11話 世界
スラの説明はこうだった。
オレの住む地上界はゆで卵で例えるなら黄身の部分で、その周りを霊界が白身のように包み込んでいるらしい。
そしてそれを挟むようにして、魔界と天上界が存在しているというのだ。
天上界は神(GOD)を頂点とした“てんし”たちに住む世界で、魔界は悪魔たちが住む世界。
地上界で寿命を迎えた“もの(人間も動物も)”は、霊界に行きそこで安息に入る。
そして霊界から、魔界に行くか、天上界に行くかを選ぶことができるというのだ。
自分でどちらに行くか選ぶことができる…?
「そうっす。」
それじゃ、誰も魔界には行きたがらないんじゃないか…?
「そこなんっす。」
困ったようにスラが答える。
「天上界の宣伝戦のおかげで、"魔界(地獄)=恐ろしい場所"というイメージが定着してしまっているのっす。」
たしかに、オレたち人類の魔界(地獄)へのイメージは最悪だ。
「でも本当は、魔界はそこまで恐ろしい場所ではないっす。」
本当か?
「本当っす。魔界はきほん、自分の好きなことをして過ごせるっす。“仮初めの肉体”を与えられているので、飲んだり食べたり、運動や演奏、歌ったり踊ったりもできるっす。」
そうか。なんか、地上での生活の延長みたいだな。
「その通りっす。ただし、“仮初めの肉体”なので、性行為はできないっす。」
まじか。そこは無理なのか。
「そもそも、死者は子孫を残す必要がないっす。なので、“仮初めの肉体”には性別もないのっす。」
なるほど。悔しいが納得するしかない。
「あと、“仮初めの肉体”のスペックは皆同じなので、そこに入る“魂”によって、活躍できる範囲や個性も決まってくるっす。」
なんだって!
ここでも“魂”が関係してくるのか!
「生きている間にどれほど魂を磨いてきたか。それが死んだ後の生活に関係してくるのっす。」
これで、フレディやマイケルが魔界でも、生前と同じような活躍ができている理由がわっかた。
「スラ、魔界のことはだいたいわかったけど、天上界はどんな感じなんだ?」
オレは机から降りて椅子に腰かけながらたずねる。
「天上界は希望したからといって、誰もが行けるわけではないっす。むしろ、行けるのはほんの一握りの死者のみっす。」
なんだ。魔界と比べてえらく間口が狭いんだな。
「そうなんっす。魔界の“来るもの拒まず”に対して、天上界は“来るものを制限”しているっす。」
その他大勢の魔界と少数精鋭の天上界、みたいな感じか…?
「言い得て妙っすね。その通りっす。」
少し不満そうな様子で答えるスラ。
そもそも魔界は、天界の戦いに敗れたルシファー様によって創造された場所っす。そして今の魔界は、“ルシファーの6枚の翼”をそれぞれにもつ6体の大悪魔たちによって治められているっす。」
ってことは、今の魔界は6つに分裂しているようなものか?
「その通りっす。それに対して天上界は神(GOD)を頂点として一枚岩っす。神の号令のもと、“最終決戦”に向けて、“てんし”たちは昼夜を問わず活動しているっす。」
昼夜を問わずか…なんかブラックな感じだな。
「まあ…身内の悪口は言いたくないっすけど、魔界で好き勝手して、争っている輩に比べたら、ブラックな方がぜんぜんましっす。」
手厳しく言い放つスラ。
「でも、ザジさんは違うっす。“最終決戦”に向けて色々考えて、準備しているっす。」
そうか。ザジのように、人間界に来て積極的に活動する悪魔もいるんだな。
「本当はもう少し詳しいことも話したいっすけど、残りはザジさんの許可がなければ話せないっす。」
透明の体をプルプル波打たせて、もう話せないアピールをするスラ…
なんか事情がありそうなので、それ以上オレは追及しないことにした。




