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城裂一賊  作者: イスカス
3/3

Killer Family Game ~キラーファミリーゲーム~


 キラーファミリーゲーム。


 直訳するとどうだろう、家族殺しのゲームといったところか。


 それがどういう意味を持ってるにせよ、そんなことはどうでもいい、些細なことだった。


 和訳なんて所詮、解釈の違いに過ぎない。平仮名か、片仮名かの違いでしかないのだ。



 どうでもよかった。城裂一賊にとって、そんなことは―――。








 「遠美とおみが誘拐された!」


 一賊の大将、すなわちリーダーであるところの親也は、玄関のドアを開けるなりそう叫んだった。


 

 遠美といえば、冬馬より2つ年下の、中学1年生だ。また、一賊の中で最も年齢の低い人間だった。そんな人間が誘拐されたとなれば一大事だ。家族を何よりも大事にする一賊――それが城裂一賊。こと家族のことに関しては、それこそ家族総出で事に当たるのが暗黙の了解である。


 「誰に誘拐されたんだ!」


 大将の次に年長の城火じょうかが親也に聞く。


 「よく分からん!ふざけた名前を言ってやがった!返して欲しければ、一賊総出で三宮駅まで来いと!」


 「……行くしかないな。しかし、何故三宮駅なんだ?あんなに人の多いところに集まって、一体何をしろと……」


 今度は、ルームメイトの重一しげかずが冷静に返す。この人は冬馬から見れば、いつも冷静でいることに定評を持つ、優しいお兄さん的な存在だ。最近髪の毛を伸ばしているらしく、軽く後ろで束ねている。19歳の普通の美青年だ。


 他の城裂達も、重一の意見に賛成らしく、首を縦に振っている。


 「よし、各自すぐに準備しろ!10分後にここを出る」


 リーダーの親也はそう言うと、隣の部屋に向かったようだ。城裂一賊は現在、22人の家族だ。さすがにマンションの一室で生活できる人数じゃないため、4つの部屋に分かれている。分かりやすく言えば、このマンションの最上階、14階に、城裂という表札が4つあるということになる。


 遠美とは、年が近いだけに喋る機会が間々あった冬馬は、誘拐と聞いて少しショックを受けた。それは、家族が目の前からいなくなる恐怖と似たようなものだった。


 「行こうか、冬馬」


 重一が落ち着いた様子で冬馬に話しかける。


 「ああ―――」


 冬馬の足は重かった。








 


 さきほど述べた、冬馬が50kmの道のりをかけて歩いてやってきた、政令指定都市というのは神戸市のことだ。


 神戸市。


 人口約150万人。人口密度は約2780人毎平方キロメートル。

 

 9つの区からなる神戸市は、外国との交流も深く、外国人居留置がある。また、地形の特徴として、山と海の間が近いということが挙げられる。それは、三宮なり灘なりに行ってもらえれば分かると思うが、市街地から山が見え、その反対側を見れば海が見える、という状況だ。また、神戸の夜景は日本三大夜景に登録されている。100万ドルの夜景、と昔言われていたが、今は1000万ドルの夜景とも言われるようになった。


 

 まあ、神戸の紹介はこれくらいでいいだろう。とにかく、神戸は面白い都市なのだ。そして、その面白さは、今回城裂一賊の敵に利用される結果となった。

 


 

 神戸駅前に出向いた一賊は驚いた。


 「人が……誰もいない……だと!?」


 誰も、いなかった。否、一賊以外はという意味になるが。


 いつも人であふれてる、駅前広場には、城裂以外の人間が存在していない。


 それだけじゃない。


 この世から、自分達以外の人間が全て消えてしまった、そんな感覚。


 そこへ、親也の携帯電話に着信。


 「お前か!一体何のつもりだ!何がしたい!」


 その後しばらく話した後、親也は電話を切った。


 「そこのベンチの下に、腕時計がある」


 親也が指さした先が、丁度冬馬の足元近くだったので、冬馬はしゃがんでベンチの下を確認する。すると、何やらダンボールの箱が出てきた。中を開けると、、本当に腕時計が入っていた。


 「何で腕時計?」


 全く話が読めない冬馬は、不思議そうに腕時計を眺める。


 「それを全員付けろ」

 

 親也が皆にその旨を伝えた。










 「で、今この状況ね…………」


 冬馬はぼやいていた。JR神戸線の高架下で、少し息を荒げながら。


 「何をぼやいてる。家族のためだろう。それともお前は、城裂一賊を抜けるのか?」


 冷静沈着が売りの美青年、城裂重一。その口調はまさしく家族に話しかけるようだった。


 「重にいは19だろ?俺はまだ15だぜ。基礎体力が違う」


 「そんな話はしてないんだがな……」


 呆れたように呟く重一。彼もまた、家族を失った身だ。そして親也に拾われた。


 「お前の能力、なんだっけか?」


 「あ?能力?」

 

 「とぼけるな冬馬。お前はノーマルじゃないだろ。勿論俺もだ。お互い、能力は確認しておいた方がいい」


 「けっ、分かったよ。俺の能力は」


 そう言って冬馬は、ビー玉ほどの小石を拾い、それを人差し指に乗せ。


 「ほいっ」


 ひゅんっ!という発射音。


 小石はJR線の線路を支える柱に5cmほどめり込んで、そこで停止した。


 「……サイコキネシスか」


 「ああ、この間、レベル3になった」


 「じゃ、俺の能力か。俺のは説明しにくいんだが、まぁ予知能力とでも言うか」


 「へぇ~初めて会ったな。ちょっと何か予知してみてよ」


 「……………………」


 少し目を瞑った後。


 「ふんっ。あと10分程でここに奴らが来る。移動するか」


 「あ?ああ――」


 二人は神戸の夜道を歩き出した。

 


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