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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第二章 ソースノ島奪還作戦

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5. 反撃の狼煙

briefing

 よう、先日は大変だったな。まさかあのタイミングで敵が来るなんてな。まともに戦えなかったらしいが、その後沢山練習したとも聞いている。期待しているぞ。


 では作戦内容の説明に入る。


 ゴーテンヴァ諸島の最も西、大陸の手前にあるソースノ島に敵軍が物資や戦力を集め、近々広範囲殲滅作戦を実施するとの情報を入手した。偵察部隊によると確かにその兆候が見られるとのことだ。もしこの作戦が始まってしまえば、ゴーテンヴァ諸島に潜む同志たちは壊滅させられ、国土奪還の夢は潰えてしまうだろう。


 ゆえに我々は残された全ての戦力を結集してソースノ島を急襲し、奪還する。


 飛行部隊は四〇四隊を含めた三隊。

 北東、東側中央、南東の三か所に分かれて突入せよ。四〇四隊は中央から侵入し、敵の航空部隊を迎撃。他部隊と地上部隊の支援も行え。


 地上部隊も三隊。

 こちらも島の北東、東側中央、南東と三か所から侵攻するが、彼らが上陸するには海岸沿いの防衛線を突破しなければならない。防衛線にはマシンガンタイプの魔道機械が並べられているらしいので、飛行部隊はそれを可能な限り破壊し、上陸部隊の支援を行え。


 全ての部隊の上陸が完了したら足並みを揃えながら島の西側へと進軍し、敵主要施設を攻撃して制圧せよ。


 初心者には荷が重い難易度ではあるが、我々が生き残るにはお前達にやってもらうしかない。


 頼んだぞ。

 

ーーーーーーーー


「びゃああああああああああああああああ!なんでこんなことにいいいいいいい!」

「隊長、落ち着こうぜ」

「う~ん、今日も良い悲鳴」

「…………」


 相変わらずの介護飛行で両脇をがっちり固められているミモニーは、自分が隊長としてとてつもなく重大な戦いに参加することになったことが未だに信じられない様子だ。


「うう……シエンさんやマルさんは怖くないの?」

「そりゃあ怖いぜ、でも」

「もちろん怖いですよ、でも」

「でも?」

「「隊長を見てたら落ち着いて来たぜ(よ)」」

「なんで!?」


 たとえ怖いことがあっても、自分よりも盛大に怯えている人がいると何故か自分は冷静になってしまうという人体の不思議だった。


「私なんか隊長の器じゃないのに……もっと優秀な人なんて山程いるはずなのに……」

「「それはないぜ(よ)」」

「なんでこういう時ばかり仲が良いの!? 練習の時はあんなにケンカしてたのに!」


 それだけ誰が聞いても同じ反応をしてしまう問いということなのだろう。普段は無反応なトサインも、実は僅かに頷いていたりする。


『よう!お前達が例の四〇四隊か!?』

「びゃ!?」


 仲間達と会話をしていたら、突然無線から聞いたことの無い声が流れて来て驚くミモニー。


『全員美少女って聞いてるぜ。作戦前に会いたかったな』

『何あんたロリコンなの?』

『さいて~』

『あんな子供達を戦場に出しちゃダメでしょ』

『今のだけでロリコン扱いは酷くね!?』

『普段の行いね』

『勘弁してくれよ~』

「え?あの?え?」


 無線の向こうで一方的に会話が続き、何がどうなっているのかと慌てるミモニー。冷静な状態の彼女ならば相手の正体にすぐに気付くはずなのだが、緊張でいっぱいいっぱいな彼女は頭が回っていなかった。


『おっと失礼。俺達は君達と同じ空の仲間、三一〇隊だ』

「あ……よ、よろしくお願いします!四〇四隊です!」

『知ってるさ。エースオブエース、残された最後の希望。期待してるぜ」

「びゃ!?私なんか雑魚オブ雑魚ですよ!?」

『はっはっはっ、謙遜もすぎると嫌味になるぜ』

「事実ですよぉ~!!!!」


 誰も彼もがミモニーのことをエースだと評し、期待をしてくる。本人は己の実力など下から数えた方が早いと思っているのだから、困惑するのも仕方ないことだろう。


『あ~、あ~、こっちも自己紹介して構わないか?』

「え!?」

『二〇八対地飛行部隊だ。こっちは三人しかいないから、ヤバかったらフォロー頼むな』

「…………」

『よしお前ら。俺達にフォローは無いようだ。全力で死のう!』

「びゃあ!もしかして私達ですか!?三一〇さんじゃなくて!?フォローします!しますから死なないでええええ!」


 フォローをお願いされているのが自分達だとは思わずミモニーは返事をしなかったのだが、そのせいで彼らが自暴自棄になりそうで泣きそうになりながら慌てて反応する。もちろんただ揶揄われているだけなのだが。


