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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第三章 ユーイ海岸攻防戦

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26. 敵のエース

「隊長!」

「隊長!」

『ミモニー!』


 あまりにも激しい爆発にシエン達は目を閉じざるを得ない。画面越しに見ているランベリーも画面から目を逸らさずにいられないほどの閃光。


 幸いにも上空へ逃れた者達に魔力攻撃が届くことは無かったが、目と耳をやられて辛そうにしている。


 閃光が収まり、目が慣れて来た彼らが見たものは、広範囲にわたるクレーターだった。海岸沿いの山肌が大きく崩れ、土砂崩れが起きると共に海水が流れ込む。


『(爆発の規模の割にクレーターが浅い。やっぱり障害物に当たると威力が弱まるのね。それなら海に飛び込んだ人たちも無事かもしれない)』


 ランベリーの予想通り、衝撃で昂る海の中から一人、また一人と顔を出す。だが中には力無く浮いて来る人もいて、全員が無事という形にはならなそうだ。それでも即座の撤退の判断によりかなり被害が抑えられたことは間違いないだろう。


 問題は爆発の中心に近いところにいた、最重要人物だ。


「いた!隊長だ!」

「まだ浮いてるよ!」

『信じられない……』


 ミモニーは宣言通り死ななかった。

 体中からぷすぷすと煙が出て、ピンク色のゴスロリ服が穴だらけで肌の大部分が露出してしまっているが、気を失っている様子は見られない。


 ミモニーはハロモゴをお姫様抱っこの形で抱え直し、クレーターから離れた所に降りて彼女を優しく地面に横たえた。


 敵軍の卑劣で強烈な一撃を耐えきった解放軍。今度こそこれでユーイ海岸攻防戦に勝利したと胸を張って言えるだろうか。


『レーダーに反応! 四〇四隊!まだ終わってないわ!』

「しつこすぎんだろ!」

「今度は何よ!」


 SAMM が配置されていた付近から、数人の敵空軍が飛び立って向かって来た。

 シエン達は急ぎ下降して迎え撃つ準備をする。ミモニーも飛び立とうと上を向いたが、狙った場所に飛べる自信が無いため一旦は様子見をすることに決めた。


『リベンジだぜ!ピンカーヴィー!』

『あれはブーディー!?』

「知ってるのか?」

『奴らのエースの一人よ。あいつにどれだけの仲間がやられたことか!』

「エース!?それって化け物みたいに強いって噂の!?」


 悪夢の夜にミモニーに完敗したブーディー。あの時に生き永らえていて、ミモニーを倒すべく再びやってきた。


『お前らは余計なのを片付けて支援しろ』

『了解!』

『了解!』

『了解!』


 ブーディーの仲間はシエン達を倒すために連れてこられたようだ。かといって他の空軍が支援に向かおうともブーディーにあっさりと倒される姿しか想像できず、しばらくはブーディーとミモニーの一騎打ちということになるだろう。


「殺す……殺す殺す殺す殺す!」


 ミモニーを排除するためだけに、ハロモゴをお腹の子供もろとも殺そうした。そのあまりにも醜悪なやり方に激怒したミモニーは、その怒りの矛先をブーディーに向けて飛び立った。


 その方向は大きくズレてはいたが、明後日の方向という訳では無く、概ねブーディーのいる方向ではあった。やはり飛ぶ技術が少しだけ上達している。


「殺す!」


 先に攻撃を仕掛けたのはミモニーだ。

 必中の魔力弾(アタック)でブーディーを落とそうとする。魔力弾は一直線にブーディーの元へと飛んで行く。


『あの時と同じだと思うな。エースってのは、簡単になれるもんじゃねーんだよ!』


 ブーディーの手には放つ前の魔力弾。それを片手で握るように掴み、飛んできた魔力弾に横から当てた。


『ぐっ……』


 すると魔力弾同士の衝突により爆発が起きるのだが、なんとブーディーはその威力を利用して横に吹き飛ばされることで直撃を回避したのだ。


『嘘でしょ。あんな無茶苦茶なことやったら普通なら腕がイカれるわ』

『はっはー!どうだ!避けてやったぜ!』


 しかしブーディーの手は多少焼けたような煙が出るだけで無事だった。全く不自由なく動かしている。


「殺す!殺す殺す殺す殺す!」


 それならばとミモニーが魔力弾を連射するが、その全てをブーディーは手にした魔力弾で払うように爆発させて躱しきる。


 ミモニーが一人を相手に一撃で仕留められなかったのをランベリーは初めて見た。


『これがエースの実力。異常なまでの魔力への適用者。まるで化け物ね』


 だが解放軍には化け物以上の悪魔がいる。

 どれだけ相手が強かろうが、絶望する理由にはならない。


『今度はこっちから行くぜ!』


 ミモニーの連撃を全て防いだブーディーは、超高速で飛びまくるミモニーに向けて魔力弾を放つ。その精度はミモニーに匹敵するレベルなのだが、ミモニーは着弾ギリギリでそれを僅かに躱して避けてしまう。


