があたりに響く。クラウスが繰り出す刃をどうにか避けながら、スターリングは隙を狙って仕掛けてくる。

(こいつ・・・剣技も然ることながら、力が強い)

 農村の子供が見様見真似で使える剣ではない。

 しっかりと誰かに倣い、それに見合った筋肉を有している剣だ。スピードも遅くないし、技に走りすぎる事も力に頼りすぎることも無い。常々クラウスの師匠が目指せと教える剣の形に近かった。

 これは下手に嘗めてかかると間違いなく即座に負けるだろう。

 クラウスはその考えににやりと笑うと確りと剣の柄を握り締めた。

今まで話がジェットコースターみたいに急展開したので少しばかり足踏みです。

スターリングの剣の腕はクラウスよりやや劣ります。ただ彼は知略があるので、どっこいどっこいまで持っていくことができてます。

しかし3年の年齢差を考えると、クラウスよりも剣の腕は上の可能性が高いです。

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