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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第三章 ユーイ海岸攻防戦

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24. 決別

「久しぶりだね。ミモニー」

「ハロモゴ……さん」


 突然の再会にミモニーは驚愕する。自力で空中に静止出来ていることに気付かないくらいに。


「隊長!」

「隊長!」


 静止しているということは、格好の的になってしまっているということ。慌ててシエンとマルが隊長の元へと向かうのだが。


『待ちなさい。彼女に任せましょう』

「そんなこと言ってる場合か!?」

「あのままじゃ危険よ!」


 ランベリーが二人の行動を何故か止めた。


『落ち着いて周囲を良く見なさい』

「……なんで攻撃しないんだ?」

「……向こうも任せようとしてる?」


 絶好のチャンスに、敵兵はミモニーを攻撃しようとしなかった。むしろミモニーに向かおうとしていたシエン達に向かって来た。まるで邪魔をするなと言わんばかりに。


『ミモニーを信じましょう』


 二人は一瞬だけ悩んだが、ランベリーの言葉通りミモニーを信じると決めたようだ。ミモニーの周囲を飛ぶようにして敵との戦いに集中する。なお、トサインはミモニーの新たな指示が無いため戸惑うことは無かった。


「生きていてくれてとっても嬉しい」

「…………」


 ハロモゴは影のある笑顔でミモニーの無事を喜んだ。ミモニーは少し顔を伏せ、何も言おうとはしない。


「私が生きているのが信じられないかな? 実は私だけじゃなくて、スズさんもハヤマさんも生きてるよ。殺されなくて捕らえられたの」

「…………」


 それが不幸中の幸いになるのかどうかは、捕らえられた後の彼女達の処遇による。もしも女性としての尊厳を踏みにじられるようなことをされているのであれば、死んだ方がマシだと思えるようなことをされていたのであれば、決して喜ばしいことではない。


「しかもね、酷いことは全然されなかった。それどころか、皆と再会して楽しく暮らしてるんだ。監視はされてるけど、ほとんど不自由はしてないよ。それに……その……スラウン君と付き合ってるの」

「…………」


 ここは本当に命を懸けた戦場なのだろうか。

 そう思えるくらいに、ハロモゴは顔を真っ赤にしてもじもじと照れていた。


「だからミモニー、もう戦わなくて良いんだよ」

「…………」

「降伏して、私達と一緒に住もうよ」

「…………」

「悪いことはしないって、少しだけ協力してくれれば良いんだって」

「…………」

「嘘っぽいけど、私達は本当にそうだったから。信じて」

「…………」


 ハロモゴはミモニーに手を差し伸べる。

 だがミモニーは全く動こうとしない。身動き一つしない。


 声が届いているのか。

 気持ちが届いているのか。


 ハロモゴは不安になって来たようだ。少し早口になってきた。


「ミモニーが凄いのは分かったよ。一人であんなに沢山の人を倒しちゃうなんて凄すぎる。たっぷり努力したかいがあったね」

「…………」

「でも無理だよ。一人じゃ無理。今はなんとかなっても、こっち(・・・)には沢山の強い人が居て、とんでもない兵器が沢山あって、ミモニーがどれだけ強くなっても敵いっこない」

「…………」

「ミモニーにこれ以上、傷ついて欲しくないの。死んでほしくないの。お願い分かって。私は……私達はミモニーに生きて欲しいの。だから降伏して一緒に来て!」

「…………」


 それはまさに嘆願と呼べるものだろう。

 嘆きと呼ばれるほどに悲しい強い想いが籠められたお願い。


「あの頃の私達に……戻ろう?」


 それはミモニーが何度願ったことだろうか。

 戻れるのであればなんと幸せなことだろうか。


「ミモニー!?」


 だが戻れない。

 それだけはできない。


 何故ならば、ミモニーは決めたから。


 『生きて欲しい』と託された願いを叶えられなくなりそうだったあの時、その願いを己の願いへと昇華させてしまったが故に、ハロモゴの言葉は届かない。


 ミモニーの右手の上に、魔力弾が生成された。


「待って!待ってミモニー!お願い!話を聞いて!一緒に平和に過ごそうよ!もう辛い思いなんてしなくて良いんだよ!戦う必要なんて無いんだよ!無理して生きなくて良いんだよ!あなたがそこまでする必要なんて」

