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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第三章 妖精の国~What has changed~
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第三章 妖精の国~What has changed~ 1話



「もうすぐ運命が動く・・・」



―――誰ですか?誰かの声が聞こえる・・・・。



貴方は、誰なんですか?



周囲を見渡しても、どこまでも続く青い空と広い草原で誰もいません。



「・・・・の・・・・が、目を覚ます時がきた。」



・・・・よく聞こえません。

何を言っているんでしょうか?



「最後のキーワードは・・・・

フアィソンズ・アン・ノウベアー・モンド。

プロミス・ア・デトリューイロ・レ・ヴィエックス・モンド、

エト・ヴォリア・キュア・ジ・アル・サイグ・ウネ・ノウベアー・プロミス。

ソウンス・ラ・ディレクション・デ・ノウベアー・モンド、レ・モンド・エスト・ジョン。」




え・・・っ?



その声はわけの分からない言葉を長々と喋りました。


そう、その言葉はわたしの知らない言葉で・・・意味も分からないはずなんです。




だけど―――何故か、わたしの脳はこの言葉を自動的に翻訳していました。



その声が言っていたことの意味は―――




-------




「おい、起きろ。・・・・いつまで寝ているんだ!」



アレクサンダーさんに叩き起こされてわたしは夢の世界から現実に引き戻されました。



何もそんなに荒っぽく叩かなくてもいいのに・・・おかげで大事な夢だったのに、あんまり覚えて・・・・



―――えっ?大事な夢・・・・?



どうして、夢のことを覚えていないのに、そんなことが分かるのでしょう。



なんだか、胸さわぎがします。

・・・よくないことが起こらないといいんですけど・・・・



「さあて!今日はお昼くらいに妖精の国につくよー!」



朝からロビンさんはとても元気そうですね。


―――やっぱり、今日も平和です。そうに決まっているんです。



「あの、ロビンさん。誠に僭越ながら、僕は妖精というものを知らないので、教えていただけませんか?」



ワトリーさんが、朝食を作りながらロビンさんに話しかける。



「・・・別にそんな固く言わなくてもいいんだけど・・・・」



と、ロビンさんは苦笑しながら、説明をはじめました。



「えーっと、妖精というのはね、世界樹の周りにある森に住む存在なんだ。

彼らは、実体はなくて、その体は魔法で出来ていると言われていてね。

世界樹の周りにある木はたくさんの魔力を持っているから、

その木の分身・・・みたいな存在だと言われているんだ。

妖精の仕事は結構この世界においては重要でさ、世界の管理人みたいなことをしているんだ。」



「世界の管理人?具体的には何をするのでしょうか?」



「うーん、そうだね・・・。

僕たちが魔法を使うと魔力が減るから、

世界の魔力が減りすぎないように魔力を作ったりとか・・

勝手に「世界の理」を変更されないように見張っていたり・・・とかかな?」



「ほう。とても重要なポスト、というわけですね!勉強になりました!」



ワトリーさんが理解したように何度もうなづきました。



「まあ、色々説明したけど、面白い種族だと思うよ。・・・変わった性格のやつが多いしさ。」



ロビンさんが変わっているというのなら・・・まあ、相当変わっているでしょうね・・・。



妖精というのは、どんな感じなんでしょう?

やっぱり、可愛い感じなのでしょうか?






