36話 卒業式
3月25日。
村田事件の爪跡を残しながらも、卒業式は挙行された。
国歌、校歌の斉唱、校長のあいさつ、来賓のあいさつ、卒業証書授与と式次第に沿って進行されていく式典。
在校生代表からの送辞が終わり、オレは卒業生代表として答辞をよむために登壇した。
国旗に一礼し、来賓にむかって一礼する。
そのあと校長の前まで移動してから一礼し、内ポケットにしまっていた答辞を取り出す。
『答辞
春の暖かな日差しが体全体に感じられ、桜の花が咲き始める季節となりました。本日このよき日に、私たち141名は、自分たちの夢に向かって羽ばたいていくために中学校を卒業します。 』
オレはそこまでよむと、もっていた答辞の紙を折りたたんだ。
そして校長に背を向け、体育館を見下ろす。
オレは左側の教員席、中央の生徒・保護者席、右側の来賓席を順に見渡すと、一礼して話し始めた。
「まず、答辞を途中でやめてしまったことを謝罪したいと思います。申し訳ありませんでした。」
オレは腰を直角に曲げると、深々と頭を下げた。
「その上で、卒業生として、またこの中学校に通う一生徒として伝えたいことがあります。」
体育館内がざわつきだす。
権田先生が腰を浮かせているのも見える。
「持田君、続けなさい。」
しかし校長のその一言が、体育館内を静寂に引き戻す。
「校長先生ありがとうございます。続けます。私は…すいません、言いにくいのでここからは“オレ”で言わせてもらいます。」
オレは深呼吸すると、改めて体育館を見渡した。
好奇にみちた顔、不満げな顔、表情のよみとれない顔。
様々な“顔”がオレの一挙手一投足を見逃すまいと注視している。
オレはそれらの視線を受け止めながら続きを話し始めた。




