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暇を持て余した神の遊び

作者: あおい猫

「ここは……」

 気が付くと見覚えもない場所。記憶を探しても思い付く場所はない。

 視線を動かしながら、辺りを見渡すも、白、白、白。真っ白だ。

 後ろを振り返ると、白い空間だけだと思ったその中に一本、バナナの木が一本あるだけだった。

「なんで、バナナ……って、そうか俺は」

 だんだんと記憶が蘇ってくる。

 彼は、自転車通学中に事故って死んだのだった。

 何か黄色いのを自転車で踏みつけて、滑って転びそうになって、何とか転ばないようにしてる内に、そのままダンプカーに轢かれた。

 まだ十四歳。何か悪い事をしただろうか。

 いいや、してない。断じてしてない。

 夢もある、したい事もある。

「どうして、死ななきゃならないんだ」

 足から感覚がなくなったかのように、力が抜けて白い地面に膝が付く。


「なら、バナナを食べるといい。君がバナナを食べた分、今日の朝からの状態で、何度でも全て一からやり直してあげよう」

 意味が分からない。理解不能、理解不能、そう彼の脳が告げている。というか、ダレデスカ。という心境だった。

 姿形からは、よく分からないけど人っぽくて、頭にワッカが付いてる偉そうな老人が居たのが見えていた。

「……えーっと、あんた誰だよ」

「神です」

「紙?」

「神」

「髪?」

「それは長いお友達。私は神、ゴット、ネ申」

「最後の違う気が……って、蘇らせてくれるの!?」

「神ですから。いいですよ。バナナさえ食べれば、蘇らせてあげます」

「やったっ! これで、彼女居ない暦な人生を継続出来る!」

「言ってて哀しくないですか。さぁ、食べて来なさい」

 足に力が入り、再び立ち上がる気力を得る。彼は、急いでバナナの木まで駆け寄ると、バナナの房を手に入れる。

 房から一本のバナナ取り、皮を剥き、頬張りながら一気に口の中へと流し込んだ。

「んんっ…………神様! 俺食べたよ! だから、早く生き返らせてくれよ!?」

「一本だけでいいんですか? 食べた本数分、死んでも生き返らせて上げますよ」

 それを聞いて、手に持っている房を見つめる。とりあえず、食べてても損はないだろう。と思って数分かけて全部平らげた。

「では、約束どおり。君を生き返らせて上げます」

「ありがとう神様!」

 神様はにっこりと微笑み、蘇らせた。蘇った彼の姿が消えると、バナナの皮が全て白い地面へと落ちて、そこを通り抜けていった。





 朝が来て起きる。鳴る目覚まし時計は、なぜか遅刻ギリギリの設定。パジャマから制服への着替えに五分と掛からず、朝ご飯は抜く。

 ほとんど日常茶飯事の出来事となっていた。

「いっけねー! 遅刻遅刻ー! どうしてもっと早く起きなかったんだ。俺!」 

 自嘲するが、それは意味はなかった。家の扉を、乱暴に開けて外へ出る。

「いってきまーす!」

 大きな声を張り上げて、自宅前に止めてあった自転車へ飛び乗るようにして乗り、ペダルを漕ぐ足に力を入れる。

 学校までを最短距離で走り抜けるコースを頭の中で選ぶ。

 自転車を一生懸命、漕ぎ続けていた。このまま全て順調に行けば、ギリギリであったが、何とか間に合うだろう。

 交差点へと差し掛かり急カーブ。常人ならば、このスピードで突っ込めば、ここでスリップか、車道へとはみ出てしまうだろうが、彼は慣れたもので上手い事スピードを維持したまま……見事に曲がりきる。

 だが、ここで思わぬハプニングがあった。


 バナナだ。


 正確には、バナナの皮がなぜか地面に落ちていた。しかも、無駄に大量に。

「なんでだよ……」

 冷静な口調と裏腹に、自転車のタイヤで踏んづけてしまい、倒れそうになる。だが、ここで倒れてしまえば遅刻する。

「ぐっ」

 それでも、転びそうな所を、今まで培ってきたハンドル捌きで、何とか転ばずに、スピードを維持し続けることが出来た。

 そして、気付いた時には自転車歩行者道から、自動車道へとはみ出ていた。

「あ、ダンブ……」

 これが彼の最後に見た光景だった。





「ここは……」

 気が付くと見覚えもない場所。記憶を探しても思い付く場所はない。

 視線を動かしながら、辺りを見渡すも、白、白、白。真っ白だ。

 後ろを振り返ると、白い空間だけだと思ったその中に一本、バナナの木が一本あるだけだった。

「なんで、バナナ……って、そうか俺は」

 だんだんと記憶が蘇ってくる。

 彼は、自転車通学中に事故って死んだのだった。

 何か黄色いのを自転車で踏みつけて、滑って転びそうになって、何とか転ばないようにしてる内に、そのままダンプカーに轢かれた。

 まだ十四歳。何か悪い事をしただろうか。

 いいや、してない。断じてしてない。

 夢もある、したい事もある。

「どうして、死ななきゃならないんだ」

 足から感覚がなくなったかのように、力が抜けて白い地面に膝が付く。


「なら、バナナを食べるといい。君がバナナを食べた分、今日の朝からの状態で、"何度"でも、全て"一から"やり直してあげよう」



 彼は、後……死んでも10,232回生き返れるのだった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございました。


ありがちなループモノですが、どうにも書きたくなったので自分なりに書いてみました。

全ての起点となる出発点が気になるループモノ、これはホラーなのかな?

なぜ、バナナ?など深く考えてたら考えもループしてしまうと思いますので、深く考えません。


重ねてここまでお読み下さり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] なかなか面白かったです。 こうやってループものを率直に書くのって難しいと思いますが、書きたいことをそのまま表されていたので、凄くまとまりがありました。ストーリー的には、ちょっと浅いかなと思…
2009/09/23 11:31 退会済み
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