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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第五章 預言の巫女~Sophia and Magnolia~
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第五章 預言の巫女~Sophia and Magnolia~ 1話

わたしがいなくなる前に、少しだけ、わたしの記憶の話をしたいと思います。






―――わたしの名前は、マグノリアではなく、ソフィア。レインヘブンの巫女でした。





わたしの役目は、「神様から聞いた言葉を国民に伝えること」。

これは、預言と言われ、これから起こる未来の出来事を予測したものです。



この国の人は、預言というものを絶対的に信仰していて、わたしには、それが、とても、滑稽に見えてました。





それでも、わたしは、今日も神様の言葉を聞きます。




何故ならそれが、わたしの存在意義だから。




国の中で一番強い言霊を使える少女が、巫女となり、神様の言葉を半強制的に聞く。





―――それが、この国における決まりごとで、わたしに拒否権なんてありませんし、逆らうこともできません。




制約だらけで、不自由な生活。


まるで、鳥籠の中の鳥のようなわたし。



わたしは、そんな生活にうんざりしてました。




「よしっ、誰もいませんね・・・」



わたしは、王城の窓から周りを見渡して誰もいないことを確認します。



「巫女様、どこに行かれるのですか。」



わたしの後ろから、呆れたような声がしました。


わたしの護衛役のライモンドの声です。

彼は、こうしてわたしが脱走を試みようとすると、いつもこうして止めにきてました。

そういえば、彼はアレクサンダーさんに似ています。

赤い髪に目つきの悪い赤い瞳。



・・・・もしかしたら、わたしはアレクサンダーさんではなく、ライモンドを追いかけていたのかもしれません。



まあ、今となっては、もう、関係ないことですが。



「今日は花のお祭りでしょう?だから、見に行きたいなーって。」



わたしは、甘えたような声を出し、彼に精一杯の媚を売りました。



「ダメです。行ってはなりません。」



彼は、バッサリと情け容赦なく切り捨てます。




・・・ほんと、仕事に真面目なんだから。



――わたしは、そんな彼に恋をしてました。


巫女は、死ぬまで独身を貫き、異性と交わることは禁じられてます。



だから、これは、叶わぬ恋。



そうだと知っていても、わたしは、恋の魔力にすっかり溺れてました。

絶望的な日常の中で、彼の存在だけが、わたしの唯一の幸せだったのです。



「分かっているのですか?最近、政治周りが不穏が動きをしています。現政権への反対勢力が・・・」



「はいはい、要するに危険だから外に出るなって言いたいんでしょ?分かってますって。」



そんなことは、耳がタコになる程聞いてます。



そんなことより、わたしはもっと・・・普通に話したいのに。



「・・・さあ、そろそろお祈りの時間ですよ。」



・・・ああ、もう、この分からずや。




わたしの気持ちをちょっとでも分かって貰ってないのでしょうか?




それとも分かっていて、こんなに事務的に接しているんでしょうか?




昔は、もっと、普通に話せていたというのに。




今は、こんな、色気のない話しか出てこない。




そういう感じで、わたしは巫女として、毎日を過ごしてました。




だけど、それは、ある日、突然、終わりを告げたのです。






「・・・・それは、誠か?」




国王様が、何とも言えない難しい顔をしてわたしを見ました。



「はい。確かに、神様は、世界の終焉の預言と申しました。」



そう、その日、わたしは、神様から世界の終焉預言を聞きました。




大地が燃え盛り 空が朱く染まる時

海は生き物を飲み込み 空から死の灰が降る

妖精の森は燃え 黒き人形は残された人を殺す

生き残るのは たった一人の王のみ

王が新世界の扉を開き この世界は幕を閉じる




これが、終焉の預言の内容・・・いつか分かりませんが、いつか必ずくる未来の話・・・・。



「ふむう・・・・」



王様は難しい顔をして考え込みました。



ただでさえ、最近、この国は情勢が不安定です。

そんな不安な時に、この預言を国民に発表してしまったら、暴動が起きるかもしれません。



「国王様、今日の預言はなかったことにしましょう。」



国王様の横で聞いていた大臣がそう言いました。



「いいか、絶対この予言は記録するな。」



大臣が、記録係のナージャに言いました。



「で、でも・・・」



ナージャは何か言いたげに大臣を見ます。



「ええい!国王命令じゃ!」



「は、はい!」



ナージャは慌てて、記録用のペンを起きました。




・・・でも、こんなこと、してもいいんでしょうか?





今までこの国は、預言はすべて記録し、国民に公表してました。




それは、神様がそうしろ、とおっしゃっていたからです。




なのに、神様との約束を破り、隠蔽しようとするなんて・・・




―――まあ、わたしには、関係のないことです。




だって、わたしは、ライモンドがいればどうだっていいのです。




巫女の役目も、預言のことも、どうでもいいのです。





わたしはただ、ライモンドと一緒にいたいだけだから。




この国がどうなろうと、世界がどうなろうと、わたしには、関係ありません。




だけど、わたしの意に反して、運命はわたしを巻き込んだのです。




絶望の闇へと。





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