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前世

『前世と私』の加筆修正バージョンです。不定期更新です。また、災害の表現があります。気分の悪くなるおそれがあります。

 ◆『ヒイラギ催眠研究所』と書かれた都心の雑居ビルの一室にて



 八帖ほどのカーテンの引かれた薄暗い洋間に置かれたイスに、男が座っている。


 身長は175センチ、黒目黒髪のいたって平凡な容姿だ。男の名前は、山田タロウ。独身二十歳。専門学校を卒業。ただいまニートである。


 彼の人生は、容姿と同じく平凡の一言につきる。幸も不幸もなく人間関係にもトラブルはない。


 そんな彼が、いま催眠療法を受けに来た理由を説明しよう。

 いまを遡ること、数ヶ月前。タロウは近所の公園で催されたフリ―マ―ケットにきていた。


 そこで一枚の「扉の描かれた石板」を買ったことからはじまる。


 サイズにしてA4くらいの石板に、ただ扉と象形文字らしきものが描かれていた。なんとなく、タロウは気になってかったのである。 最初は部屋に飾っていたが、しばらくして友人にその石板をあげてしまった。


 それからというもの、石板が気になってしかたなく、日常生活にも支障をきたし、ついに友人から石版を返してもらって落ち着いたのだった。


 タロウのあまりの執着ぶりに、異常を感じた友人は、催眠療法の一種である「前世療法」をうけてみたらどうかと勧めたのであった。


 まず、「前世療法」をしらない方のために説明したい。


 前世療法ぜんせいりょうほう とは、催眠療法の一種であり、退行催眠により患者の記憶を本人の出産以前まで誘導(= 過去生退行[1])し、心的外傷等を取り除くと主張されている。

前世の記憶は虚偽記憶の一種であるという批判があり、かつて催眠によりありもしない記憶が作られた例が多くあった。

そのため、前世療法を利用する人は注意が必要であるともされている[2]。しかし、中には本人の知るはずの無い史実と一致する正確な記憶を話す事例も存在する。  ウィキペティアより抜粋


 タロウの隣に白衣を着た老紳士がやって来た。この研究所の所長のヒイラギである。

 

 「でわ、山田タロウさん。これより前世療法にうつります。」


 老紳士の、穏やかな声が室内に響く。


 まずは、私の指示にしたがって呼吸をしましょう。次に10→1へ数えます。数は減っていく毎に、緊張がほぐれていきます。


 「10・・・まずは、肩の力がぬけていきます。 9・・・次に腕の力  ・・・・ 0.・・・ はい、体はほぐれてリラックスしています。」


 タロウは、緊張しながらもヒイラギの声にあわせて行くうちに催眠状態に誘導されていった。

 

 催眠中…


 「でわ、私が3つ数えると目が覚めます。気分もすっきりいい気持ちです。3・・・・ 2・・・・ 1・・・・ はい、目を開けてください」


 「タロウさん、気分はいかがですか?」


 「はい、頭もスッキリで気持ちいいです。熟睡したみたいでした。」


 「それは良かった。あなたが、催眠中に見たものはレポートにしましたので、あとで確認してくださいね。」


 「はい、ありがとうございます。」


 タロウは、レポートをうけとると会計をすませて研究所をあとにした。



 sideタロウの部屋


 タロウは、ヒイラギから渡されたレポートを手にした。読んでみると前世はエーゲ海に面したところに住んでいたようである。しがない神官であり、子供にも恵まれ幸せに暮らしていたようだ。だかそんな幸せも長く続かなかった。突如、島の火山が噴火し街を飲み込んでいった。家族ともはなれ、最後は火砕流に飲み込まれて死んだ。


 「 なんかスゴイな。嘘か本当かわからないけど。物語だとしてもよく出来ている。」


 タロウの独り言だが、偽りのない感想だろう。急に前世を信じろといわれても、戸惑うばかりだ。だが、タロウの見た記憶のなかに変わったものがあった。∞(無限大)のマークに真ん中に棒を引いて、漢字の『中』に似た刻印を見たのだ。そこは、村人が非難していた場所に書かれていた。


