49話 デリート
「というわけでザジ、『デリート【削除】』の使い方を教えてくれ。」
(ムム、相変わらず現金な奴だ。仕方あるまい。オレ様の方も時間がなくなってきたからな…。サクッと説明してまた眠りにつくとしよう。)
ザジはそう言うと、『デリート【削除】』の使い方を説明してくれた。
それによると、
まず、デリートする対象を認識すること。
次に、その対象に触れること。
最後に、『デリート【削除】』と念じれば、対象を消し去ることができるらしい…
ていうか、念じるだけで対象を消し去れるって、相当やばい力じゃないのか…
オレはそんなことを思いながらも、軽い気持ちで消すことができそうな対象がないか、辺りをみまわしてみる。
すると見つけてしまった、電柱に黒一色のスプレーで描かれた落書き。
「とりあえず、この落書きを『デリート【削除】』してみるわ。」
オレはそう告げると、ひときわ目をひいた、20cmほどの大きさのキャプをかぶった男のイラストに右手を当てる。
本当にこんなことで、このイラストが消えるのか…?
そんな疑念を抱きつつも、ザジの言葉を信じて『デリート【削除】』と念じた。
次の瞬間…
イラストにあてていた手のひらから淡い光が明滅したかと思うと、徐々にイラストの黒色が薄くなりはじめた。
そして数秒後…
キャプをかぶった男のイラストだけが跡形もなく消えていた。
(きえったっす…!?)
「………!?」
正直オレは言葉を失っていた。通常、薬剤などを使わなければ消せそうにもないスプレーで描かれたイラストを、まるで存在しなかったかのように消し去ることができたからだ。
(以蔵。今はまだ手のひら程度の大きさのイラストや文字ぐらいしか消すことができない。なんせ、手に入れたばかりの力だからな。しかし、その力は成長させることができる。)
「この力は成長するのか…。」
(そうだ。時間もないから1回しか言わんぞ。その力がどのように成長していくかは、お前さんの『動機』と『想像力』にかかっている。お前さんの心構え次第で、世界をも滅ぼしかねない力になり得ることを肝にめいじておけ。)
オレは返す言葉もなく、ただ黙って聴いていることしかできなかった。何故なら、さっきは何も考えずにスルーしていた『世界を滅ぼしかねない力』という言葉が、急に現実味をおびて迫ってきたからだ。
(どうした。怖気づいたか?)
正直びびってる…。
でも、手に入れてしまったものはしょがない。
やるしかないじゃないか。
(以蔵さん。オイラもそばでサポートするっすよ!)
そんなビビりまくりのオレを案じてか、スラが声をかけてくれた。
ありがとう、スラ。
お前と一緒なら何とかやれるかもしれない…。
(フフ、スラも成長したな。そうだ以蔵。一人で何もかも抱える必要はない。お前さんには仲間がいるではないか。仲間に相談し頼れ。それでも、どうしようもない時はオレ様が力をかしてやる。)
ザジの言葉が胸に染み入る。
オレはまだ不安を拭いきれないままだったけど、やってやろうという気持ちになりつつあった。
(もう時間がきたようだ。最後にもう一つ警告しておくぞ。強欲たちが動き始めている。誰かは特定できていないが、『クリエイト(創造)』の力を得た輩が中心になって活動を活発化しているようだ。くれぐれも油断のないようにな。)
ザジはそう告げると、『次こそはクレーンゲームに連れていくのだぞ…!』という声を残しつつ、再び眠りについた。




