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第三十一話:中庭に向かって

 ルアンリルはケイシュンを伴い、出来るだけ人目につきにくい道を通り中庭へと向かった。

 幼い頃からクラウスと遊びながら、こういう道を覚えた。彼はとにかく大人に見つかるのが嫌いな子供だったので、人目のない場所、気付かない通路、侍従のみの通路などを観察して覚えていた。

 ソルディスもそういう通路をしっかりと知っているが、彼の場合は『見つけた』のではなく『知っていた』という感じがする。

「おもしろいな・・・こんな通路があったんだ」

 ケイシュンは何度か王城に来させられたことがあったが、王に謁見する直前に城下町に逃亡してみせたり、すぐに下城して町へと出かけていた。おかげで未だこの城の内部には余り明るくない。

 伯父である現龍族の長・ナリファ・コウ・ロンファはそんな甥の態度にも甘かったが、ナリファの息子でありケイシュンの次に長候補と目されているベーシェン・ロンファはその態度を不真面目すぎるとよく非難していた。

 ケイシュンとしてみれば族長の甥として生まれ悠悠自適に暮らしていたのに、ある日突然降って沸いたように次期族長に任命され辟易としていたのだ。

 もともと堅苦しいことは嫌いだし、第一、時間的な自由を制約される事に不満を覚えた。

 どうしてあんな王のために希少な自由を奪われ、足を折り平伏せねばならないのか。

 まだ剣の腕のあるクラウスや牢での機転を見せてくれたサイラス・・・その二人と目の前のルアンリルが王につけようとしているソルディスならそれも許せたかもしれないが、バルガス相手にそんなことをしてやる謂れはない。

 ゆえに王城に行くのが億劫になり、人的パイプを作らなかったから他の龍が空に逃げるときに自分は置いていかれたのだろう。

 そういえばあの日、自分についていた人間はベーシェンと仲のいい人物ばかりだった気もする。

「どうかしましたか?」

 少し考え事をしていたケイシュンにルアンリルが不思議そうに聴いてきた。

 自分よりも小さななりに精霊族すべての責任を持っているルアンリル。

 その理力の高さゆえに幼い内から親元より引き離され、王宮にて勤めることを余儀なくされている子供。

 ルアンリルは精霊族の成人を待たずにわずか13歳で聖長に就任した。

 本来なら性の未分化の状態では大人として認められないはずなのに、大人の都合で勝手に大人としての役割を与えられてしまったのだ。

 そんな子供を守ってやりたいと思うのは、その姿にどこか自分を重ねているからかも知れない。

「いや・・・・・・後、どれぐらいで中庭につくんだ?」

 自分の考えを相手に知られないように誤魔化そうとして出した質問に、ルアンリルは少し呆れたような顔をした。

 そして我慢しきれないように小さく噴出す。

「本当にあまり城を知らないのですね・・・もうすぐそこから中庭ですよ」

 見ると次の角を曲がったところから外が見えた。本宮の中に特別に設けられたそこは普通の家屋が数件入るほど広い庭になっていた。

 よくみると建物の形がとても変わっている城だと思う。これも先ほど自分たちが通ってきた秘密の通路を生み出すための仕組みなのかもしれない。

「すみませんが、かなり派手な理力魔法を使うので、しばらく見張りになってくれませんか」

 ルアンリルの申し出にケイシュンは胸を叩いて了承した。

 それに安心したルアンリルは、自らの腰に携えた聖剣を抜いた。同時に辺りを紅く染めるほどの炎の精霊がその小さな身体を包み込んだ。

 ケイシュンもルアンリルに倣い、腰の聖剣を抜いた。彼の使役する光と風と水の精霊が同時に乱舞し始め、天空へと上り始める。呼び寄せられた精霊たちは更に仲間を呼び合いながら、城の上に黒き雲を形成した。

 その時になり、城に勤めている魔法使いたちが何事かとテラスから外を見始めた。

「それでは、いきましょう」

 二人は互いに肯き逢うと、一気に中庭まで走りぬけた。

もともとのサブタイトルは『炎の柱』でした。

しかしケイシュンの独白があまりにも長すぎて炎の柱がたちませんでした。

どうやら聖司族といえど何がしかどろどろとした事情があるみたいです。


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