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城裂一賊  作者: イスカス
2/3

家族

 そもそも、城裂冬馬――否、赤城冬馬あかぎとうまが城裂一賊に入ることになった理由については、時間を1ヶ月程前に遡る。


 

 冬馬の父親は、5ヶ月前にリストラされた。


 というか、不況の影響で、勤務していた電気店がつぶれたのだ。


 冬馬の家はあまり裕福な家庭ではなかったことと、父親の職が決まらなかったこと、さらに、冬馬の他にも子どもがいたことなど、様々な条件の下、その決定は下された。


 「冬馬、お前は一人で生きていけ」


 父親から受けた、辛辣な言葉だ。


 こんな言葉を、父親から、家族から聞くとは思っていなかった。

 

 裕福じゃなかった分、他の家庭よりも家族の仲がいいと、冬馬は思っていた。父親も、とても尊敬できる人で、母親も、いつも優しくしてくれた。


 妹も、冬馬と仲が良かった。小さい頃は、一緒に遊んでやったし、中学生になった今でも、勉強を教えてやったりしていた。


 「お兄ちゃん、バイバイ…………」


 妹から聞いた、最後の声がそれ。全く、たまったものじゃない。自暴自棄に成りかけたその時、父親から放たれた言葉が、僕を奈落の底に突き落とした。


 「お前のそれ。それのせいもあるんだ……」


 その言葉を最後に、赤城家は解散した。


 妹は、母親と一緒に。父親は一人で。


 そして、15歳、中3の冬馬も一人で外の世界に放たれた。それが、1ヶ月前。


 





 財布だけを持ち、途方も歩いているつもりだったが、いつの間にか、知らないマンションのホールに立っていた。


 たまたま通った住人に聞いてみると、そこは、冬馬の住んでいた都市から50kmも離れた、某政令指定都市だった。


 「やぁ、よく来たね」


 「え?」


 声のした方を振り返ると、そこには30代くらいだと思われる男性が立っていた。男性はスーツ姿で、たった今、会社から帰ってきたような風だった。


 「誰だ?あんた」


 「ああ、自己紹介しようか。私は、城裂親也しろさきしんや。城裂家の代表者だ。さ、行こうか。城裂冬馬くん」


 「は?何を。俺の名前は赤城冬馬だぜ?赤城だぜ。人違いじゃないのか?」


 「赤城?そうか。君の前の名字は赤城というのか。だが、君、もう家族はいないだろう?その名字を語る資格があるのかい?」


 「て、てめぇ………何故それを知っている……」


 何故、こんな初対面の男が自分の家庭事情や、今の事情を知っているのか、冬馬には分からなかった。が、しかし、この男からは、どこか安心できるオーラみたいなものがあった。だから、冬馬はもう少し話を続ける。


 「分かるさ。僕も君と同じだからさ。だから―――」


 いつの間にか、その男は冬馬の目の前に居た。そして、


 「僕達は、もう立派な家族さ」


 そう言って右手を差し出してきた。


 「か……ぞ、く………」


 それは、懐かしい響きに思えた


 そして、泣きながら、自分の右手を差し出し、がっちりと握手をした。





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