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箱庭シンドローム  作者: 彩音
第二章 心を持ったロボット~Love and hate~
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第二章 心を持ったロボット~Love and hate~ 5話

山の麓の入り口。

ベトット博士の家は山奥にありますが、麓の方までわたしたちは来ました。

ここから先は一気に視界が開け、都会的な街並みが広がってます。

わたしは茂みの影から街を覗いてみました。



「・・・・うーん、やっぱり、多いですね。ロボットさん・・・」



街の道にはそこら中にロボットさんがいます。

これでは、ここに飛び出してしまったら一瞬でやられてしまいそうです。



「言霊ならなんとかならないのですか?」



「うーん、ロビンさんによれば、言霊にも限界があって・・・出来る事と出来ないことがあるそうです。」



「つまり・・ここを突破するのは難しいということですね。」



ワトリーさんは少しだけ考えて



「それなら地下通路はどうでしょう?」



と聞いてきました。



「・・・地下通路・・・?」



「こうなってしまった時用に人間しか入れない地下通路があるんです。

街中張り巡らさせれてるので、地下通路を通れば地上を通らずにどこでもいけます。

入り口は指紋のセンサーなので、僕たちロボットは人間と一緒でないと侵入不可なのです。」



「なるほど、その通路なら戦わずして移動出来そうですね!案内してもらいますか?」



「了解です!」



「あ、でも・・・ベトット博士がどこに行ったのか分かりませんね・・・」




「それなら心当たりがあります。」



そう言って、ワトリーさんは微笑みました。




--------


アレクサンダーさんとトミーワトリーがマグノリアちゃんを探している間、僕は調べものをしていた。

少し気になることがあったからだ。



「おい、ロビン・・・。人にだけ探しておいて自分は調べものってどういうことだ。」



アレクサンダーさんの声が聞こえたので僕は、読んでいた本から顔を上げて声のした方を向く。

アレクサンダーさんが不機嫌そうにドアに仁王立ちしていた。



「・・・うーん、ちょっと気になることがあってね・・・」



「気になること?」



「ほら、ワトリーがさ、ヴェンツェンティが悪魔と契約しているって言っていたでしょ?

ロボットが悪魔と契約するのかなーって思ってさー。」



「・・・・契約したから、この事件が起きているんじゃないのか?」



アレクサンダーさんが呆れたように言った。



「でもさ・・・普通に考えたらありえないんだよ。

まず、ロボットは血がないからどうやって契約するのか分からないし・・・。

悪魔と契約するには、自分の血を悪魔のナイフに染み込ませなきゃいけないからねー。」



「他の方法があるんじゃないか?」



「いや、ないよ。あのねぇ、人間の血っていうのはさ、ものすごい魔力があるんだ。

その血を使って、悪魔は力を使っているからさ、ロボットが契約しても悪魔の力は使えないんだ。」



「でも、使っているじゃねーか。」



「・・・・悪魔の力だと断定できるワケじゃないよ。

今の状況は”ロボットが魔法を使った”から起こっているだけなんだ。

それが悪魔の仕業かどうかは・・・・ちゃんと調べないと分からない。

まあ、普通ならロボットが魔法を使うこと自体ありえないはずなんだけどねー・・・。

だからさ、なんか裏があると思って博士の資料を調べてみたんだけど・・・・。」



「何か分かったのか?」



「ううん。何も。でも・・・博士が行った場所なら分かったかな。さ、アレクサンダーさん、行くよ。」



僕は、本を閉じて入り口へと歩いて行く。



「どこにだよ?」



アレクサンダーさんが怪訝そうに言った。



「この事件のメインステージ、だよ。

僕の勘だけどさ、マグノリアちゃんもそこに向かっていると思うんだよね。」




「・・・お前の勘が当てなのかよ。」



「だって、ずっとワトリーが帰ってきてないんだ。

これは、ワトリーがマグノリアちゃんと合流して、博士を追いかけていると思わない?」



「・・・エスパーかよ、お前。」



アレクサンダーさんが少しだけ強張った顔で笑った。



「素晴らしい推理力って言ってくれないかなー?

まあ、さっき、トミーがマグノリアちゃんとワトリーが二人で歩いているのを見たって言ってたからさー。」



「・・・それを早く言えよ。」



アレクサンダーさんが大きなため息をついて、

のろのろと僕の後ろについて歩き出した。





・・・なんだかものすごく嫌な予感がする。



本当にロボットの暴走だけが原因なのだろうか?


この件には絶対何か裏があるはずだ。

裏で糸を引いている人がいると思う。



・・・それが何なのかさっぱり分からないけれど、とりあえずはマグノリアちゃんを止めないと・・・。




手遅れになる前に間に合えばいいのだけど―――






--------------------------




ワトリーさんに案内された場所は街のど真ん中にある地下の施設でした。



「ここは、どこなんですか?」



何やらよく分からない機械が多く、物々しい雰囲気で不気味な場所です。



「・・・この街の秘密の研究施設です。

政府による命令で作られ、特別なロボットが生産されています。」



「特別な・・・ロボット?」



「・・・いわゆる戦闘兵器・・・。魔王を越える力を持つロボットを目指して研究しているんです。」



「魔王を越える力を持つロボット!?・・・なんだか、すごい話ですね・・・」



わたしは、魔王がどんなに強かったのか分かりませんが、

とにかく、世界の覇者だったのでとんでもない強さがあるんでしょう。



それを越えるとなると・・・どこまで強くなるんでしょうか・・・・?



