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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第二章 ソースノ島奪還作戦

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8. 未知なるミモニー

「はぁ……」

「はぁ……」


 ガタンゴトンと揺れる軍用車両の中、二つの大きな溜息がマルを苛立たせた。


「ちょっとシエン、空気が重くなるから止めてよ」

「お前が容赦ないからだろ!」

「真面目に仕事しただけよ。シエンがノーコンすぎるのが悪いんでしょ」

「ぐは!くそぅ、狙うの苦手なんだよ!」


 隊長と別れ、地上の敵施設を破壊してまわったシエンとマル。どちらが効率的に破壊出来るかという勝負をしたのだが、マルの圧勝だった。

 最低限の攻撃で的確に施設を全壊させるマルに、狙いがズレて中途半端な破壊ばかりになってしまうシエン。多少の負けならまだしも、あまりにも下手すぎて途中から魔力の無駄だから止めろとランベリーに注意されてしまうほどだった。


 己の実力不足を嘆いて溜息が出てしまったのだ。


「でもあんたの方が魔力量が多いでしょ。羨ましいよ」


 マルは攻撃精度が高い代わりに魔力量が少なく、しかも体調に影響してしまう。

 いつも元気で魔法を使いまくっているシエンのことが羨ましかった。


『二人して無い物ねだりなんてしてないで、集中を切らさないように。まだ戦場です』

「分かってるって」

「当然よ」


 彼女達は今、地上に降りて車に乗って移動中。

 防衛側はソースノ島東部奪回のために戦力を投入するのではなく、西部での防衛に徹すると決めたらしい。ゆえに飛行部隊は魔力回復の為に地上部隊と合流して進軍中。


 ちなみに車は敵軍のものをかっぱらった。小島に追いやられていた彼らがそんなものをここまで運ぶ手段など無いからだ。


『本当に分かってるの? トサインが居なければ撃墜されてたかもしれないのに』

「うっ……」

「うっ……」


 地上施設の破壊にばかり注意を向けていた二人は、森の中に潜んでいた敵兵に気付かず、上空に向けて放たれた魔力弾に当たってしまうところだったのだ。トサインがそれを魔力弾で相殺して消滅させなければ大ダメージを与えられてしまっただろう。トサインに二人を守れと命令したミモニーの判断は大正解だった。


『それに防御(ガード)の魔法は今もちゃんと使ってる? 横着して使わず休んでいる人を狙って遠くから狙撃してくることがあるの。少ない魔力量で物理攻撃から全部守ってくれるんだから、絶対に切らさないようにしなさい』

「分かってるって」

「しっかり使ってるよ」


 彼女達の周囲は薄っすらと魔力の膜で覆われていた。

 それが防御(ガード)の魔法であり、科学が発達した社会で戦争の在り方が大きく変わった要因の一つ。銃はもちろんのこと、毒ガスや放射能汚染からも守ってくれる優れもの。既存の攻撃手段が全て無効化されてしまったのならば、新たな戦い方を考えるしかない。


防御(ガード)といえば……隊長、少々よろしいでしょうか?」

「はぁ……」

「隊長?」

「え? 何? 私?」

「まだ気にされているのですか?」

「うううう……だってぇ」


 涙目で軽く地団太を踏むミモニー

 そんな彼女をシエンもマルも不思議そうに見る。


「沢山倒したのですから、良いことではないでしょうか?」

「向こうの部隊も感謝してましたよ?」

「作戦と違うんだからダメなんです!」


 シエンとマルと別れ、単独で青い敵兵を瞬殺したミモニー。

 そこまでは良かったのだが、そこからが問題だった。


『びゃああああああああ!どうしよおおおおおおおお!』


 戦場から離脱して後のことを味方に任せたいのだが、そもそもまともに飛べないミモニーが離脱など出来るはずがない。そのまま戦場を縦横無尽に不規則に飛びまくる。

 そしてそんな彼女を敵が狙ってくるものだから対処せざる得ない。


『死いいいいいいいいねえええええええ!やっちゃったああああああああ!』


 どうにか戦場を抜け出したのは、半数近くの敵を倒した後だった。


『確かに作戦と違う行動をとったのは問題ですが、今回はミモニーに非はありません』

「で、でもランベリーさん!」

『シエンの作戦が間違っていたのです』

「あたしのせい!?」

「シエンちゃんは悪くないです!」

『シエンが悪いとは言ってません。作戦が間違っていただけ。そしてそれを精査せず進めようとしてしまった私のせいです。ミモニーの回収まで考えるべきなのを忘れていました』

