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第九話      剣士

「何が起こっているんだ!」

 

 見渡す限りの敵は全て倒れている。

 何かパチッと音が聞こえたが、どこからなっていたんだ?


 「ここにいるのは俺とこの敵だけだ。ん?あの人影は?」


 「僕のことだね!」


 「うわっ!なんだ!」


 「僕の名前はトンプリー。

 剣士であり旅人だよ。

 よろしくね。えっと、、君の名前は?」


「俺の名前?俺の名前は…」


 なんだなんだなんだ!

 いきなり敵が倒れて、いきなり知らない奴が現れて、いきなり自己紹介をされて、いくらなんでもスピード感がはやすぎないか?

 まだ状況が把握できていないが、とりあえずこいつは怪しすぎる。

 初対面にしては親しみすぎている。

 いくら社交的な人だって、ここまで話を詰めてくることがあるか?

 それとも、ただ単にこんな性格なのかもしれないが。


「へぇ!君の名前はそうやって言うんだ!

 君は旅人かい?

 その見た目を見る限り、弓使いかな?」


「まあ、そんな感じです。」


 いや、この世界弓でもちゃんと伝わるんかい!

 女神のせいで弓なんて呼ばないと思ってたわ。

 まず、剣士って言っていたところから、違和感があったな。


「まあ、とにかくよろしくね。」


 とりあえず、そんな悪いやつではない気はするな。


「さっきまで周りにいた敵が一気に倒れていったけど、あれは全部君がやったのか?」


「ああ、もちろんだよ。あの程度だったら、これくらいやっておけばいいと思って、あまり力は使わなかったよ。」


 つっよ!俺なんてあの量だったら、倒されずに逃げ切るのも一苦労なのに、流石剣士だけあって強いな。

 けど剣士って言う割には強そうだけど、剣を使っているところは見たことがないな。


「ガルルルー」


「まだ二、三匹生きているぞ!やれるか?」


「ふっ。それくらい容易いさ!」


「シューーーーン!」


 なんとも目を疑う光景だった。

 なんと、剣を少しも敵に当てずか敵を2匹同時に倒してしまった。


「すごい!あんなのどうやったんだ!」


「簡単さ。剣の先で敵の方向に風ができるように剣を振るだけだよ。」


 すげーー!全然言っている意味分かんねぇー。

 なんだ剣の先が風を作るって、ネトゲでも聞いたことないわ!

 まあ、めっちゃ強いことは分かったけどな。


「とりあえず、危ないところを助けてくれてありがとうございます。」


「おいおい。急に改まってなんだ?僕たちはもう仲間じゃないか!」


「仲間って?」


「違うのか?」


 俺は戸惑ってしまった。

 今まで誰かがこんな感じに誘ってくれたことはあったが、それに応えることができず、消極的な選択ばかりをとっていた。

 もしかしたら、それのせいで何回も損をしてきていたのかもしれない。

 それなら、今こそは、変わらなければ!


「では改めて、よろしくな。」


「ああ、これから共に戦っていこう!」


「すっ。」


 と彼は手を出してきた。

 すぐに俺も握手をしようとしたが、手がすっかり悴んでしまっている。

 こんなこと、又とない大事なことだ。

 ここはしっかりと手を温めてよう。

 ポケットに手を入れて高速で動かせば、多少は摩擦であったまるか。


「ガサガサッ」

 

「さっきから何をしてるんだ?

 考えていることはわかるんだぞ。」


 なんかさっきもこんな言葉聞いたな。

 やはり剣士といっても、こんな感じに抜けているところもあるみたいだな。


「すまない。手が悴んでしまって、動かしにくいんだ。」


 俺は急いでポケットから手を出そうとしたら、勢いで中のティッシュが飛び出てしまった。


 「ぽろっ」


 「うわっ!!」

 

 突然剣士は大声を出して驚き出した。


「どうしたんだ?突然大きな声を出して?」


「その汚いものはなんだ?」


「ああ、すまない。

 これは俺のポケットの中に入りっぱなしだったティッシュだ。

 すぐに拾うよ。」


 使用済みで、鼻水がついていてビシャビシャのティッシュ。

 やはり汚く感じるのか。

 この感じも、さっきのあいつと感性が似ているな。

 もしかしたら、この世界の人たちは全員これで嫌がるのか?

 今度女神にもやってみるか。


「取り乱してしまったが、これからよろしくな。」


「ああ、よろしく」


「そういえば気になっていたことがいくつかあるんだが、剣士と言っていたのになぜ最初に敵を倒したときは、剣を一切使わなかったんだ?」


「それは言っただろ?

 あの程度だったら、大したことはしなくていいと」


「あの敵って、そんなにいろんなところにいるのか?」


「いや、そんなことは、」


 なんだ。あの敵はやっぱり他のところにはいないチュートリアル向けの雑魚キャラなのか。

 やっぱ魔王を倒すのは、あれよりも強い敵を倒せないといけないんだな。


「あと、結構あの声のやつに似てないか?」


「あの声ってなんのことだ?」


「あの声って言ったらあの声だよ。

 この建物に入った時に聞いただろ?

 言葉の言い回しとか、あと謎に潔癖症のところとか、この世界はみんなそうなのか?」


「ここまで潔癖なのは僕ぐらいでは?」


「じゃあ、もう一つ聞くけど、その声を聞いてないなら、どうやってここに入ってきたんだ?」


「どこって、あの上から入ってきたんだ。何か疑っているのか?」


「じゃあなんで、敵は倒したのにすぐに戻らなかったんだ?

 ここに降りてきたってことは、戻ることも考えてたんだろ?」



「……ふっ、仕方がない。バレてしまったみたいだ。」


「?!」


「では、改めて自己紹介をしよう。

 僕の名前はトンプリー。

 この国の剣士でもあり………この国の魔王軍幹部の幹部を務めています。」


「まっ?魔王軍幹部?!」

毎週金曜日の9時更新予定です。

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