 「まあ、鮮明な記憶らしいモノもあるから。図書館でしらべてみるか。」


 今までの、タロウの生活ではヨーロッパ。なかんずく、地中海など縁も所縁ない。もし、図書館で調べてみて、この図があれば前世の記憶と言えるかもしれないと、考えたからである。


 「よし、コレで行こう!」


 タロウは、図書館に向かうことにしたのだった。




 ◆図書館にて◆



 昨今の図書館は、近代化がすすんでおり本の検索も楽だ。まずは、受付側のパソコンに、キーワードを入力していく。


 カチャカチャカチャ


 「 地中海 火山 etc・・・ 」


 ピーガチャ ガチャガチャ


 検索結果が出てきた。どうやら地理歴史コーナーに関連の本はあるようだ。 目ぼしい数冊をとり、イスに腰掛けて読み始める。いくつか読み始める内に、とうとうタロウが前世の記憶としてみた刻印がみつかった。


 「あ、これだ!」


 手には、『クレタ島とミノス文明の考察』という本が握られていた。どうやらタロウがみた刻印は、 『ミノスの聖斧』といわれるもので、当時のミノス文明の神殿あとにみかけるものらしい。


 「まじかよ・・ 」


 まさか、行った事も聞いたこともない刻印が存在するとは。タロウは驚愕するのだった。


 ここでクレタ島とミノス文明について話しておきたい。


 クレタ島とは、地中海に浮かぶ島の中で5番目に大きく、面積はおよそ8300平方キロメートルの島で、ヨーロッパにおける最古の文明”ミノア文明”が栄えた。ミノアといえば、思いつく人もいるかもしれないが、ギリシャ神話に出てくる”ミノタウルス”頭が牛の怪物発祥の地でもある。


 またミノア文明は、紀元前3000~1400年に栄えた巨石文明巨だ。巨大な石の文明と言えば、エジブトのピラミッドを思い起こすだろうが。ミノア文明も負けず劣らず、精巧なつくりと巨大な石をつかった建造物は圧巻だ。一説によると、各家庭には上下水道が完備され、お湯まで配管してあったとも言われている。


 閑話休題



◆タロウの部屋にて◆


 「それにしても、驚いたなあ~」


 タロウは、ブツブツと独り言をいいながら自分の思考を整理しはじめた。


 一点目。前世療法で見た記憶にはいくらかの信憑性がある。


 二点目。石板と自分の前世についての関連が分からない。


 三点目。石板に描いてあった絵は、どの本を読んでも載っていなかった。


 「ここは、ひとまずヒイラギに相談だな~」


 タロウの前世にミノス文明がかかわっているのは分かったが、石板とのの関係が不明であると結論し、石板の謎を説く為に、しばらくはヒイラギの元に通うのだった。


 ◆一ヶ月後◆


 「うう・・・・」


 夜明け前のまどろみの中に、コウタはうなされていた。 前世療法を行うようになってから、夢をよく見る。ヒイラギが言うには、過去の体験を脳が処理する為に見るそうだ。コウタは最近の夢を振り返る。みる夢は、神官だった時の事がよく出てくる。白いローブをきて病人やケガ人を治療したり、スラムに赴き葬送をしたり。はたまた同僚と飲んだり。楽しい事悲しい事、様々だ。 だが決まって最後は、火砕流に飲み込まれて終わる。そこで目覚めるの繰り返し。だが昨日は違うところがあった。火砕流に飲み込まれる直前、あの石板が出てきたのだ。何か呪文を自分が唱え聖斧の印を描く度に、人々が通っていく。何をしているんだろうか?通る人々は徐に、自分をみて深々と頭を下げていく。 とても自分は満足しているように思える。そして火砕流が押し寄せ、夢が覚めた。


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