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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第三章 ユーイ海岸攻防戦

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17. 再会

「死いいいいいいいいねええええええええ!」


 上空へと飛び出して来たミモニーが、早速近くの敵兵を落とした。


「あたしたちも忘れんな!」

「狩りの時間だよ!」


 追ってシエンとマルが飛び上がってくるが、無理してミモニーを追うことは無い。ミモニーと全く同じ動きをしてしまっては、すぐに魔力が尽きてしまうからだ。

 とはいえ別行動するわけでもなく、ミモニーの位置を常に把握しながら最短距離で移動し、つかず離れずの距離をキープする。


「おらおらおらおらおらぁ!」


 四方八方、シエンがランダムに魔力弾を放ちまくる。それは初陣の時のようにやたらめったら攻撃している訳では無い。


『ビビるな!ただのこけおどしだ!当たってもダメージは無い!』


 シエンが放っているのは、威力が全くない極薄の魔力弾。身体に触れてもピリっと痺れるくらいで戦闘には全く影響が無いだろう。


 だがそうと分かっていても簡単には割り切れない。


 もしも威力が高かったら?

 強い魔力弾が混じっていたら?


 その不安が敵の行動を足止めする。

 体が勝手に警戒してしまう。


「も~らいっと」

『ぎゃああああ!』


 動きが鈍った敵兵など、マルのエサでしかない。

 今回は敵の数が多いため、広範囲ブラフとマルの高精度攻撃をかけあわせたコンビ技。


『怯むな!怖ければ全部避けろ!あいつらに出来て何故俺達に出来ない!』


 シエン達の攻撃は決して目新しいものではない。カサイン軍も使用したことのある作戦だ。だが同じことをやろうとしても四〇四隊は怯むことなく全てを避けてしまう。


 脅しにならないのであれば、ただの魔力の無駄遣い。


 それならカサイン軍も避ければ良いのだが、大量の弾幕の全てを確実に避けるのは困難だ。弾幕に突撃して強引に体を捻って躱すなんて命知らずな動きが出来る兵などまずいない。飛翔技術の差が戦果として如実に現れていた。


『ぎゃああああ!』

『ぐぎゃああああ!』

『に、にげっ!!!!』

『緑だ!緑を落とせ!ヤバイのはピンクだけじゃない!』


 まるで工場での流れ作業のように、リズムよく敵が落ちて行く。


 私からあまり離れないで敵を出来るだけ倒して。


 ミモニーの指示を忠実に守る緑の妖精トサインが、軽やかに空を駆けながら目についた敵を一撃で撃破し続ける。暴走状態のミモニーは偶然敵の近くに移動しなければ攻撃できないため撃破スピードはランダムだが、トサインは自分の意思で飛べているためサクサクと敵を打ち倒す。


『なんでっ!なんで当たらないんだよっ!』

『しかも未来が見えてるんじゃないかってくらい当ててきやがる!』

『こいつら死にたくないのかよ!』


 敵兵は新兵などでは無い。これまで幾度となく戦場に飛び、激戦を経験し、生きながらえた優秀なベテラン兵も数多い。だがそんな彼らですら四〇四隊に魔力弾を当てるビジョンが全く見えない。ミモニーやトサインの攻撃を避けられない。


 せめてミモニーだけだったら。

 トサインだけだったら。

 シエンとマルだけだったら。


 囲んで数で押せばなんとかなったかもしれない。

 しかし四人同時だと、囲む前に突破されてしまう。いや、四人どころではない。確かに四〇四隊は強敵だが、解放軍の空軍は誰も彼もが命知らずのとんでも飛行技術で攻撃を当て辛く、決して無視できない。


 劣勢。

 地上部隊が壊滅した上、制空権まで奪取されたらカサイン軍の敗北は必死。


『SAMM来ます!』


 だが彼らにはまだ、超高性能誘導魔導ミサイル、SAMMがあった。

 山肌に配置されていたスナイパー部隊とは違い、SAMMは山の奥深くにある。それを潰しに戦場から突出したら、狙い撃ちされてしまうだろう。ミモニーならばそれでも平気かもしれないが、そもそも狙ってそこへ移動することができない。


『ダメです!SAMMも避けられます!』

『そんなの分かってたことだろ!だからこうすんだよ!』


 カサイン軍はなんとSAMMに向けて攻撃した。


「!?!?!?!?」

「きゃああああ!」

「きゃあ!」

「…………」


 SAMMは爆発し、中の魔力が勢いよく放出されてミモニー達を押し流す。

 バランスを崩した彼女達はすぐさま体勢を立て直すが、攻撃をキャンセルさせられてしまった。


『よし、これで奴らの動きを潰せ!攻撃させるな!』


 どうせ避けられて当たらないのなら、意図的に爆発させて障害物としてしまえば良い。運よく間近で爆発させてダメージを与えられたなら儲けもの。

 敵の狙いは成功し、ミモニー達はこれまでのように攻撃することができない。


「めちゃくちゃ面倒だぜ」

「やられる前にこっちで潰す?」

「それが良……くねぇな。アレ見て見ろよ」

「なんて数なの。一々潰してたら魔力の無駄ね」


 効果が高いと分かったからか、一体どれだけ用意してあったのかと思えるほどに大量のSAMMが飛翔してきた。


「万が一にも味方が巻き込まれたら死ぬってのに、よくやるぜ」

「それだけ追い込まれてるってことなのよ」


 リスクを負わなければ倒せない相手。

 そう正しく(・・・)判断したのだろう。


『うお!こっち来んな!』

『逃げなさい!潰すから!』

『待て、まだ離れてな……うおおお!殺す気か!?』

『トロトロしてるのが悪いのよ!』


 大量のSAMMは四〇四隊以外も狙っている。解放軍は対処に悩み中々敵に攻撃させてもらえない。敵からの攻撃は必死に避けられているが、集中力も魔力も永遠に保つはずがなく、このままではいつかはガス欠になってしまう。


