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二十話 元公爵令嬢、友人の存在を噛み締める

「……リア様! セシリア様〜!」


 ____なにかしら……誰かが私の名前を呼んでる気がする……けど、瞼が重いわ……。


「も〜! 起きてってば! セシリア様ったら! えいっ!」


 ____ペシッ!


「っ、きゃっ!?」


 突然、おでこに地味な痛みが走る。その衝撃で一瞬で目が覚めて、ベッドから飛び起きた。


「な、なに!? 敵襲!?」

「違うよ〜! 今のはデコピン!」

「……なんだ、フリージアだったのね。というか、でこぴんって何……」


 一瞬何事かと思ったけれど……。

 フリージアは二つの通学バッグを持って、私の目の前で仁王立ちをしながらよくわからない言葉を告げてきた。


 ____待って、バッグを持ってる……ということは、つまり……


「もう、下校時間なの……!?」

「そうだよ! セシリア様、全然起きないんだもん……すっごい心配したんだからね……」


 さっきの元気な雰囲気から一転して、フリージアが涙声で告げてきた。

 そういえば、この子は私の怪我を自分のせいだと思っているんだったわね。


「最近ちょっと寝不足だっただけよ。心配させてごめんなさいね」

「でも、私のせい……だよね……」

「もう、違うわよ。でも……どうして私を殿下の前まで連れて行ったの? スチルがどうとか言っていたけれど……」


 私がそう言うと、フリージアは叱られた子犬のようにしゅん……と肩を落とした。


「……あのね、図書室で勉強している殿下と遭遇して、首席の殿下に勉強を教えてもらえるイベントがあるの。だから、セシリア様を連れていけばそのスチルが見れるかなって……」


 ___なるほど、そういうことだったのね。でも、この子肝心なことを忘れていないかしら……?


「……今の首席は私なのだから、そのイベントは起こらないのではないかしら……」


 私がぽつりと呟くと、フリージアはあんぐりと口を開けてから、この世の終わりのような表情をした。


「ほ、ほんとだ……あれは、フリージアがおバカキャラだったから成立するイベントなんだった……!」

「十分今でもおバカだから大丈夫じゃない?」

「そういうことじゃなくて、私はセシリア様のスチルが見たいんだよぅ……なのに怪我しちゃうなんて……私のバカ……」


 そう言って、フリージアは更に落ち込んでしまった。

 スチルのことはよくわからないけど、本当に怪我のことは気にしなくていいのに……。


 ここは無理にでも、話を変えるしかなさそうね。


「それより、バッグを持ってきてくれたのよね?」

「あ、うん! 教室まで移動するの、大変かなと思って」

「ふふ、大袈裟よ。でもありがとう」

「任せて! 昇降口まで荷物持ちするから!」


 そんなことを言いながら、ふふんと胸を張る。

 良かった、元気になったみたいね。


 やっぱり、この子が元気だと、私も嬉しいわ。……こういうのを、友人というのでしょうね。


 前世ではこんなに気兼ねなく話せる友人がいなかったから……。

 怪我をしたというのに、今日は良い日だわ、と思ったのだった。

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