51話 幼馴染
1時間目の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
授業の残りの時間を難なく乗り切れたオレは、正直ホッとしていたのもつかの間、誰かが声をかけてきた。
「以蔵、おはよう。」
オレのそばにきて挨拶してきたのは、2つ後ろの席に座っている山田杏子だった。
杏子とは幼馴染で、小学校までは近所に住んでいたのと、幼稚園も同じだったこともあり、彼女が引っ越すまでは家族ぐるみでの付き合いをしていた。
杏子の家には色々な玩具があって、よく天音と一緒に遊びに行ってはままごと遊びをしていた。
そしてその時に、大きくなったら結婚する約束もしていたらしく、入学早々その約束を持ち出され、告白されていた。
もちろん丁重にお断りさせてもらったが、どうやらそれが逆効果だったようで、毎日のようにからんでくるようになった。
そんな杏子だが、かなり可愛い。
身長は150cmを少しこえたくらいか。小柄なのにそれを感じさせない魅力があった。
童顔を強調するような大きな目にサラサラロングのストレートヘアー。その髪の隙間から時折チラチラと見え隠れする耳にドキドキしない男子はいないだろう。
何より、幼い見た目とは不釣り合いなほどに大きな胸は、そのギャップと相まって杏子をより魅力的にみせていた。
「あぁ、おはよう。」
オレは杏子からの挨拶に内心どぎまぎしつつ、それがばれないよう素っ気ない感じの挨拶をかえす。
「ちょっと、人が挨拶してるんだからこっち向きなさいよ。」
相変わらずの気の強さと強引さであいさつをうながしてくる杏子。
とりあえず杏子の方に顔を向けると大きな胸が目の前にあった。
「私の胸見てるよね。」
「いや、視界に入ってるだけなんですけど…」
半ば強引にそして確信犯的に胸をアピールしてくる杏子。
恐るべしだ…
そんな杏子の中学時代のあだ名は『撃墜女王』。
一度ロックオンした異性は必ずものにしていたらしい。そして唯一撃墜できていない相手が幼馴染のオレなのだ。
だから余計にからんでくる。
正直うざいと思うこともあるけど、可愛いがそれを上回ってしまい、どう関わったらいいのか迷い中だ。
そんなオレの内心を知ってか知らでか、杏子はかがみ込むと大きな目で見つめてきた。
「な、なんだよ…」
「ねぇ、五宮先輩とデートしたってほんと?」
「…………。」
オレは予想だにしなかった問いかけに、リアクションを返すことさえできない。
何でそのことを知っている…?
ていうか、そもそもあれは正確にはデートではない。
オレは軽いパニックに陥る。
「何も言い返せないってことは、ほんとうなんだ。」
言い淀んでいるオレに追い打ちをかける杏子。
口元は笑っているのに目が笑っていない。
童顔が獰猛な何かにさえ見えてくる。
「あのさ、そのこと誰からきいた?」
オレは狼狽しているのを悟られないよう、精一杯の虚勢をはって聞き返す。
「えっ、誰って、五宮先輩に決まってるじゃん。」
何故だが勝ち誇った顔で答える杏子。
まさかの本人リークによって、浮気を問い詰められた風になっているこの状況はいったい…
五宮先輩…
あんたいったい杏子に何をどう伝えたんだ?
もちろん返事があるはずもなく、事件が迷宮入りしそうになったその時…
教室の前のドアを開けて五宮先輩が入ってきた。