「ランベリー、あたし達がSAMMを潰しに行くぜ」

「それしか道は無いよ」


 見かねたシエンとマルが、危険を承知でSAMMの排除に向かうと提案する。


『許可できません』


 しかしそれはあっさりと却下されてしまった。


「なんでだよ!このままじゃまずいぜ!」

「そうよ。誰かがやらないといけないのよ」


 二人は抗議するが、ランベリーの回答は変わらなかった。


『許可できません』


 ならどうすれば良いのか。

 その疑問をシエンが叫ぼうとするが、ランベリーが先に答えを告げる。


『あのSAMMは固定式(・・・)と判明しました。よって二〇八隊に任せます』


 三人だけの二〇八対地飛行部隊。

 これまで彼らは空戦には参加せず、後方で低く飛びながら地上部隊の支援を行っていた。


『そうだ、対地作戦は俺達の領分だぜ』

『貴方達は空の敵に集中して頂戴』

『すぐに無力化してやるから任せろって』


 いつの間にか二〇八隊の三人が高度を上げていた。低空からでは山の奥深くが見えないからだ。だがその位置は相変わらず後方にあり、山の向こうどころか空戦している敵兵にすら届かない。


『四〇四隊がいなければ、私達のエースは二〇八隊だった。その実力、とくと味わいなさい』


 ランベリーの言葉にタイミングを合わせたのか、二〇八隊の隊長が前に伸ばした右手から一発の魔力弾を放った。それはそこそこのスピードで空戦空域まで到達し、通過し、遥か向こうの山に落下した。


『ぎゃああああ!』

『どこからの攻撃だ!?』

『SAMM大破!使用不能です!』


 木々に隠れて見えない二キロ以上先の小さなSAMM砲台。

 なんとそこをピンポイント爆撃したのだ。


『ヒット。位置さえ分かればこんなものさ』


 カサイン軍が調子に乗ってSAMMを乱発したことで発射位置が特定出来た。そしてそれが二〇八隊にとって最高に美味しい情報となってしまったのだ。


『お前らもいけ』

『はい』

『はい』


 二人の隊員も、隊長と同じく狙いを定めて超遠距離攻撃を実施する。


『砲身に直撃!SAMM破壊されました!』

『こっちも砲身だ!?』

『まさか狙ってるのか!?』


 次々と破壊されるSAMM砲台。

 あまりの神業に、別の悪魔が出現したのではと騒ぎになりそうだった。残念ながら該当する伝承の悪魔が存在しないため立ち消えになってしまったが。


『動かない地上目標なら超遠距離からピンポイント攻撃が可能。その代わり他の能力は乏しく、特に空戦は地上支援ありで新兵とギリギリ良い勝負が出来る程度の実力しかない。解放軍にはまともな人はいないのかしら』


 そんな人物はとっくに敗北してドロップアウトしている。残念ながらランベリーのないものねだりである。


「すっげぇ」

「訓練の時より凄いじゃない」


 戦闘中だというのに思わず見惚れそうになってしまうシエンとマル。だがそれは敵軍も同じだった。表情は全く異なっていたが。


『ふ、ふ、ふ、ふざけるな!なんだあの無茶苦茶なやつらは!』

『あんな距離から攻撃が当てられるなんてチートだろチート!』

『魔力弾は距離が遠くなればなるほど威力が減衰するんじゃなかったのかよ!』


 驚いてしまうのは必然。

 だがその間にもSAMMの数はどんどんと減ってしまい、ついには全機が沈黙してしまった。


 そうなれば空は四〇四隊の独壇場。


「死いいいいいいいいねえええええええ!」

『どうしてこっちに曲が……ぎゃああああ!』

「オラオラオラオラァ!」

『ああもうウザイ!ばらまくんじゃ……うごおおおお!』

「おしゃべりしている暇なんて無いよ」

『もうダメだ。もう無理だ。逃げ……がっ!』

「~~~~♪」


 カサイン軍が目に見えて減って来た。

 対する解放軍の被害はかなり少ない。


 ユーイ海岸攻防戦は、解放軍の勝利が見えて来た。




「ミモニー!」

「!?」




 これまで暴走していたミモニーが止まった(・・・)


 自力で空中で静止が出来ないミモニーが、まるで空間に縫い留められたかのようにピタリと止まる。


 彼女の視線の先に、一人の敵兵がいた。


 見た目はミモニーと近い年代の優し気な少女。


「久しぶりだね。ミモニー」


 彼女はミモニーの名を親し気に呼ぶ。


 ミモニーは驚愕を隠さず、震える声でぽつりとつぶやく。


「ハロモゴ……さん」


 それはあまりにも悲しい再会だった。


次回から過去編が始まります

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