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九話 元公爵令嬢、乙女ゲームの存在を知る

「あ、頭が痛くなってきたわ……」

「すみません、テンション上がって一気に話し過ぎちゃいました……」


 少女から聞いた話のあまりの情報量に、私は頭を抱えた。少女はというと、申し訳なさそうにちょこんとベッドの上で正座をしている。


 ____私なりに彼女の話を要約させてもらう。


 この少女は、私が知らない異世界にある『にほん』という国からやってきたらしい。そこで彼女は『だいがく』に通う普通の女性だったが、ある日交通事故に遭ってしまい、亡くなってしまったそうだ。


 しかし翌朝、私と同じように目が覚めたらしい。すると、そこはなんと彼女の実家……クラーク男爵家のベッドだった。

 そして、当然容姿も前世の姿ではなく、クラーク男爵令嬢のフリージアに変わっていた。


 ここまでは、大体私と一緒だった。しかし、私と彼女……フリージアが違うのはこの世界への理解度だ。


 フリージア曰く、この世界は『にほん』で有名な娯楽である『乙女ゲーム』が舞台なんだそうだ。

 その乙女ゲームとやらは、ヒロインの少女が美形の攻略対象を次々と恋に落としていく過程を楽しむ……というものらしい。まぁ、恋愛小説のようなものと考えてもいいかしら……?


 ちなみに、この乙女ゲームのタイトルは『花の乙女~ときめき学園生活~』らしい。フリージアはこのゲームの大ファンだったことから、私の名前も最初から知っていたのだそうだ。


 そして、このゲームのヒロインがフリージア。

 そのフリージアに散々意地悪をしたり、邪魔をしたりして最終的に処刑されてしまうのが、悪役令嬢のセシリアである私……ということらしかった。


 ____つまり私は、このままだとまた処刑されて終わるってこと!? そんなの、絶対に嫌なのだけれど……!!


 ……まぁ、フリージアのおかげでなんとかこの世界の構造は理解することができた。通りで周りの人の好感度が上がりやすいわけだわ。そういう世界観なら、当然なのかもしれないわね……。


 とりあえず私は、なんとかして処刑エンドを回避しなければならないということだ。

 でも、一体どうやって……そもそも、誰が攻略対象なのよ……。


 そんな風に考え込んでいる途中、ふとあることが気になって、フリージアに問いかけた。


「ねぇフリージア、あなたの話だと、本来私はあなたの敵よね?」

「はい、設定上はそうですね!」

「その割に、どうしてあなたは私に色々教えてくれるわけ? あなたはこのゲームのファンなのだとしたら、私は邪魔でしかないわよね?」


 私の率直な疑問に対し、フリージアは一瞬真顔で沈黙する。その様子を見て、思わず私は息を呑んだ。一体何が狙いだというの……?


 警戒する私に気付いているかはわからないが、フリージアがゆっくりと口を開く。


「それは……ですね……」

「…………」

「私が……セシリア様の大ファンだからですよ!!!!!」


 ??

 ……………??????


「私にとってセシリアたん……じゃなかった、セシリア様は女神! 私はイケメンよりも美女が好きなんです!! 正直攻略対象とかどうでもよくなるくらい、セシリア様のことが好きだし幸せになってほしいんですよ!! なのに処刑されちゃうのが悔しくて悔しくて、何度涙を流したか……!! わかりますか!? この気持ち!!」

「え、いや、ちょ、ちょっと落ち着いて……」

「だからですね! 私は見てみたいんです!! 悪役令嬢のセシリア様による『逆ハーレム』エンドを!! 今のセシリア様……いえ、元公爵令嬢のセラフィーナ様なら、絶対にできます!!」

「な、何を言って……?」


 どうしましょう、フリージアの言っていることがさっぱりわからない。

 でも、なんだか私のことを好きでいてくれている……のよね?


「……正直、よくわからないけれど……とりあえず、私とあなたはお友達になれる……と考えてもいいのかしら?」

「え!? 友達!? いいんですか!?」

「えぇ、もちろん。それに……同じ転生者の仲間がいるというのは、とても心強いもの」


 私はそう言いながら、フリージアに手を差し伸べる。

 フリージアは動揺しながらも、その手を優しく握り返してくれた。


 これで、友達は三人目ね。中々いい調子なんじゃないかしら?


 そんなことを考えていると、フリージアは「あ、」と何かを思い出したように小さく声をあげた。


「そういえば、セシリア様って弟がいますよね? ギルバート様っていう」

「えぇ、いるわよ? ギルがどうかしたの?」

「あの人、攻略対象のうちの一人ですよ。それにしても、もう愛称で呼び合う仲になっているなんて……セシリア様は流石です!!」




 _____そういう大事なことは、最初に言ってくれないかしらね!?

 私は気が遠くなりそうになるのをなんとか堪えながら、この先の学園生活に思いを馳せるのだった……。

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