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天使だって、最後は……

少年のKYさ加減

自分的には

気に入ってました

 そこには一人の少年が辛そうに寝ていた。血にまみれて……。私は一瞬頭が真っ白になってしまいそうになる。

 少年は私のよく知るあの少年でしかなかった。人違いなんかじゃなくて限り無くあいつでしかなかったんだ。

《お前天使だったんだ》

 不意に響く頭の中の声と連動するようにあいつは笑う。思い残すことは無いとでもいうように……。やっぱり目の前の少年はあいつでしかない。そう思い直すと胸がずきずき痛むような気がする。

 天使の癖に。

 結局彼の言うことに私は一言も返せなかった。なんかやるせない。

《驚けよな、たっぷり。僕も今結構驚いてんだからさ》

 血がとどめなく流れていて今にも死んでもおかしくないのにあいつは僕は元気と言いたげにやっぱら笑っている。私でさえ笑えないのに。私でさえ死んじゃいそうなあいつの姿が痛々し過ぎて笑えないのに。

 お前は強いよ。

 結局また私はしゃべることはできない。

《そう、僕だよ。噂の殺人鬼は僕。おかげで逮捕されそうだよ。本当に最近の警察は優秀。僕にこんな派手な傷負わせちゃってさ。》

 あいつは相変わらず笑顔を崩さない。肩から血は流れ続けているのに。あと二分。これがあいつの残り時間。私とあいつには長すぎて短すぎる時間。

 果たして私はあいつと何言交わせるだろうか? 会話はちゃんと成立するか……。結局また黙り込むことしかできない。

《ん?自首して捕まった話はどうなったって?あれは嘘。お前をもう一度ここにこさせるためのな。お前以外と曲がんないし》

 一言一言が今はまるで宝物のように大切なのに他愛もなすぎて、まるでこのあともずっと幸せな日々が――幸せ……そう幸せだった。楽しかった日々が――いつまでも続いてくれるような気がして、なんかとても悔しい。続くことができたはずの時がなにかによって壊されてしまったことが。

 今こそ泣きたかった。かっこ悪くてもいい。人目を気にせずただ泣きたかった。でも、天使は泣けない。私はどんなに辛くても光姫様のために働かなければならない。それが私の唯一無二の存在理由だから。

 また私は言葉を返せない。

《で、お前にお願いがあるんだよ》

 お願い? なんだろう。できるだけ叶えてあげたいけど……。私は始めて、今日あってから初めて真っ直ぐにあいつの目を見つめる。真っ黒のちょっとにごってしまったような目を。そして、ひとつあごを動かしうなづく。

 結局私はまだ喋ることができていない。

《この自転車、よろしく。粗大ゴミにして捨てるのはもったいないから》

 …………、あっそうですか。それだけですか! 遺言。なんだよ……昨日いってくれたことのほうが数倍ましな感じするんですけど。でも、ちょっとだけ嬉しいかもしれない。この黒い自転車は確かにぼろぼろだけど、でも私は形見を持っていることでいつでも思い出せそうな気がして。

 それに、天使の羽って本当に体力の消耗っていうのが激しいしね。

 刹那、死神の鎌が彼の胸に舞い降りる。時間がきたようである。


――私は笑えていたかな?

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