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撃滅のピンカーヴィー ~落第少女達の成り上がり~  作者: マノイ
第三章 ユーイ海岸攻防戦

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15. 上陸作戦

「敵兵来ます!」

「よし、しっかり引き付けろ!」


 現代戦争において空軍と陸軍の違いは何か。


 飛翔(フライ)魔力弾(アタック)が使える者は空軍。

 飛翔(フライ)が使えず 魔力弾(アタック) は使える者は陸軍。

 そして飛翔(フライ)魔力弾(アタック)も使えず、防御(ガード)だけが使える者が陸軍の魔導兵器部隊に所属することになる。魔導兵器は魔法を使える者だけが扱える武器だからだ。


 ちなみに三つ全て使えない者は後方支援などを担当し、前線には出て来ない。


 ユーイ海岸の砂浜に並ぶいくつものマシンガン型魔導銃。

 それら一つに一人、魔導兵器部隊の隊員がついていた。そしてその隣にペアになるように通常陸軍の隊員が立っている。


「空は気にするな! 前方だけに集中しろ!」


 ソースノ島では開戦直後にミモニーが急降下し、カサイン軍の地上部隊を半壊に追いやった。今回もその可能性があるが、その場合は無理に迎撃せず合図で一時退避する手はずになっていた。


「隊長!船が来ます!」

「やはりそう来たか」


 ユーイ海岸に向かってくる何隻もの小型軍船。それはカサイン軍がソースノ島への移動手段として用い、ソースノ島が奪還された時に解放軍に奪われたもの。


「だが妙だな。多すぎる」

「と言いますと?」


 後方で指揮を執る隊長に、隣に立つ副隊長が問いかける。


「奴らがあれほどの量の船を繰り出して来れるはずがないのだ」

「お言葉ですが、島には多数の軍船が残されていると報告を受けています。奴らの戦力は少なく、使えるものは全て使おうと考えるのは自然なことではないでしょうか」

「その戦力の少なさが問題なのだ」


 確かに使えるものは全て使って少しでも戦力の足しにしたい。それは普通の考えではあるのだが、必ずしも使い切れるとは限らない。


「あんなに船を出したら、操縦するだけで人員を使い切ってしまうぞ。まさか一人しか乗っていないわけでもあるまいし」

「言われてみれば不可解ですね」


 いくら小型船とはいえ、一人で航海するとは考えられない。

 仮に一人だったとしても、操縦しながら攻撃するなど無茶な話であり、少なくとも攻撃要員がそれぞれ乗っているはず。


 ただでさえ貴重な戦力を小型船に分散させて特攻してくるだなど、正気の沙汰では無い。


「各員、敵小型船に攻撃!行動不能にせよ!」


 怪しくはあるが、だからといって何もしないわけにはいかない。

 攻撃の指示を出し、船が射程範囲に入るのを待つ。


 解放軍の先頭を走る船がそのエリアに入ると、マシンガン型魔導銃が火を噴いた。

 隣に立つ陸軍兵士も魔力弾(アタック)を仕掛ける。


「運転席に命中!」


 激しい弾幕が小型船を襲い、そのいくつかが命中して一瞬でボロボロになる。しかも運転席に命中したのであれば、これ以上の操縦は不可能であろう。


 だが。


「小型船止まりません!」


 航行不能にしたはずが、スピードを緩めずに向かってくるではないか。


「そういうことか!」


 隊長は敵の狙いに気付き、新たに指示を出す。


「運転席とエンジンを狙え! それで止まらなかった船は放置だ! 突っ込んで来るなら避けろ!」


 隊員達は即座にその指示に従い、何隻かの船が砂浜に突っ込んで来る。その過程でいくつかの魔導銃が破壊されてしまったが、人員に被害はない。


「無人船を突っ込ませて我々の魔力を削ぐ作戦か。だったら節約して本隊に全力でぶつけるだけだ」


 解放軍はエンジンを全開に固定して船を走らせ砂浜に突っ込ませようとした。それを破壊しようと攻撃させることで、カサイン軍の魔力を少しでも消費させるのが目的。


「いくつかの船が明後日の方向へと進んでいる。誰も乗っていない証拠だ」


 そしてそれらの船の後ろから簡易水上バイク(ホバーボード)に乗った敵軍本体が迫って来る。


「敗残兵ごときの知恵など、こんなもんか」


 相手の策を読み切った。

 そうやって安心した時が一番危険であるのだが、この隊長はそれを理解していなかった。


「うわああああ!」

「ぎゃああああ!」

「な、なんだ!?」

「船が爆発した!?」


 砂浜に突っ込んで来た小型船が大爆発し、後方で防御(ガード)を怠っていた人々や魔法が使えない人々に破片が直撃した。


「しまった! 爆弾か!」


 無人機と爆弾の組み合わせは軍人であれば誰もが想像するものだが、科学から魔法への戦争に切り替わったため、今更科学の力に頼って攻撃してくるとは思わなかったのだ。


 爆弾による攻撃は防御(ガード)によって完全に防げるのだから。


