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第三十三話:決別した道

 サイラスは手の中にある剣のつかの感触を確かめながら、ごくりと唾を飲み込む。

「どうして・・・」

 驚いている二人に、ウィルフレッドは不思議そうな顔をした。

 ただ少し考えて答えを見つけたのか彼は可笑しそうに笑い始める。

「そうか、ソルディス王子も聖長ルフィーナもそなたたちには教えていないのか」

 ウィルフレッドの嘲るような言葉に二人は心外だとばかりに顔を顰める。

 それに何よりも自分たちが知らない事実と言うものが気になって仕方ない。

「私は『見透かす心』を持っている・・・サイラスはこの意味がわかるな」

 目を見開いたサイラスの姿に王族とはいえその辺りの仕来りにはあまり明るくないアーシアはどういうことなのかと二人に視線を送る。

 その姿にサイラスも彼女が全く何も知らなかったのだということを理解させられた。

「王位を継ぐのに優先されるのはこちらの能力だろう。飾り物の『黄金』ではない。この能力を持つ最も年上の人間がもともと王位を継いでいたのだ」

 だからこそ、ウィルフレッドは自分の王位継承の正しさを主張した。黄金の髪を持っているのみのバルガスはもちろん、まだ年若いソルディスよりも優位であるはずだ、と。

 兄の言葉を聞き、アーシアも漸く事態を飲み込むことができた。そして父から受け継いだ王位継承権がこのような形で分けられていたことを、初めて知った。

「嘘だと思っているのか?少なくともソルディス王子は知っていたぞ」

 ウィルフレッドの言葉に、サイラスははっとした表情かおをした。

 そうだ、ソルディスだって『見透かす心』・・・読心術テレパシーは有していた。それならば、その有無も知っていただろうし・・・・

「ああ、もちろん。サイラスが私の息子だということも知っているだろうな」

 サイラスの心を読んだようにウィルフレッドが答えを出す。そしてそれを微塵も感じさせずに自分を守ろうとしていたソルディスを愛しく思った。

「確かに、あなたは『それ』を持っているかもしれない。しかしその他すべてを纏めて持っているソルディスには敵わないはずだ」

 自分たちが選択したソルディスが目の前の男より下位のはずなどない。二人にとって、彼だけが唯一絶対の王なのだから。

「それがそなた達の選択、か?」

 ウィルフレッドはため息と共に小さく呟くと静かに二人の傍へと近づいてきた。

 途端に殺気立っている息子サイラスの横を無表情のまま通り抜けた彼は炎と暗雲に包まれた本宮に向かって静かに歩き始めた。

「捕まえないのか?」

 ウィルフレッドがいなくなったことにより見張りが居なくなった門を見ながらサイラスは振り返り、ウィルフレッドに問い掛けた。

「私の望みは、アーシアを王から自由にすること・・・息子そなたに真実を告げること。その二つの目的はすでに果たしてある。それでそなた達が城から出ると言うのなら、それは仕方のないことだろう。

 ただそなた達自身が自分の選択が間違っていることに気付いた時は城門を開けて待ち受け、二度と間違わぬようにこの城に閉じ込めてやる」

 肩越しに答えを述べたウィルフレッドは二人に背を向けると、それ以上言うことは無いとばかりに颯爽とした足取りでその場を去っていった。

「いったい・・・何が、どうなっているのでしょう」

「それは、私が知りたいです」

 こちらを振り返りもせずに去っていくウィルフレッドを二人は暫しの間見送っていた。

「どちらにせよ、我々は自分たちの信じた王子かたの為に進むしかないことだけは判ります」

 凛としたアーシアの言葉にサイラスは無言で肯くと、誰も見張りの居なくなった城門に近づく。元から侍女たちのために設えられた門は然程苦も無く外への扉を開けた。

 二人は互いに肯き逢うと、城の異変を察知してでてきた町人の中へとその身を潜めたのだった。

ウィルフレッドとアーシア・サイラスとの別れです。

彼にとっては助け出し、守りたいと思っている相手からの別れの宣告・・・これで暫くサイラスたちは王国のどこかにいろいろと魔法を駆使して潜伏することになると思われます。

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