表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

Case9 サイボーグ、突破する


「――て、うわっ!」

 気がつくと、俺は校舎の上空にいた。思わずサミュエルに抱きついてしまう。やべえ、怖い。何これ、超高いよ。しかも、なんか浮いてるし。

 しかも、隣にはソースケと交戦中だった赤毛の超能力者が。

「遅かったな、サミュエル。それが特異点か?」

 赤毛の男が口を開く。映画俳優みたいな人だな。素直にカッコいいと思う。なんでこんな人まで、変人達の仲間なんだ……

「すまないね、ヨハン。ちょっと邪魔が入って。ともかくこれで、ミッションコンプリートだ。それにしても藤崎、君は距離が近いな。俺にそっちの趣味はないんだがね」

「俺にだって」

 ねえよ、と言おうとした瞬間、俺の髪の毛を何かが掠めた。

「今のは少し危ったか」

 ヨハン、という赤毛の超能力者が呟く。危ない?一体何のことだ?

 直後、爆発音が上空で鳴り響く。まさか、俺の髪を掠ったのって。

「ミサイルだろうね。でもまあ、当たらなかったから結果オーライなんじゃないか?」

 校庭で何か見たことのない物騒な武器を構えているソースケの姿が見えた。というか、あいつ自身が持っているだけじゃなくて、校庭にこれでもかとミサイルやビーム砲台がセットされていた。

 あいつ、まさかアレを打つ気か!?

「おーい!!ちょっと待てーぇ!!俺もここにいるぞーぉ!!」 

 あんなのを撃たれたらたまったもんじゃない。絶対に死ぬ。やばすぎるだろ。

 しかし、ソースケの様子は変わらない。というかむしろ、笑ったように見えたのは俺の気のせいか?

「あいつ、偶然を装って君を撃ち殺せるって喜んでるよ」

 ソースケの心を読んだのだろう、サミュエルがそう教えてくれる。

 あの野郎。

「もう駄目だ!殺される!死ぬ!終わった!」

「落ち着けよ、ブラザー。ヨハンなら大丈夫さ」

 サミュエルが俺にむかって満面の笑みを向けてきた。サムズアップまでしていやがる。

 いや、でもですね。ミサイルがですね。レーザーがですね。

 それから数秒後、大量のミサイルとビームが俺たち目がけで発射された。全部喰らったら、肉片一つ残らなさそうな数だ。

 ミサイルか噴出す煙と、ビームの光と、弾頭が俺たちの視界を埋め尽くしている。

 終わった。

 それらは俺たちに到達する前に爆発。そしてビームは俺達から僅かにそれていく。

 これも超能力か?

「そう。ヨハンは俺たちの中で最も強いサイコキネシスを扱う事ができる。さっきの筋肉馬鹿みたいに、真空を作って屈折率を変えることだって可能だ。ミサイル自身はちょっと中身をいじってやれば爆発するし、誘爆だってする。俺ほどではないが、テレパスでもある。ま、ヨハンにとっては何の問題もないね」

 わざわざサミュエルが解説してくれる。なんかこいつ、こんなこと喋ってばかりでいいのかなぁ。やっぱり、暇なのかなぁ。

「ステラはまだか?目標を捕獲したんだ。さっさと撤退するぞ」

 おい、何か俺、このまま連れてかれる流れじゃないか。冗談じゃない。ふざけんなって。

「俺もそうしたいんだけどね。なんか、スイッチが入ったみたいだ」

「またか。いい加減、あの癖はどうにかならないのか?」

「俺にはどうもできないね。まあ、そのうち来るだろ――って、ヨハン、上だ!」

 サミュエルが突然に叫びだす。ヨハンと俺が一斉に上空へ視線を向けた。

 そこには、背中から鋼鉄の翼を生やし、足の裏からジェットを噴射するソースケの姿が。

「もらった」

 ソースケは左の手の平に設置されている銃口からビームを発射する。ヨハンが周囲に真空の空間を作り出し、それを屈折させた。その間にソースケは真空の空間を避けて飛行し、俺らの前に現れる。

「死ね」

 ソースケの右腕が高速で機械的に変形していく。一秒も立たない間にソースケの右手はビームの刃を形成する装置に変換さる。そしてそのビームの刃をヨハンに向けて振るった。

 直撃すると思われたその瞬間、ソースケの動きが止まった。おそらく、サイコキネシスかなんかで壁をつくったのだろう。しかしそれは僅かな間しか持たなかった。ソースケの身体から機械の駆動音が鳴り響き、超能力の壁を切り裂いていく。

 ソースケが動きを止めたその一瞬に空を飛行し距離をとっていたヨハンは、そのままソースケの背後に回った。再び手を翳し、ソースケの身体を吹っ飛ばす。

 が、同時にソースケは左手のレーザーをヨハンに向けて放っていた。攻撃と同時に放たれたせいか、避け切れなかったみたいで、わき腹にそれが掠った。

「外したか」

 そう言いながらソースケが態勢を立て直す。ヨハンのわき腹からは血が流れ出ていた。

「お前、アンドロイドだったのか」

 ヨハンのスーツは僅かに焼ききれている。レーザーにやられたんだ。そこから滲む血が、地面へ少しずつ垂れていいく。

「サイボーグだ。奥の手は最後までとっておくものだろう?」

 いやはや、ちょっと人の道を外れているとは思っていたが、まさか本当に人間じゃないなんて。サイボーグって、おい。

 ソースケが背中と足のジェットを噴射した。大きく空へ舞い上がり、旋回しつつ、レーザーを連射する。光速で突き進むそれを、ヨハンは紙一重で回避していた。心が読めるからなのだろう。

 ヨハンの放つサイコキネシスをソースケは機動力で避けていく。心を読みながらも、ヨハンはそれに対応できていないみたいだ。

 それにしても、映画じゃあるまいし、なんでこんな空中戦が繰り広げられているんですかね。ハリウッドも真っ青ですよ。

 かんべんしてくれ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