『チッ、ホーミングしてもあれだけの速さで動かれたら当たらないか。だったらこれでどうだ!』


 ブーディーもまた空中を移動しながら弾幕をばら撒きはじめた。絶対に通過できない密度の弾幕を、ミモニーの移動先以外(・・)に配置している。


『どうせ弾幕で道を塞ごうが、爆発させて強引に突破するんだろ? だったらこれならどうかな?』


 宙にいくつかの弾幕をばら撒き、ミモニーの攻撃を躱しながらブーディーはその時が来るのを待った。ミモニーの移動がランダムであるが故、罠を仕掛けるのは難しいが、いつか絶対にチャンスが来ると信じて待つ。


『ここだ!』


 気付けば超高密度の弾幕がミモニーを取り囲んでいた。だがミモニーの進捗方向には無いため、このまま真っすぐ飛んでいれば当たることは無さそうだ。


 しかしその先にブーディーが待っていた。


『正面からブチ当ててやるぜ!』


 弾幕でサイドへの逃げ道を封じ、真正面から強力な魔力弾を当てる。だがミモニーであればこの状況でも僅かな身じろぎでそれを躱してしまうに違いない。


 それならば僅かな身じろぎすらも許されない状況にすれば良い。


「死いいいいねええええ!」


 魔力弾を生み出し、強引に突破しようと飛び込んで来るミモニー。

 そんな彼女の様子にブーディーは勝利を確信した。


『死ぬのはお前だ!ピンカーヴィ!』


 ブーディーが開いている方の手をぎゅっと力強く握ると、なんとミモニーを取り囲んでいた弾幕が一斉にミモニーに接近して来たではないか。


 それは最早壁に押しつぶされようとなっているのと同じこと。

 後退するか前進するしか道はなく、前進しようにもブーディーが溜めに溜めた超高威力の魔力弾を持って待ち構えている。


 果たしてこのまま力任せに突破できるだろうか。ブーディーはミモニーをここで撃破可能な自信があるからこそ身構えているはずなのだ。これまでの有象無象と違い、無策での突入は無謀すぎる。


「あああああああああ!」


 ミモニーはブーディーを攻撃するために生成した魔力弾を右手で掴みながら、右腕を進行方向右側に突き出した。


『今更方向転換するつもりか!?』


 それが包囲を破壊して脱出するためのものだとブーディーは予想した。ミモニーが慣性を無視した急カーブをすることがあるという情報を仕入れていたからだ。


『それならそれで真横からぶちあててやる!』


 方向転換した直後なら攻撃を避けにくいはず。

 そして自分ならばミモニーの動きに即座に反応して攻撃が可能。


 どちらにしろ自分の勝利は揺るがない。

 悪魔はここで消滅する。


 しかし。


『は?消えた?』


 自分の方へと向かっていたミモニーが忽然と消えたのだ。

 右腕を突き出していた方向に急旋回したのを見逃したのかとそちらを見ても誰も居ない。


 ブーディーは今日の為にミモニーについての様々な情報を得ていた。

 だがたった一つだけ、彼の耳に届かなかったものがある。

 あまりにも信憑性が薄いため、誰もまともに取り合わなかった一つの情報。


 ミモニーは世界線を移動するかのように、突き出した右腕とは反対方向に平行瞬間移動した。そしてブーディーが真逆の方向に気を取られている間に、右手に構えた魔力弾を発射する。


「死ねええええええええ!」

「がっ……な……ん……だ…………と…………?」


 不意を突かれまともに喰らってしまったブーディー。

 ミモニーが怒りに任せていつも以上の威力の魔力弾を放ってしまったのか、今度こそ彼の意識は永遠の闇に落ちたのであった。


『エースがやられた!?』

『逃げろ!?』

『全軍、戦場から離脱しろ!』


 それが決め手となったのか。

 敵軍はようやく敗北を認め撤退を始めた。


 ユーイ海岸攻防戦は、こうして解放軍の勝利となったのであった。


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