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41話  Love of my life

「神乃さん。ありがとう。すごくうれしいです。でもオレにはある約束があって、“今は”気持ちにこたえることができません。」

オレは努めて冷静に答えた。


「そっか…。でも、ちゃんと答えてくれてありがとう。きっととても大切な約束なんだよね。」


「・・・・・。」


「伊蔵君が約束を大切にする人だってわかったから、逆にちょっとうれしいかも…」

笑顔で答える神乃さんに安堵を覚えるオレ。


「じゃあ、わたしもう行くね。高校はちがうけど、お互いがんばろうね。」

そう言うと席を立つ神乃さん。


そのとき、ピアノの美しい旋律と歌が、オレの耳のそばで流れはじめる…


“Love of my life, you've hurt me.

You've broken my heart and now you leave me.

Love of my life, can't you see?”

(生涯で最愛の人よ 君はわたしを傷つけ 

この心を引き裂き わたしのもとを去っていった

最愛の人よそれがわからないの)


Queenの“Love of my life”だった。

哀愁を帯びた伸びのあるフレディの声に、オレの時間がゆっくりと流れはじめる。


“Bring it back, bring it back.

Don't take it away from me, because you don't know.

What it means to me.”

(かえして かえしてほしい わたしからうばわないで この想いがどれだけ大切なものか 君にはわからないのだから)



席を離れ、オレに背を向けてゆっくりと歩き始める。



“Love of my life, don't leave me.

You've stolen my love, you now desert me.

Love of my life, can't you see?”

(最愛の人よ行かないで わたしの愛情をうけておきながら わたしをみすてていく 最愛の人よわからないの)



ポニーテールが少しづつ遠ざかっていく。



“Bring it back, bring it back.

Don't take it away from me, because you don't know.

What it means to me.”

(かえして かえしてほしい わたしからうばわないで この想いがどれだけ大切なものか 君にはわからないのだから)



横顔から涙の粒が、ゆっくりと流れ落ちていく。



“You will remember When this is blown over

Everything's all by the way  When I grow older

I will be there at your side to remind you

How I still love you (I still love you)

I still love you.”

(君は思い出すだろう 状況が落ち着き 

全てが過去のできごとになった頃

わたしが年老いたら 君のそばに寄り添って

思い出させてあげるよ わたしがどれだけ君を愛し続けているか)



入り口の前で立ち止まった背中がかすかにふるえている。



“Oh, hurry back, hurry back

Don't take it away from me

Because you don't know what it means to me.”

(もどってきて はやくもどってきて わたしのもとへかえってきて それがわたしにとって どれだけ大切なことか 君にはわからないのだから)



入り口から出ると向き直り、引き戸をゆっくりと閉めはじめる。

“Love of my life

Love of my life

Ooh ooh.”

(最愛の人 生涯で最愛の人)



涙をこらえてほほ笑もうとする“女神”。


引き戸が閉まると同時に、オレの時間も元のはやさに戻っていく。 


彼女が忘れていった本を見つめながらオレは、二度目の恋に落ちていた。

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