第十九話 食堂
「ノートを盗んだ奴はそいつなんじゃぞ!」
「?!あいつが俺のノートを盗んだのか?」
「そもそも、なんであいつの名を知っているんじゃ?」
「俺がたまたま牢屋の前を通りかかったら、ここから出してくれと話しかけられたんだ」
「あいつを逃したのか?」
「いや、流石に逃すわけないだろ。
犯罪をして捕まったって言っていたからな」
もし仮に、あいつが嘘をついて犯罪をしていなくて、間違えて入ってしまった、なんて言われたら、あの場所から逃してしまっていたかもしれない。
いや、どっちにしろ、あの場所から出す方法も分からなかったから大丈夫か。
「ふぅ。それなら良かったんじゃがな。
あいつはあれ以外にも、たくさんのものを盗んでおる。
だが盗まれただけで捕まえることはできなかったんじゃ。
ようやく今日、捕まえることができたのじゃ」
なるほど。いくら怪しかったとは言え、流石にそれだけでは捕まえたりしないか。
「あんな奴、逃してたまるか」
村長も、あいつに対してはかなり敵意があるみたいだ。
「こんなところで話すのもなんじゃ。
この村には遅くまでやっている食堂があるんだ。
今晩はそこで食べよう」
「わかった。では、いこうか」
俺は、村長に連れられて食堂へ向かった。
「技は覚えれそうか?」
「はい。なんとか。
やっぱり自分の物なんで、すぐに思い出せそうです」
「無くさないように気をつけてくれよ」
「普段から肌身離さず持っているので大丈夫です。ほらっ、」
「ハッハッハーそれは関心じゃ」
そんなことを話しているうちに、食堂に着いた。
もう遅い時間のはずだが、食堂はまだ明るく、人の声が聞こえてくる。
「ここの飯は美味いぞ!
わしは世界一美味い飯だと思ってとるんじゃ」
なんとも村を大切にしてそうな村長だ。
そうして食堂の中に入って行った。
中は広々としていて、まるで教会のようだ。
その割には意外にも人は多くはなく、いるのは宴会をして騒いでいる団体だけだった。
なるほど。だからあんなにも声が聞こえたのか。
「よし。食べるものを買いに行くか。
お前さんは何が好きなんじゃ?」
何って言われても、この世界の食べ物なんて知らないし、風土的に俺の国では出されないような変な食べ物とかが出てきたら嫌だからな。
アニメとかだと、こう言うのを無理して食べるのをよく見るが、無難っぽそうなものを頼んでおくか。
んー。だが、この世界でしか食べられないものも食べてみたいっていう気持ちもあるが、ここは無難に…
「じゃあ、おにぎりで」
「おにぎり?本当におにぎりだけで腹が膨れるのか?」
「はい。大丈夫です。」
とりあえずおにぎりはこの世界にきちんと存在しているみたいで安心した。
「じゃあ頼むか。わしはいつもので、この子にはおにぎりをくれないか?」
「おにぎり?おにぎりってうちのは味があまりなくて、他のものと一緒に食べるのが普通だけど、それだけでいいのかい?」
「はい。」
「遠慮しないで。旅人なんでしょ?
お金は取らないであげるから、この村の名物くらい食べていきな」
やはり、何か分からず、少し迷ったが好奇心には勝てず…
「じゃあ、それをお願いします。」
「わかったよ。じゃあ、すぐ作ってあげるからね」
「やっぱりあれは美味いから、食べておくべきじゃ」
「では、楽しみにしています」
「じゃあ席に座っておいて。
今日は人が少ないから、席まで持ってあげるね」
「おーー。助かるわい」
そして俺たちは、そこから一番近くにあった席へ歩いて行った。
俺は席を見つけ、通路側から奥の方の席に座ると…
「わざわざ奥の席まで行ってくれるなんてありがとうなぁ。」
「えっ?それって普通なんじゃ?」
「最近の若者は自分勝手で、早く座りたいからか手前の席に座るんじゃよ」
それはいくら何でも自己中すぎないか?
このスペースからして、どう考えても1人しか通る隙間がないのに、どうやって座れと言っているんだ?
最近の若者と聞くと、あまりいい気がしないが、この人の言っている人は確かに普通じゃないな。
そんな話をしていると、まだ席に座っていないのだが…
「はい。お待たせ!」
もうご飯が出来上がったようだ。
ようやく食べ物にありついた。
「ぐううーー」
お腹がなってしまった。
しかし、その出来上がった料理を見ると、俺は言葉を失ってしまった。
「我が村の名物。コンボーの丸焼きだよ!」
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