天使だって、天使だって、天使だって、天使だって――……
――――…………
「おはよ、まみ」
「おはよ、みま」
相変わらず私のなぜか斜め後ろの席の2人は一緒に登校して来てそれなのにもう一度おはよ、と挨拶をしなおしどちらかの席に集まって会話を始める。あまりにも日常的過ぎる光景。なのに、私はうらやましいなんて思ってしまったような気がした。話し相手がいることが。
「ねぇ知ってる?」
「なにを?」
「一組の桜庭君、恵ちゃんとできてるんだって~」
「それなら知ってる。でもひどいよねぇ、私狙ってたのにぃ」
「狙い高すぎだ! もっと身近なところ狙えよ~。あんなかっこいい子みまなんかと付き合ってくれるわけ無いじゃない~。雲の上の存在よ!」
「まぁ、そうだけど……断言するなんてひどいなぁ」
「だって、事実でしょ?」
「うっ」
ばっかみたい。天使がなに言ってんだか。天使に話し相手は要らないし、私が欲しいのはあくまでもいつまでも隣にいてくれる人――友達って言い換えてもいい――だけ。決して朝内容が無いようなお喋りをする相手はほしいわけではない。でも……、やっぱり何故か羨ましいんだよね。そう自然に楽しそうに喋ったり遊んだりできる彼女等が、私と全然違う人間の彼女等が。
尤も、人間になんていう低俗な生き物に逆戻りする気は無いけど。光姫様が私にはいるから、彼女のためだけに私は生きてるから、彼女のために生きられないのならもうそれで私は意味の無い存在。
「じゃこっちは知ってる?」
「えっなになに?」
「殺人鬼、捕まったんだって」
「うそ、本当!?」
「ホンとホンと。あの私が昨日言った岡の上の人なんだって犯人。どうやら昨日の七時ごろ自首してきたみたいなんだって~」
え!? 殺人鬼が岡の上の人? でも、でもあいつはいい人だったでしょ? 私になんかひどいことしなかったし、私の隣にいてくれた……。そんなわけないよね。あいつが犯人なんて私の聞き間違いだよね。それに七時ごろ私がさよならを……言った後?
「へぇ~。でも、なんで折角隣町まで逃げ切ってたのにいきなり自首してきたんだろう? それって不自然じゃない?」
「そんなこと私に聞かないでよ~。まぁ、もしかしたら仲間に裏切られた、とか!? それで辛さのあまり生きる意味をなくし自首、みたいなっ!!」
仲間に裏切られた。
私、昨日何をやったの? 私、なんで昨日あいつにさよなら言いにいったの? なんで私はあいつにさよならを言わなければいけなかったの? それは光姫様に天使として仕えてるからって違う。そんなの関係ないよ。あれは、私のただの勝手でただのわがままで……。じゃあ、あいつの生きる意味を奪ったのは私なの!? 違う違わない違う違わない違う違わない――。
違わない。
「あっそれありかも、それで刑はどうなるの?」
「まだ裁判やってないからわかんないけど、いっぱい殺してんのなら死刑じゃない?」
「死刑!! それ本当!?」
つい、叫んでしまった。無意識に口が動いてしまった……嗚呼失敗失敗。二人とも叫んだ私を見て表情を固めてる。また、クラス中の人がこっち側に視線を集めてくる。
そのあとまみはちょっと迷ってから呪いの子の質問に答えたら呪われるのかもしれないと思ったのか、私のことを無視して話し始める。クラスの人たちも何事も無かったようにまた喋るのを再開する。
「うん、きっと死刑」
「だね。殺人者なんて生きている意味ないよね」
そんなこと無いってまた叫びそうになったけどこれ以上周囲の注目を浴びたくないから、その言葉を飲み込む。
つまりだ、彼は私のせいで死にそうになっているってことだよね……、私のせいで。助けなきゃ……絶対に。




