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第十話:山村の悪夢

 一週間以上の時間をかけて山を越えたバルガスは麓の小さな集落を見つけた。

 こじんまりとしたその村は15,6軒の鄙びた家だけが立ち並び、家畜や山の恵みのみで生計を立てているような雰囲気を有していた。

「とにかく、ここですべて揃えるか」

 彼は自分につき従う側近たちにそう告げると一つの家に入った。

 家の中では年老いた夫婦とその娘らしき妙齢の女性がお茶を飲んでいる所だった。

 彼らは急に入ってきた男に、何事かと目を見張る。

「時守の里に近い集落だ・・・あの里に入るための護符を持っているだろう?」

 そばに控えていた兵士が一斉に剣を抜き、3人に剣の切っ先を向けた。

 老人が怯えながら「はい・・・」と答えるとバルガスは視線で残った兵に家の中を捜索させた。

 護符は戸棚の引き出しの中にしっかりと仕舞われていた。バルガスは3つあるそれを確認すると自分の姿を見た彼らを殺すように指示をする。

「女は楽しんでもいいですか」

「かまわん、好きにしろ」

 鼻息を荒くした側近の一人が聞いてくるのに、バルガスは冷たくそう答えると残りの家からも護符を奪うべく家を出た。

 とたんにあがる断末魔の悲鳴、そして女の悲しげな嬌声。

 他にも女がいないかと兵たちは我先にとひなびた集落の家へと押し入り、目的の護符と、金品を奪い、抵抗もできない村人を女を残して惨殺し、女たちも自分たちの欲望をすべて始末した後、殺していったのであった。




 ウィルフレッドは王城にいながらも魔法の水鏡により各地に派遣した魔術師たちから情報をかき集めていた。

 その中でもサイラス王子の捕縛とバルガス王の山賊にも劣る略奪行為の情報はもっとも重要な情報として分析した。

「やはり、サイラスは王子たちと逃げたのだな・・・」

 その言葉を聴いて、ウィルフレッドの傍にて実質軟禁状態になっていたソフィア王妃はびくりと体を震わせた。

 彼女の言葉を真に受けた貴族たちがこぞってソルディス王子はクラウス王子とシェリルファーナ姫とともにロシキスの王子・王女とともに逃げ、サイラス王子はバルガス王と共に逃げたと判断していたが、ウィルフレッドはそんな言葉を信じていなかった。

 確かにあの時、鏡の後ろにはソルディス王子の他にルアンリルとシェリルファーナの気配のみしか感じなかったが、だからといって行動を別個にしているとは考えられない。

 問題は王都を抜けた後だ。

 比較的公共の場に出ることの多かったサイラスとバルガス王に顔がそっくりのクラウス王子はその場にいるだけで目立つ。

 そんな兄二人がソルディスたちと行動を共にするかどうかだ。

(可能性は。五分五分というところか)

 もしかしたら捕まえた一座の中に王子たちが隠れていた可能性もある。一つ一つの馬車、一人一人の顔をチェックしたとオーランド卿は言っていたが、怪しいものだ。

(それとも、サイラスが囮となって弟たちだけ先に逃がした可能性もある)

 どちらにしろ、今から追跡をかけたところでオーランドでは捕まえることすらできない可能性が高い。

 先ほど、サイラス王子の体には傷一つつけるなと伝令は出しておいたが、それが彼にどれほど伝わっているのか、実行されているのかも疑問であった。

「だが、真実を表に出すのはまだ早いな」

 サイラスがウィルフレッドの子供だということは最大の切り札でもあり厄札でもある。巧い時期に提示しなければいけない。

 その時期はまだ訪れない。起こすとしたらそれは彼が行動を起こすときか、それともあの男が姿をあらわした時だろう。

息子サイラスを手駒として扱う部分は私もバルガス王を責められんな)

 とりあえずは此方に向かっているサイラスに真実をどのように告げるべきかを考えつつ、ウィルフレッドはその場を王妃を残してその場を後にした。

バルガス王の行動はあまり書くのが得意ではありません。彼が女性に興味をしめさなかったのはただ単に彼の審美眼に引っかからなかったからだけです。

逆に後半部のウィルフレッドは書きやすいです。サイラスは特殊なルートを使い、最短距離で王都に運ばれる予定です。

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