一話;出会いと美少女
『好きだよのこの一言が言えなくて』
誰かがこの言葉を言ったが分からないが、
この言葉は、俺の心の中にずっと残っている。
少し前までこの俳句を忘れていたがなんかの拍子に思い出した。
確かにその通りかも知れないな。
俺も小学校の時に好きな人がいたが『好き』という言葉をいう事が出来なかった。
……あの時の俺も恋とやらに臆病だったんだな。
そして今の俺はと言うといつもとなんや変わりがない帰路の道を歩いている。
すると漫画とかで出たような明らかにやばそうな三人が一人のか弱い女性をいじめているようだった。
俺は来ていた道を引き返し違う道から帰ろうとしたのだが、どうやらその女性に見つかって
しまったようで、
「ね、ねえ! か弱い女が絡まれてるんだから助けろよ!」
明らかに命令口調の言葉が俺の耳に飛んできた。
そんな元気があるならその元気を不良共にぶつけて欲しいものだね。
「あぁ? 兄ちゃんよ~ 俺達にたてつこうってか~?」
明らかに威圧的な目で俺を睨んでくる。
「あのぉ俺は、善良な一般市民なんで……」
「じゃあ大人しく俺達にやられてろ!」
三人の中の一人が俺に向かって殴りかかってきた。……たく俺がなんでこんな目に……
俺はそのパンチを華麗に避けられるほど強くも無いので当たってしまった。
いってー……殴られたの久しぶりだな。
その後も俺は反抗できずに殴られ続けた。そして俺を殴る事に飽きたのか
「姉ちゃんよー仕方ないからこの男に免じて許してやるぜ」
そういってそいつ等は笑うとどこかへ行ってしまったのだった。
やっと行ったか。俺は、真珠のように目がパッチリとしていて
ショートヘアーの黄色の髪そして俺より二頭身位小さい身長。
世間的に言われている美少女に俺は話しかけて見る事にした。
「でお前は怪我は無いか?」
「……あんた弱いわね。普通あそこは軽く蹴散らすでしょ?」
お前を守った俺にお礼の言葉も無いのか。巻き込んだのはお前だろ。
「はいはい。すいません俺は弱いんですよ」
「……名前は?」
「ハ?」
「名前って聞いてるのよ!」
下手に出る事を知らない奴だな。世間的にこいつは生きていけるのか心配になるよ。
「俺は菊文字赤音だ」
「ふーん女みたいな名前ね」
「人の名前を悪く言うな」
ったくこいつは人を悪くいう事しかしないのかよ……
「----お前の名前は何て言うんだよ?」
「その前にあなたその制服からして『西崎高校』の生徒?」
彼女は俺の制服を指差した。
「……あぁそうだが」
「じゃあ今は名前を教えなくて大丈夫」
「どういう意味だ?」
「まぁそのうち分かることだって……あっ私はあなたみたいにこんな所で時間を潰している
暇は無いの」
「ちょっと待て! 教え……行っちまったか」
本当に何なんだ? あいつ?
ただ俺が一つ分かった事は、あいつが性格がねじれまくっているという事だけだ。
俺は、男達に殴られた体中が、痛いながらもそこを後にした。
★
家に帰ってきた俺を待ち受けていたのは、散々荒らされた玄関だった。
いや玄関だけでは無く家中至るところがものだらけだった。
「な、何だこれ?」
この惨状を言葉にするならば空き巣に入られた後と言ってもいいだろう。
そこに倒れていたのは我が妹だった。
「ど、どうした妹よ? こ、これは一体?」
俺は妹にこの有様を尋ねて見る事にした。
「あっお兄ちゃん……無くなっちゃったんだよ~!」
妹が泣きそうになりながら俺にしがみ付いてくる。しかし何が無くなったか分からない。
「なにが無いんだ?」
「坂下ナナちゃんのファンブックだよ~」
妹が言っている坂下ナナのファンブックと言うのは今は芸能界で
人気をはくしている美少女アイドルである。妹が言っている坂下ナナのファンブックと言うのは過激な水着写真が掲載されている所謂男向きな本である。
「それなら俺が捨てたぞ」
「え!? お兄ちゃん何であの本捨てちゃったの~」
「……いやあれはファンブックと称しているだけでアダルトな部分満載な本だろ?
お前に悪影響があるから俺が捨てた?」
「うわーん! お兄ちゃんの馬鹿~おたんこなす~いけず~」
妹は悪口を俺に言っているようだが俺は何故だが悪い気分がしない。
俺ってもしかしてM?
「はいはい……馬鹿でも人間じゃなくてもいいから機嫌を直せって」
「うるさーい! お兄ちゃん何てだいっきらいだー!」
それだけ言うと我が妹の菊文字冬音は自分の部屋に篭ってしまった。
まぁ…冬音のことだからお腹が空いたら出てくるだろ。
そう軽く考え自分の部屋に入ると俺は、ベッドへダイブした。
「今日も平和……だったな」
平和と呟く所で俺はあの生意気少女を思い出してしまった。
★
そして俺は、次の日の朝の教室の中は騒々しかった。
今日はなんかイベントでもあるのか?
俺は必死に頭をフル回転させてみるが答えは出そうにも無い。
そんな悪戦苦闘してた俺に気楽そうな表情を浮かべていると
「おぉどうした菊文字! そんな暗い顔をして!」
朝からテンション高いな。こいつは。
こいつは、菊池省吾
俺の友達。こいつの事を一文に現すとこうだ。
『テンションが高くて頭の良くてリクラスのリーダーで顔はイケメン』
これ以上も凄い所もあるのだがこれ以上言うと俺の眼から水が流れてしまうのでやめておこう。
「あぁ省吾。にしてもこの教室の騒ぎ具合は何なんだ?」
「今日何と美少女の転校生が来るらしい」
「……聞いてもいいか?」
「何だ?」
「何で美少女だって決め付けて言えるんだ?」
「俺の情報網をなめてもらっては困るな~菊文字~」
どこから仕入れて来たがわからんが、これ以上聞くと闇の部分も聞いてしまいそうなので
やめておこう。するとこの教室の騒ぎ具合に風をきる様にこのクラスの担任の
山口先生が現れた。
「えー皆も分かっているとは思うが今日転校生が来ることになった」
「いえー!」
「やったぜー!」
「ついに俺の学校生活にも変化が」
教室中の男子から歓声ともいえないわめき声とも言ってもいい声が教室中で沸き起こっている。
「じゃあ入ってきてくれ!」
山口先生に呼ばれて教室に入ってきた。
その彼女を見ての第一感想はこれだ。
まず昨日の意地悪少女を思い出す。
似てるな~昨日の生意気少女に
「私の名前は、七海虹花です。皆さん仲良くしてくださいね!」
この声はやっぱり……
俺の生活を脅かす出来事の始まりだった。