24話 体育大会
10月の最初の土曜日に体育大会は開催された。
入場行進、選手宣誓、準備運動から始まり次々に消化されていく種目。
午前中の最後の種目は一年生による集団演技だった。
運動場の真ん中に円になって集まる一年生たち。
みな手を後ろに組み、下を向いている。
『次はプログラムナンバー9、一年生による集団演技“ボヘミアン・ラプソディー”です。』
アナウンスが終わると同時に一年生たちによる足踏み(スタンプ)が始まった。
ドン ドン タン
ドン ドン タン
というリズムで繰り返されるスタンプ。
そんな中あのフレーズが流れだした。
“Buddy you’re a boy, make a big noise,
playing in the street
gonna be a big man some day“
(おい少年、街でふざけて バカ騒ぎして、大物になる日を夢見てる)
“You got mud on yo’ face
You big disgrace,
kickin’ your can all over the place,”
(顔に泥なんかつけて、みっともない姿だ どこに行っても人の気を引こうとしやがる)
“singing”
(さぁ)
“We will we will rock you“
(そんなおれたち、おれたちが、奴らをロックする)
“We will we will rock you”
(おれたち、おれたちが、世間をあっと言わせるんだ)
腕を突き上げてスタンプを繰り返す一年生たち。
鳥肌もののかっこよさだ。
そして“We will we will rock you”の後に、演技のテーマにもなっている“ボヘミアン・ラプソディー”が流れだす。
“Is this the real life?”
(これは現実なの?)
“Is this just fantasy?”
(ただの幻想なの?)
流れてくる曲に合わせて隊形が変化していく。
そこからは圧巻だった。
約6分の間に目まぐるしく変わる曲調。
それに負けないパフォーマンスが展開されていく。
難解な歌詞に独自の解釈を加えたであろうそのパフォーマンス(表現)は、観る者の心を魅了した。
そして最後のフレーズが流れだす。
“Nothing really matters”
(たいしたことじゃない)
“Anyone can see?”
(わかってくれる人はいる?)
“Nothing really matters”
(たいしたことじゃない)
“Nothing really matters to me.”
(たいしたことじゃない ぼくにはね)
“Any way the wind blows…”
(どんなことがおこってもね…)
一年生全員が手をうしろにくみ、下を向く。
一瞬おとずれた静寂のあとに、万雷の拍手が沸き起こる。
(凄すぎるっす…)
ずっと黙っていたスラが泣きそうな声でつぶやく。
っていうか、泣いてるよな?
(泣いてないっす)
そこは素直になっていいとこだぞ。
(そうっすか。なら泣いているっす)
あっさり認めやがった。
(天音さん、素敵すぎっす…)
たしかに。
兄のオレが言うのもなんだが、天音のパフォーマンスは際立って見えた。あくまで身内目線だが…
『これで午前中のプログラムは終了しました。午後のプログラム開始は13時45分からです。5分前には生徒席で待つようにしましょう。』
午前のプログラム終了を告げるアナウンスが流れる。
クラス対抗徒競走は午後最後のプログラムだった。
つまり体育大会のフィナーレを飾る種目だ。
“We will we will rock you”
(おれが、おれたちが、全員をあっと言わせるんだ)
なあ、スラ。
(はいっす!)
オレたちは高揚感を感じながらも気を引き締める。
校舎にもどろうとしたオレを見つけた天音が手をふってきた。
小さくうなずくオレ。
なぜかテンションMAXになっているスラがうざい。
やってやる。
オレは決意を新たに歩きだした。




