15話 登校
9月1日。
オレは数ヶ月ぶりに中学校へ登校した。
他の生徒と鉢合わせるのを避けるための9時登校だ。
校門は閉じていたので、インターホンを押して来校を伝える。
しばらくすると、インターホンごしに誰かが要件をたずねてきた。
「おはようございます。3年1組の持田伊蔵です。」
見えない誰かに向かって答える。
「ああ、持田か。久しぶりだな。元気してたか。」
聞き覚えのあるこの声。
「はい。なんとか。あの、もしかして森田先生ですか?」
インターホンにむかってたずねてみる。
「おお、よくわかったな。正解だ。今開けるからな。図書室も開けとくから、そっちで待っててくれ。」
気安い感じの受け答えにどこかホッとするオレ。
ヴィー
校門横にある通用門の施錠が解除された音が聞こえる。
オレは通用門を押し開けると、そのまま下足室のある校舎に向かって歩いていく。
校舎の端から見える運動場では、体操着に着替えた生徒たちの活動する姿がちらほらと視界に入ってくる。
(ここが中学校っすか…)
頭の上からスラの声が聞こえた。
「スラ、ぜったいに勝手なことするなよ。」
小声でくぎをさす。
(大丈夫っす。約束するっす。)
「それならいいんだけどな…」
オレは頭の上にのっているスラの位置を、両手で微調整しながら答える。
スラは周りの景色に同化しているので、はた目にはわからないが、もし見ることができたなら、ミーシャのターバンのように、オレの頭に巻き付くスライムを目にしたことだろう。
「それにしても、学校までついてくる必要なくないか?」
(なくないことはないっす。)
なんか言いにくそうだなスラ。無理しなくてもいいぞ。
(無理はしていないっす。“離れるな”と“目をはなすな”が、ザジさんから受けているミッションなのっす。)
オレが言いたかったのは語尾の“っす”の方だったんだけど…
まぁいいか。
ザジの指令でオレの身辺警護もしてもらってる。その理解でいいか?
(はいっす!)
「じゃあ、よろしく頼む。」
(了解っす。)
うれしそうに答えるスラに、オレは全て任せることにした。
そうこうしているうちに下足室に到着した。
上履きに履き替えて二階の図書室を目指す。
変わり映えしない校舎の景色。
教室からもれ聞こえてくる先生の声。
階段を上がり、薄明るい廊下を一人歩く。
しばらくすると、目の前に薄緑色の図書室のトビラが見えてきた。