「そんな恐ろしい力を持つロボットを開発して、何をしようとしているのでしょうか?」



「・・・・たぶん、世界を制したいのだと思います。」



「でも、確かこの国は世界で一番大きな国なんですよね?

世界を制する必要はないような気がしますけど・・・」



「僕に言われても・・・国王様の考えることなので・・・」



ワトリーさんは少し困ったような顔で言いました。




・・・国王様・・・・。



そういえば、アレクサンダーさんも、ロビンさんも、あまり国のことを良く言わないような気がします。

ロビンさんは、「国には逆らえない」と言ってました。



わたしは、国王様がどんな方なのか存じ上げませんが、きっと、独裁者なのでしょう。



そうでなければ・・・逆らえないなんてことはありません。




「ワトリーさん・・・あの、国王様とは、そんなに恐ろしいものなんですか?」



ワトリーさんは困ったように笑いました。



「・・・すみません。僕も最近起動したばかりなので外の世界のことはよく分からないのです。

この情報もヴェンツェンティにインプットされたものなので、詳しいことは何も分からないのです。」



「・・・そう、ですか・・。」



うう、世の中そう簡単に答えは出ないですよね。

ロビンさんが何でも答えてくれるので忘れかけていましたが、皆が皆、博識というワケではないんですよね。



「ヴェンツェンティは、博士の家からここに無理矢理連れてこられたと言ってました。

・・・たぶん、今もここにいるはずです。」



「どうして分かるんですか?」



「彼が言っていたんです。この研究所の仲間と

一緒に計画を練ったと・・・。つまり、ここはRPGで例えると、ラスボスダンジョンなのです!」



「・・・えっと、RPGってなんでしょうか・・・?」



「あっ、失礼しました。えーっと、探偵モノでいう推理シーンの方が分かりやすかったですか?」



・・・どちらにしても、よく分からない例えです。

前々から思ってましたが、ワトリーさんって時々よく分からない言葉を使いますよね。



「とにかく、注意して進みましょう。」



わたしたちは周囲に注意しながら慎重に進みます。

全体的に暗いので、よく見えません。



「マグノリアさん、そこ、つまづきやすいです。注意して下さい。」



「ありがとうございます。ワトリーさん、よく見えますね・・・」



「はい。視力は2.0ありますから。あ、何か聞こえてきました。」



ワトリーさんがそう言うのでわたしも耳をすましてみましたが、何も聞こえませんでした。



「えっと、どこから聞こえるんですか?」



「こっちです。」



と、ワトリーさんは歩きはじめます。

わたしはワトリーさんの後にくっついて歩きました。

5分くらい歩いた所でワトリーさんが立ち止まりました、




「この部屋です。」



ワトリーさんが少しドアを開けると話し声が聞こえてきました。



「・・なあ、ヴェンツェンティ。どうして悪魔なんかに身を売ったんじゃ。」



「・・・復讐のためだ。俺をこんなにした人間どもに復讐してやるんだよ!」



ヴェンツェンティさんの声は深い闇に包まれてました。

怨みと憎しみに溢れていて・・・聞いているだけで寒気がするような暗い声・・・・。



「それなら、ワシを恨めば良かったじゃろう。

全てはただ無抵抗にお主を奪われたワシにあるのじゃ・・・。」



「博士は関係ない。博士は俺のことを愛してくれた・・・だから、これまで耐えられたんだ。

だけど、あいつらは違う!!俺たちのことを兵器と呼び、非道な改造や命令ばかりしていたんだ!」



ヴェンツェンティさんはただ怒りと悲しみに満ちた叫びを繰り返します。



それは、壊れてしまった心の最後の叫びかのように。




「・・・・博士が何と言おうと、俺は止まれない。もう、本懐へ進むだけだ・・・・。」



「ヴェンツェンティ!やめろ!」



博士が大きな声でヴェンツェンティさんを制しようとします。



「うおおおおおおおお!」



ヴェンツェンティさんは大きな地鳴りのような叫びを上げました。

地面が揺れ、建物が大きく揺れます。



「・・・地震!?」



ドオオオン!すごい音が扉の向こうから聞こえました。



「博士!?大丈夫ですか?」



ワトリーさんが慌ててドアを全開に開きました。




そこには、天井が崩れ落ちた部屋と腰を抜かして座り込んでいるベトット博士がいました。



「・・・・なんと・・・あいつは、もう・・・」



ベトット博士が崩れ落ちた天井から空を見上げながら呟きました。

わたしたちはベトット博士の元に駆け寄ります。



「博士!怪我はありませんか?」



ワトリーさんが体を揺らし、ベトット博士はゆっくりとこちらを向きました。



「・・・・ワトリーか。お前はもう逃げるんじゃ・・・・。この街は、もう、お終いなのじゃ・・・・」



と、絶望に染まった空虚な目で何もかも諦めたように笑いました。



「・・・・何が・・・あったのでしょうか?」



ワトリーさんが恐る恐るベトット博士に聞きました。



「・・・魔王の再来じゃ。いや、あいつはもう、魔王を越える力を持っているかもしれん・・・」



と、ベトット博士はゆっくりと空を見上げました。


わたしたちもそれに合わせてベトット博士の向いた方向を見ます。





そこには、大きな黒い羽で飛んでいるヴェンツェンティさんがいました。




彼は、空に向かって、手を大きくかかげています。





空は紫色で、黒い雲が渦をまいていました。





それは、まるで―――この世の終わりのはじまりのような、異様で絶望的な光景でした。






END

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