「あれ? 私フォローされてるんですよね?」

『もちろんです』


 何かに気付きかけたミモニーだが、ランベリーに断言されたことで考えるのを止めた。ミモニーがポンコツなのを忘れてたと言われているためフォローになっていないのだが、本人が気付いていないのであれば良いのだろう。誰も傷つかないし。


「あ、そうだ。シエンちゃん、私に何かお話があるの?」

「はっ!」

「うう……やっぱり堅苦しい……もっと普通にお話ししてくれて良いんですよ?」

「かしこまりました!」

「全然かしこまってないんですけど!?」


 シエンもマルも、ミモニーに対して敬語を崩さない。それは相手が隊長だからという以上に理由がありそうな程に頑なだった。


「それで、何でしょう?」

「とても失礼な話であるとは重々承知の上ですが、ご教授ください!」

「丁寧すぎて何を言われるのかって不安になっちゃう……」

「隊長は防御(ガード)の魔法は苦手では無いのでしょうか!」

「あれ、そんなこと? 苦手だけど頑張って練習したんですよ」


 練習してなんとかなるのであれば、飛行も練習すれば良いのではないだろうか。

 確かにそうかもしれないが、ミモニーは防御(ガード)の練習を優先していた。


 優先させられていた。


「学校の友達がね、防御(ガード)だけは使えるようにならなきゃ危ないって教えてくれたんです。そればかり練習してたから、他は全然上手くならなかったけど。もちろん防御(ガード)だってまだまだ下手なんですけどね」


 ミモニーの身体を覆う防御(ガード)の膜は、他の人のそれよりも分厚い。厚さは防御力と関係ないため、無駄に魔力を消費してしまっていることになる。


「素晴らしいご学友がいらしたのですね!」

「うん」


 普段はおどおどしているミモニーが、とても優しい顔をして頷いた。


 その様子に何かを感じ取ったシエンとマルだが、それ以上何かを聞くことは無い。


 今の戦況を考えると、ミモニーの学友が生存しているかどうかも怪しいから。

 敢えてそのことを掘り下げて不安や悲しみを与える必要なんて全く無い。


『お話の途中ですが、そろそろ次の戦場に近づいてきました。魔力残量は十分ですか?』

「大丈夫です」

「大丈夫だぜ」

「大丈夫よ」

「トサインちゃんは?」

「…………ん」


 休憩時間はそれほど多くはなかったが、魔力を効率的に利用したため全快に近いくらいに回復しているようだ。


 だがそのことにマルが違和感を覚えた。


「隊長はいつも激しく飛行しているのに、魔力切れにならないのでしょうか?」


 全力で飛び、全力で攻撃し、それも一瞬では無くそこそこの時間継続している。

 それなのに魔力切れで墜落しそうになったことは練習を含めて一度も無かった。


「うん。不思議なんですよね」

「不思議?」

「私の魔力量って、多分シエンちゃんより少ないです」

「え!?」


 シエンの魔力量は四〇四隊の中で一番多いが、ミモニーと同じことをしたらすぐにガス欠になってしまう。計算が全く合わない。


「どうして保つのか、まだ理由が分かってないんです」


 このことに気付いたのはミモニーが戦場に出るようになってから。

 ゆえにそれを分析する設備も時間も彼女達には無かった。


『この世界で人々が魔法を使えるようになってから、まだそれほど時間が経ってません。分かってないことが山ほどあります。ミモニーの未知の現象もその一つです』


 本来であればそんな不確定要素満載で戦わせられない。

 戦場で何が起こるか分からず、それが味方に不利になることもありえるからだ。


 だがそれでもミモニーを出さない訳には行かない。


『でも私は信じています。ミモニーが私達に勝利をもたらせてくれると。彼女の未知と、敵を倒そうとする強い信念が、導いてくれると』


 それが故郷を取り戻すために最も必要な力だから。


「びゃああああああああ!どうして私がそんなに期待されてるのおおおおおおおお!?」


 尤も、当の本人はそこまでの力が無いと思い込んでいるようだが。

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