表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

六話 元公爵令嬢、初めての友人ができる

 入学式は大講堂で行われるらしい。

 私は周りに見つからないよう、極力目立たないように歩いて、なんとか目的の場所まで辿り着くことができた。


 席は決まっていないようだったから、前すぎず後ろすぎない、ちょうど良い位置の空席に腰掛ける。


 ……ところまでは、よかったのだけれど……。


「ねぇ、後ろに座ってる方って……」

「間違いなく、ランカスター伯爵家のセシリア様だわ……! 私、一年前のお茶会でドレスを馬鹿にされたから、よく覚えているもの」

「やっぱりそうよね。私は話したことがないけれど……てっきり入学式も派手な服装で来ると思っていたのに……」

「なにか企んでるんじゃない? なんにせよ、警戒しておくに越したことはないよね……」

「ちょっと、気をつけないと聞こえるわよ」


 ____心配しなくとも、もう全部聞こえてるわよ!!


 前に座っている二人のご令嬢の名前は……ダメだわ、思い出せない。

 セシリアは社交界に頻繁に顔を出す割に、人の名前を覚える努力を全くしていなかったのよね……。


 でも、流石にこのままだと良くないことくらいはわかる。彼女たちから噂が広まってしまえば、学園内でも一瞬で悪女扱いされるもの。

 ……少しくらいは、誤解を解いておいた方が良いかしらね……。


 そう思って、コホン、と小さく咳払いをする。前に座っていた二人がビクッと肩を震わせて、おそるおそる振り向いた。


「……ごめんなさい、私の名前が聞こえたものですから、驚いてしまって……。少しむせてしまいましたの」

「そ、そうなのですね……?」

「えぇ……。それより、以前のお茶会で、私は貴女にとても失礼なことを申し上げてしまいましたよね?」

「え、えっと……」


 突然話しかけられたショートカットのご令嬢は相当動揺している……というか、怖がっているようだわ。

 いけない、もっと申し訳なさそうな顔をしないと……! 


「……私、あれからとても反省しましたの。あの時は……貴女のドレスがあまりにも素敵だったものですから、嫉妬からあんな酷いことを申し上げてしまったのですわ。許してほしいとは言いませんけれど……謝罪させてくださいませ」

「えっ? いや、わ、私こそ、ごめんなさい……?」


 ご令嬢が困惑、いや混乱した表情で返事をしてくれた。いいわね。あと一押し……!


「改めまして、私はランカスター伯爵家のセシリアと申します。せっかくの新入生同士ですもの。これからの三年間、よろしくお願いいたしますわ」


 ここで、王妃教育で何度も練習した笑顔を披露する。


 ショートカットのご令嬢が「わぁ……」と少し顔を赤らめてから、「わ、私はアルドリット子爵家のエドナと申します!」と自己紹介してくれた。

 エドナね、覚えたわ。


 エドナに続いて、三つ編みのご令嬢も「私はオールポート子爵家のソフィアと申します。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」と挨拶してくれた。


「私、心を入れ替えたは言いものの、まだ友人と呼べる方がいませんの。よろしければ、お二人共仲良くしてくださる……?」

「は、はい! しょ、正直セシリア様のこと、怖い方だと思っていたんですけど……。でも、セシリア様の方が身分が高いのに、子爵令嬢の私に謝っていただけるなんて……! エドナ、感動いたしました……!」


 よし!!!

 これで悪女の噂のタネを一つ潰すことに成功したわ……!


 公爵令嬢時代に鍛え上げたこの表情筋が、まさかこんなところで役に立つとはね……。


 ……そんなことを考えていた時、式が始まるというアナウンスが会場に響いた。


「……あら、入学式が始まるみたい。それではお二人共、また後で教室でお話しましょう」

「はい、楽しみにしております!」


 エドナが嬉しそうに笑ってから、前を向いた。

 ソフィアも先ほどより表情が柔らかい。


 これは攻略完了……と思いたいけど、どうかしらね……?


 ……それにしたって、やっぱりこの世界の人達……あまりにも素直すぎないかしら……。

 なんというか、好感度が上がるのが異常に早いというか……。


 ま、まぁ、物語の世界なんだもの、気にするだけ無駄よね!


 この調子で、どんどん悪い噂を塗り替えていくわよ!!



 ____そんな風に意気込んでいた私は、まだ知らなかった。

 この入学式の直後、"運命の出会い"をすることになるなんて……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