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42話 賜物

(フフフフ…オレ様のサプライズはどうだった?)


茫然自失と本を見つめているオレに誰かが話しかけてきた。


久しぶりに聞いた俺様発言にイラっとしつつも、まだ余韻にひたっていたかったオレはサクッと無視することにする。


「久しぶりだな、伊蔵」

そんなオレに業を煮やしたのか、突然机の上に上半身だけのライオン男が現れた。


目の前30センチの距離でライオン顔と見つめあう…


「誰ですか?」


「よもやオレ様の名前を忘れたか!?」


百獣の王も台無しな焦った様子でまくしたてるライオン男。


(伊蔵さん、ザジさんっす)

そんなやりとりに心配になったのか、スラがフォローを入れてくれる。


「知ってるよ。久しぶりだな、ザジ。」

オレはスラに答えつつ、このまま無視していると面倒くさそうなので、とりあえず挨拶は返すことにした。


「しばらく会わない間にふてぶてしくなったな。いや、ふてぶてしいのは前からか…」

何かを思い出すかのように独り言ちるザジ。


「ところでザジ、サプライズってなんのことだよ。」

一人物思いにふけりそうになっているザジを現実に引き戻すためにきいてみる。


「フフフ、よくきいてくれた。お前さんの耳元で流れていた『Love of my life』、あれは魔界から流していたんだよ。」

どや顔で説明するザジ。安定のウザさだ。

って、魔界から!?


「まさか…」


「そう。そのまさかだ。」


ザジの青い目が優しく微笑んだように見えた。


そして水晶のような目の奥には、真っ白な上下のタイツ姿のフレディがたたずんでいた。


「フレディが…?」


「うむ。」


「オレのために?」


「まあオレ様は、フレディの歌を中継しただけだがな。」少し照れくさそうに答えるザジとそれにうなずくフレディ。


「伊蔵。フレディからの伝言を覚えているか?」


「もちろん。」


「お前は、何を手放して何を手に入れた?」


「オレは…」


二人を前にしてオレは、ザジと出会ってから今までのことを振り返っていた。


オレはもてたいと思ってザジを召喚した…

そして実際もてるようになった…

でも、一番大切な人を手放した。

それも、たったいま…

オレの目から熱いものがこみ上げてくる。


「伊蔵よ。お前は悪魔であるオレ様と契約し、もてたいという望みをかなえた。その望みをかなえるために費やし努力は称賛に値する。そんなお前には二つの選択肢がある。」


「二つの選択肢…?」


「そう。一つはこのまま寿命まで生きて魔界に落ちること。もう一つは魔人化し悪魔の眷属となることだ。」


「魔人化したらどうなる?」


「まず人ではなくなる。その代わり悪魔の力を使うことができる。」


「悪魔の力…?」


「魔人化とは人が悪魔の力を宿して生まれ変わること。そして生まれ変わる時に賜物ギフトが与えられる。」


「その賜物ギフトが悪魔の力。」


「その通り。」


さっきまで溢れそうになっていた涙は跡形もなく消え、代わりに頭が冴え始める。


そうえいば、オレには覚醒の種がまかれていたはず。

あれはどんな成長をしているんだ?


(立派に成長して後は実を収穫するだけっす。)

オレの疑問にすかさずスラが答えてくれる。


「スラの言う通り、お前の覚醒の種は十分に成長し実をつけている。その実の中に賜物ギフトが入っている。」

うれしそうにスラの説明を補足するザジ。


「魔人化したら人ではなくなる。その代わり賜物ギフトがもらえる。」 


「うむ。」


「ちなみに、賜物ギフトは何がもらえる?」

オレはだめもとできいてみる。


「それはオレ様にもわからない。しかし、つい最近魔人化した輩は『クリエイト(創造)』という賜物ギフトを手に入れていた。」


「クリエイト?」


「簡単にいうと、材料さえあればイメージしたものを具現化できる力だ。」


「そんな力、チートじゃないか!」


「そう。魔人になるとは、そんなでたらめな力を手に入れることでもある。」


「だから悪魔は、魔人化できる人間を探し契約する。」


「そこまで理解しているなら、もはや説明はいるまい。さて伊蔵よ、どちらを選ぶ?」

さっきまでの優し気な雰囲気が一変し、悪魔然としたザジがたずねてくる。


「ザジ、もう少し確認してもいいか?」


「いいとも。」


「魔人化したらオレの見た目はどうなる?」


「基本変わらない。ただし悪魔の力を使うときには多少の変化がおきる。」


「多少の変化?」


「例えばさっきのクリエイトの力の場合、材料を握っている手は創造が終わるまで黒色に変色している。」


「寿命は?」


「人間としての寿命はなくなる。ただ、死なないというわけではない。致命傷を負えば消滅するし、負傷すれば痛い。」


オレはそこまできいてある可能性に気付く。


まてよ…

寿命がなくなるということは、告白しても寿命に影響されない?


「まあ、そうなるな。」

(そうっす。)

「なら、魔人化する方向で…」

二人が言い終えると同時にオレは答えていた。


「最後にもう一度確認するぞ。魔人化することで人の理を超えた存在になる。それはつまり、常人をはるかにこえた力と引き換えに、人として生きることは望めなくなるということだ。何より、悪魔の眷属としてこの世界の争いに巻き込まれていくことになるだろう。伊蔵。それでも、魔人化を望むか。」

オレの目をまっ直ぐに見つめながらザジがたずねてきた。


どうする!?


もし魔人化したら、人としては生きられなくなる…

それでも、気持ちは伝えたい!

たとえ彼女と一緒になれる未来が来ないとしても…


オレがうなずくとザジが手を差し出してきた。


「握手をかわしたら魔人化が始まる。一度始まった魔人化は止められない。それでもいいならオレ様の手を握れ。」オレは躊躇することなくザジの手を握る。


次の瞬間、目の前からザジが消えて何かがオレの体の中に侵入してきた。


いや、体の中というよりも何か別の意思がオレの魂を取り込もうとするような感覚。


オレはそれに精一杯抗いつつ自我が消えそうになるのをこらえる。


(伊蔵さん、負けたらだめっす!)

スラの声が遠くに聞こえる…


そうだよな。

負けられないよな。


オレは魔人化を成功させる!

そして神乃さんに告白するんだ!


そう決意すると同時にオレの自我は、侵入してきた意思を取り込み始める。



どれくらい時間がたったのだろう…


精も魂も尽き果てて机に突っ伏したとき、オレの魔人化は完了していた。

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