『隊長、可哀想だから止めてあげましょうよ』

『そうですって。本当にフォローして貰えなくなっても知りませんよ?』

『なぁに、だったら死ねば良いだけさ』

「だからフォローしますって!生きて下さい!」

『『隊長!』』

『はっはっはっはっ』


 ミモニーの脳内で、二〇八対地飛行部隊の隊長は死にたがりと記録されてしまったのだが自業自得である。


『空の連中は気楽で良いなぁ。こっちは緊張で吐いちまいそうだぜ』

「気楽じゃないです!」

『吐いたって魚のエサになるから平気だろ。さっさと吐いて彼女達みたいに気楽になれよ』

「気楽じゃないです!」

『マジで気楽になって気を抜いて迎撃されてお前自身が魚のエサになったりしてなハーハーハー!』

「だから気楽じゃないですうううう!」


 聞こえて来たのは地上部隊の連中の声。

 それぞれの三部隊の隊長が軽口を叩き合っているのに巻き込まれた形だ。


 ミモニーの反応が楽しく、つい揶揄ってしまったのだ。


『ミモニー、そろそろ作戦空域に突入するわ。気楽にするのはそこまでにして集中して』

「ランベリーさんまで!?気楽じゃないのにいいいい!」


 もちろんランベリーにもそれは分かっている。

 分かっていて敢えて乗ったのには意味がある。


「(なるほど。こうやって軽口を叩き合って部隊全体で緊張をほぐそうとしてるのか)」

「(そのために利用されてあたふたする隊長可愛い)」


 敗北は死。

 敗走も追撃されて、逃げ切れたとしてもいずれは大規模掃討作戦により確実に死ぬ。


 勝利しか許されない運命の一戦を迎え、全ての隊員は尋常では無い程のプレッシャーを感じていた。しかも作戦に参加しているのは、新人や実力不足の者が多く、彼らの不安はより一層大きいだろう。


 そんな彼らの緊張を少しでも和らげるようにと、ミモニーを揶揄って可愛らしい反応を引き出したのだ。


 ミモニーにとってはたまったものでは無いが、狙いは十分効果があり、それぞれの部隊の面々から良い感じに肩の力が抜けていた。


『気楽じゃないのなら、この質問にも答えられるでしょう。本作戦で最も気を付けるべきことは?』


 何が何でも生き残ること。

 ピンチの味方を出来る限り助けること。

 地上部隊の上陸作戦をフォローすること。


 気を付けるべきことは山ほどあるが、その中で最重要とも言えることがある。


「もちろんです!魔力を無駄に使いすぎないことです!」


 作戦は長時間に渡ることになるだろう。


 それなのに無駄に弾幕をばら撒き、無駄に高速飛行をし、何度も攻撃を外しまくる。


 そんなことをしていたら直ぐに魔力が尽きて、戦場から離脱する羽目になってしまう。離脱して魔力を補給する手段はあるが、その間に戦線が壊滅するかもしれないくらいには戦力が乏しいのだ。


 限られた魔力で最大限の戦果を発揮する。


 そうでなければ、勝利に手が届かない。


『シエン、焦って無茶なバラマキをしてはダメ』

「う゛……もうしねーよ!」


 初戦でミスしたように問答無用に食って掛かることはもうしない。冷静に戦うことが彼女の課題だ。


『マルも無茶して魔力を使いすぎないように』

「もちろん分かってるよ」


 急激に魔力を使い体調を壊して木偶の棒になるなど、以ての外だ。己の体調と相談しながら無理をせずに長く戦うのが彼女の課題だ。


『トサインは……ミモニー』

「え……あ、そうですね。トサインちゃん、頑張ろうね」

「…………うん」


 ランベリーが何を言ってもトサインは聞こうとはしない。ただ、ミモニーが話しかけると不思議と言うことを聞いてくれるということが今日までの間に分かったのだった。そんなトサインを上手く活用できるかどうかがミモニーとランベリーの課題だった。


(目標)がそろそろ見えてきます』


 すでに遠くから襲撃を知らせるサイレンの音が響いている。

 自分達の存在は相手に感知され、相手は慌てて迎撃態勢をとっていることだろう。


『作戦空域に侵入。これよりソースノ島奪還作戦を開始します』

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― 新着の感想 ―
隊長はよく鳴きますなあw みんなフラグ立てずに帰ってこれますか。 公式がチャレンジ企画で戦記とかやっていたけど、こういうのも戦記になるのですかね。
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