表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/59

9話 使い魔

次の日オレは自分の部屋を片づけることにした。


もう何年も掃除していないオレの部屋は、ゴミ部屋と化していた。


母からゴミ袋をもらい、不要なものを突っ込んでいく。


半日かけて粗方の片づけを終えると、ゴミは10袋分になっていた。


「これ業者呼ばなきゃいけないかも…」

庭におかれた10袋分のゴミをみた母がつぶやく。


オレは殺風景になった部屋に一人たたずんでいた。


フィルターを掃除したからか、絶好調になったエアコンが、心地よい冷風を送ってくれる。


(とりあえず、部屋の中のゴミは“手放したぜ”。)

心の中で独り言ちるオレ。


その時。

また何か現れた。


「どうもっす!」

やけに軽いノリで姿を現した楕円形の物体。

かと思きや、不定形に形を変えだす。


「な、なんだ、お前…」

得体のしれない気持ち悪さに、机の上に避難する。


そいつは伸びたり縮んだりしながら、徐々に近づいてきた。


そして机の前まできたそれは、オレの目の高さまで伸びあがってきた。 


「ヒィィィ!」

声にならない声を発するオレ。

もはやホラーだ。


「おいらは、スライムの“スラ”っす。」

突然そいつは球形に変化し、自己紹介してきた。


「スライムなのか…」

オレは安堵のあまり机の上にすわりこむ。


「伊蔵さん。驚かせてしまい申し訳なかったっす。おいらはザジさんに言われて、身の回りのお世話するために来た“使い魔”っす。」

スラと名乗るスライムはそれだけ言うと、球形のまま動かなくなった。


スライムの不定形さにビビリまくっていたオレへの配慮なのか、ピクリとも動かないその姿に、オレは親近感を感じ始めていた。


「えっと、スラって呼んでいいか?」

おそるおそるたずねる。


「もちろんっす。」

スラはうれしそうに体を弾ませながら答える。


「スラ。最初に一つお願いがあるんだけどいいか?」

弾む球体を目で追いながら話しかける。


「きける範囲でなら、なんでもおききするっす」

さらに弾みながら答えるスラ。


「その、語尾に“っす”をつけるのやめてもらえないかな。」

直球で要望をぶつけてみる。


「それは無理っす。」

速攻で打ち返してきた。


「なんで無理なんだ?」

食い下がるオレ。


「ザジさんとの約束だからですっす。」

硬い拒否の意思をこめてスラが答える。


「それは“もう一つの約束”ってやつか?」

オレは確信をこめてたずねる。


「それとはまた別の約束っす。おいら、ザジさんの使い魔にしてもらう時、主従の誓いを立てたっす。その時の誓言に『語尾に“っす”をつける』がもりこまれていたっす。」

少し誇らしげに答えるスラに、若干イラっとするオレ。


「おまえ、それ嫌じゃないの。」

今度は変化球だ。


「嫌どころか、光栄の極みっす。」

これも打ち返してきた。


しかもホームランだ。

もしスライムに表情があるなら、満面の笑みを浮かべていたであろうスラ。


しかしスラ。

お前はだまされている。

だまされているぞ。

相手は悪魔だぞ。

ザジは面白がってその条件を盛り込んだだけだ。


「それはわかってるっす。」

悟りをひらいたかのように穏やかな口調のスラ。


「っていうか、お前も心の中よめるのかよ!」

驚きのあまり、机の上からずり落ちそうになる。


「もちろんっす。悪魔の眷属になったモンスターは、悪魔の能力の一部を使えるようになるっす。」

うれしそうに教えてくれるスラ。


「ってことは、オレも心をよめるようになれるのか?」

ダメもとできいてみる。


「残念ながら、きほんモンスター以外はむりっす。でも、"魔人なら話は別っす。"」


魔人…?


「そう、魔人っす。今からそのことについて、

話すつもりっす。」

そう言うとスラは、机の上で座り込んでいたオレのひざの上に乗ってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