 だが魔法を使えない者には効果が絶大で、そうでなくとも爆発は安全だと分かっていても人を恐怖させ、更には破片が散らばり煙が充満することでスムーズな移動を阻害させる。


「落ち着け!防御(ガード)を切らさなければどうってことない!冷静に前だけを見ろ!後方部隊はもっと退け! 船には近づくな!」


 パニックになりかけた現場を素早い指示でどうにか落ち着かせる。

 この程度ではまだカサイン軍の有利は揺るがない。

 戦力はほとんど減っていないのだ。


「来るぞ!しっかり狙え!」


 ついに解放軍が砂浜に近づいてきた。

 射程範囲まで後僅か。

 空からピンカーヴィーが降りて来る気配も無い。


 このままなら解放軍は上陸できずに海の藻屑となってしまうだろう。


 迎撃部隊がいざ魔法を放とうと決意したその時。


「ぎゃああああ!」

「うわああああ!」

「どこから!?」

「うぎゃああああ!」


 ユーイ海岸に多くの爆発音と悲鳴が響き、兵士が一人また一人と倒れ行く。魔導兵器が破壊されて行く。


「何だ!? 何故爆弾程度で倒れる!?」


 防御(ガード)を貫く新型兵器なのか。

 いやそんなものがあればとっくに使われているはず。今更そんな都合の良い科学兵器が登場するなど不自然極まりない。


 では一体何故なのか。


「報告!爆発しなかった小型船に敵兵が潜んでいます!」

「なんだと!?」


 小型船の突撃も、爆弾による爆発も、全てはカモフラージュだった。

 小型船が無人と思わせ、爆発しなかった船があっても不発だっただけに違いないと勘違いさせた。


 そうして本隊の突入に合わせて背後から攻撃することで、相手を混乱させる。


「ど、どっちを狙ったら!?」

「ぎゃああああ!」

「急げ!急いでどっちも排除するんだよ!」

「こんな奴らごときに!」


 作戦は成功し、それでも解放軍が有利とは言い難い。

 それだけ戦力差と実力差が大きいから。


 戦況は互角。


 それは策を弄するのが解放軍だけだったならば、の話だ。


「やるじゃないか。だが、その程度でどうにかなると思うなよ」


 隊長が無線機である場所に合図をする。

 その直後。


「なっ!んだと……?」

「ソグル!!!!」


 ソグルと呼ばれた、ホバーボードで上陸を狙う男性兵士の身体が突如爆発し、その体が海へと落ちて行く。


「山だ!山から狙われてるぞ!」

「ぎゃああああ!」

「なんて精度だ!動け!止まるな!照準を合わせさせるな!」


 長距離スナイパー魔導ライフル。


 カサイン軍の新型兵器を山の中に配備し、隠れた所から狙撃する。

 海岸沿いのマシンガン型魔導銃は囮であり、そちらが本命だった。


 奇襲により互角に持ち込み、突破口が見えたと思った解放軍の上陸部隊。

 その希望はあっさりと打ち砕かれ、徐々に押されはじめる。


「地上は我らの勝利だ。後は空だが……あっちも問題なさそうだ。やはり噂は噂でしかなかったということなのだろう」


 ピンク色の服を着た敵兵が背後から迫られ今にも撃墜されそうだ。その動きは素人に毛が生えたもので、どう見ても強そうには見えない。


 悪夢の夜など存在せず、ソースノ島での敗北も新兵が使えなかったから。


 隊長はそう結論付けて、この防衛戦を終わらせにかかる。

 カサイン軍の圧勝という結末で。


 この状況から負けは無いと確信していた。




 悪魔が降臨する、その時までは。




「うぎゃああああ!」

「ぐわああああ!」

「た、助けっ!」

「なんだアレ!なんだアレ!なんだアレ!なんだアレ!」


 スナイパーのおかげで相手を牽制し、落ち着きを取り戻していたはずの自軍の兵士がまた倒れ始める。しかも恐慌に陥りそうな程に混乱しているではないか。


「何だ!? 何が起きたんだ!?」


 船の爆発により、視界はまだ晴れていない。

 砂煙が舞う中、隊長は必死に状況を確認しようとする。


『報告します!スナイパー部隊全滅!』

「は?」

『な、なんだよあれ。なんで見つかるんだよ。あんなに木々が密集してるのに、なんで一撃で当てられるんだよ!』

「おい、どうした。冗談はよせ」

『悪魔だ……アレは悪魔だ……ピンカーヴィーだ!』

「よせと言ってるだろう!そんなのあくまでも迷……し……ん……」


 本物は無様に敗北しようとしている。

 そう言おうとして再び空を見上げた隊長の目の前にソレがいた。


 ピンク色の少女と目が合った。


「しいいいいいいいいねええええええええ!」


 それが隊長が最後に聞いた言葉となった。


『報告!報告!ピンカーヴィー隊が小型船で上陸し、地上部隊を凄まじい勢いで殲滅中!上空の敵は偽物!地上部隊は直ちに退却し、周辺部隊と合流して反撃せよ!繰り返す!ピンカーヴィー隊が……』


 物言わぬ持ち主が持っていた無線機からは、カサイン軍の苦渋に満ちた指示が流れていた。

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