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天使だって、汚いものはあんまり好きにはなれません  食欲旺盛(すぎ)

どんなに不清潔でも、心が澄んでいれば好きに慣れますということを思った人。


実際に実行できますか?

「嗚呼、うまかった。ご馳走様でした」

 汚い少年はそう言って笑った。笑ったからといっていい奴になるわけもなく、汚くって意地汚いという印象は変わらない(ダブルで汚い)。

 飴を与えた後、少年は一瞬幸せそうに微笑んだがまた倒れてしまった。ぼろぼろの自転車が本当にお似合いであったあの情景は、まだしっかりと覚えている。だって、三十分前の話しだし。

 その後餓死してさようならと言う展開になるかなっと思ったけど、それは天使の私にはタブーと思われる行為だと思われたから、しょうがなく食物エサをわけてしまった。つ い で に、私は本当は優しいが素直でない奴というわけではない。そこは、結構重要だと思う。

 そしたら、倒れた少年は私が持ってきた食物《カップラーメンの生の奴》をバリバリと食べ始めたのだ。多分、半径三十センチ以内にあるものは全て食べてしまう癖でもあるのだろう。その時も容器後と食べた。吐き出したけど。そして、余すことなくカップラーメンの中身全てを食べつくしたところで、一言そう言ったのだった。

「それはよかったわね」

 私の顔は引きつっていなかっただろうか? ついでのついでのついでだけど、私のスカートが汚れてしまった。どうして何によって汚されたかは書くまでもないだろう。さらにそのついでだけど、私はまだ夕食を食べていない。天使もおなかがすくのだ。目の前の少年と同じ生物の十倍は食べなければ、倒れてしまうこともある。

「ごめんね。貴重な食料を僕なんかのために。だけど、どうして僕に食料を与えてくれたの? 」

 声だけ聞けば、少女漫画で主人公と結ばれると思われる優しくてかっこいい美青年のようだ。髪の毛は茶髪でちょっと長め、王子様キャラって感じだなという妄想も充分に働く。まぁ、本当に髪の毛は茶髪で長めなんだけど。ぼさぼさだけど。

 っていうか、謝るんだったら軽く遠慮しろよ! 

「うーん、良心によってかな。のたれ死んでいる生物を無視できるほど、私はひどくないから」

 もっとも、スカートをあんなもので汚されてまで持っていられるほどの良心ではないが。

「じゃあ、俺のことまだ知らないのか」

 ボソッと少年が何かをつぶやくのが聞こえた。

「えっなに?」

「否、なんでもないからさ。とにかくありがとう」

「…………」

 そう改めて言われるとちょっと照れるかもしれない。ありがとうねぇ。ききなれない言葉。

「お礼、だよ」

 少年は、私の手の上にコイン三枚を置いた。ってうそ! これ、このカップラーメンの三倍の料金じゃん。

「いいよ、そんなに」

 私は少年にそのコインを返そうとするが、少年の手は中々捕まらない。ふとそんななか、目が合う。

「いいよ……そんなに」

 私はすぐうつむいた。目をこれ以上あわせていられなかった。少年の目は優しさと、嬉しさであふれていた。純粋で無垢なものに触れてしまった気がした。決して、手の届くはずのなかった。

「じゃあ、またきてよ。また、なんか食べさせてよ。それで、これみっつ。ちょうどだろ?」

 耳に届く少年の声は、汚い少年の声とは思えない。

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