妖精の国は深い森の中にありました。


そこは、木々がほのかに光っていて、地面には色とりどりの花が咲き、

ほのかに光る妖精達が飛び回る幻想的な風景が広がってました。



「うわぁ!綺麗ですねー!」



「でしょー!?本当はね、人間はここには入れないんだけどさ、僕たちは「特別」だから入れちゃうんだよ。」



と、ロビンさんが少し自慢げに言いました。



「特別?」



「ふふっ、10年前までね、妖精は魔王に封印されていたのさ。

妖精の存在が魔王にとっては邪魔だったからね。

その封印を解いたのはなんと、僕なんだ!」



「うわー!ロビンさん、すごいですね!」



「まあ、天才だからね。」



と、ロビンさんは誇らしげにウィンクをしました。




その時です。



「誰かと思ったらロビンとアレクサンダーじゃない。二人ともずいぶん老けたわね。」



と、ちょっと小生意気な少女の声をした一匹の妖精が、わたしたちの目の前に現れました。



「フリージア!久しぶり!あ、この二人はマグノリアちゃんと、ワトリー。」



ロビンさんがフリージアさんにわたしたちを紹介してくれました。

わたしは、よろしくとお辞儀をします。



フリージアさんはわたしの目の前まで来て、じっ、とわたしの顔を凝視します。



「な、何ですか・・・・?」



「アンタさぁ・・・。もしかして・・・・。

いや、それはありえないっか。で、何の用?」



フリージアさんは首を振って、ロビンさんの方を見ました。

ロビンさんが今までの経緯を簡単に説明をしてくれました。



「・・・と、いう、わけなんだ。」



「・・・ふーん。そう、シーナがね・・・・。

で、アンタが事件に巻き込まれて記憶喪失なんだ。

ま、アタシにかかれば記憶なんてちょちょいのちょいで戻るわよ、良かったわね!」



・・・良かった、のでしょうか?




確かに記憶が戻ることはいいことです。




でも・・・・本当に思い出していいんでしょうか?




「それ、メモリー・デ・レトー!」



フリージアさんが呪文(らしきもの)を唱えてわたしに魔法をかけます。




急に頭の奥がガンガンと、痛くなり、脳内がクリアになっていきます。




―――だめ。思い出してはだめ。




わたしは無意識に必死に魔法に抵抗しようとしました。



「思い出したく・・・・ない!」



わたしが言霊を使うと脳はいつも通りに戻りました。



・・・・・どうやら、思い出すことは防げたようですね。




「・・・・ちょっと待って・・・・アンタ、今のは・・・・」



フリージアさんがありえない、という顔でわたしを見つめます。



「・・・・・・・いや、それはありえないわよね、うん・・・・。」



フリージアさんは、自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟きました。



「・・・どうなっているんだ?マグノリア、そんなに思い出したくないのか?」



アレクサンダーさんが険しい顔でわたしを睨みます。



「・・・ごめんなさい。アレクサンダーさん。

アレクサンダーさんの為に思い出したい気持ちもあるんですけど・・・・」




―――そう、記憶が戻ればきっと、アレクサンダーさんも喜んでくれるはずです。


でも、どうしても、思い出したくない。



こればっかりは、いくらアレクサンダーさんの頼みでも譲れないんです。



「・・・・そうかよ。」



アレクサンダーさんはぶっきらぼうに吐き捨てて、タバコに火を付けて、どこかへ歩き出します。



「・・・・ちょっと、アレクサンダーさん!?どこに行くのさ!?」



ロビンさんが慌てて引き止めようとしましたが、アレクサンダーさんは無言でどこかへ歩き出してしまいました。



「・・・・なにあれ。感じ悪っ。

あいつ、いつの間にあんな風に変わったの?」



フリージアさんが頬を膨らませながら、ロビンさんに聞きます。



「・・・・まあ、ね。」



ロビンさんは何とも言いにくそうな複雑な顔でうなづきました。



「あいつ、10年前はタバコ嫌いだったじゃん。

なのに、何でいつの間に吸っているわけ?

しかも、あんなに無愛想な人間じゃなかったのにさー、一体何があったのよ?」



フリージアさんは、ロビンさんを問い詰めました。

ロビンさんはますます困ったような顔をして、ため息をつきました。



「・・・・仲間が、殺されたからかな。」



「誰が、誰によ?」



「ダグラスさんが・・・・国に、かな。」



ロビンさんは悲しそうにそう言いました。



「えっ・・・・?だって、ダグラスって・・・アンタの国の騎士団長だったんでしょ?

しかも・・・魔王を倒したパーティのメンバーなのに?」



フリージアさんが信じられない、という口調でロビンさんを問い詰めました。


・・・・えっ?魔王を倒した人を・・・・殺した・・・・・?


物語でもなさそうなお話です。本当にこういうことがあったんでしょうか?



だけど、ロビンさんは悲しそうな顔でうなづきました。



「・・・・嘘でしょ?」



フリージアさんは、呆然としたように呟きました。



・・・・・・嘘だと、冗談だと言って欲しかった。

それが本当なら、何のために魔王を倒したのか・・・・分からないじゃないですか・・・・・。



どうして、こんなひどいことばかりが現実なのでしょう。



「それが・・・アルテミス王国というものなんだよ。」



ロビンさんは、重々しい口調で、過去を語りはじめました。




END


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