「私が!」


 すがるようなハロモゴの言葉は、ミモニーの一喝により打ち消される。


 それは諦めた者と覚悟を決めた者の違い。


 カサイン軍の悪逆非道な行為から目を逸らしているハロモゴには決して届かない。


「私が戦争を終わらせる!」


 かつての友を前に、ミモニーは止まらない。

 何故ならその想いは、彼女達に託されたものではなく己が抱いたものだから。


 ミモニーは魔力弾を投げようと手を後ろに振りかぶる。


「待って!お願い!止めて!ここで失敗できないの!」


 だがハロモゴのその言葉に、ギリギリのところで攻撃は止まった。

 ハロモゴは涙を流しながら必死に懇願する。まるで命乞いをするかのように。


「赤ちゃんがいるの!私の中に、スラウン君との子供がいるの!」

「…………」

「貴方を説得出来たら、この子を普通に育てて良いって……もし出来なかったら……だから……だからお願い!私を助けて!」

「…………」


 何故ハロモゴがここまで必死なのか。それは友を想うためだけではなく、愛する人との子を守るためでもあった。というより、そうせざるを得ないようにカサイン軍に動かされたのだ。


 あまりにも卑劣な行為だが、ここで彼女を撃破すると言うことは、彼女に絶望を与えるということ。ミモニーにそれが出来るのか。


「…………」

「待っ!」


 魔力弾がハロモゴの肩付近に命中し、ハロモゴは力なく落下する。自動で開いたパラシュートに揺られ、ハロモゴは薄れゆく意識の中で小さく呟く。


「どう……し……て……」


 全く迷うことなく容赦なく友を撃破したミモニーは、その場で動けないでいた。


「隊長!」

「隊長!」

「…………」


 それを狙って敵が攻撃してきたので、シエン達が隊長を守りに駆け寄った。


「みんな、ありがとう」

「隊長……」

「隊長……」

「…………」


 ミモニーは何も無かったかのように彼女達に笑顔を向ける。この程度なんとも思ってないのだろうか。


 そんなわけがない。


「少しだけで良いんだけど、一人で暴れても良いかな?」


 苛烈か、臆病か。

 ミモニーの印象は常にその二択だったが、それには含まれない深い悲しみを湛えた笑み。


 戦場では感傷的になどなってはならない。

 冷静に最後まで戦わなければならない。


 それが基本中の基本なのだが。


「あったりまえだぜ(・・)やっちゃえ(・・・・・)隊長!」

「思いっきりやっちゃおうよ(・・・・・・・)!」

「…………ん」


 二人は全力でミモニーの意思を尊重した。

 敬語を止めた理由は……説明するのは無粋か。


 トサインも珍しく自分の意思をみせ、やってしまえと少し微笑んだ。


『許可します。いいえ、むしろやりなさい、ミモニー』


 ランベリーからも積極的許可が出た。


 もうこれでミモニーを止める者はいない。


「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~」


 大きく深呼吸し、気持ちを高める。


 そして。


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 悪夢の夜。

 それに匹敵するか、あるいはそれ以上の叫びと共に、爆速で飛び始めた。


「死いいいいいいいいねえええええええ!」

「ひいいいい!」

「ぎゃああああ!」

「た、たすけっ!」


 ただの暴走ではない。


 敵を狙い、まだそこには真っすぐ向かえないが、その方向へと進み一撃で撃破する。偶然通りすがった相手を撃破するのではなく、意思をもって撃破する。


 かつての友を利用した策略が、ミモニーを成長させた。


「な、なんでバレっ!」


 地上でこっそり生き残っていたライフル隊を潰す。


「あの距離からっ!?」


 被害が軽微でギリギリ修理して使えそうだったSAMMを超遠距離攻撃で破壊する。


「うりゃうりゃうりゃうりゃ!ぎゃあああ!」

「うりゃうりゃうりゃうりゃ!ぎゃあああ!」

「うりゃうりゃうりゃうりゃ!ぎゃあああ!」


 ひたすら弾幕で囲ってやれと力尽きるまで大量の魔力弾を放ってみたが、三人同時に魔力弾(アタック)を喰らって撃破される。


 悲しみと絶望がミモニーに力を与え、カサイン軍の壊滅はすぐそこまで迫っていた。




『これで終わりかしら……え、これはっ!? 避けて!!!!』


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