フリーター、魔王を目指す。
戦場フリーター&
この世界には4つの大陸が存在する。
人間や生物が多く暮らす比較的平和なアイラス大陸、植物の繁殖により覆い隠された文明が眠るとされるガグバグブ大陸、大陸のほとんどが高い標高の山で形成されるエレサニッコ大陸、そして特殊な力を持つ魔族のみが暮らし繁栄できるシュガレスタ大陸。
シュガレスタ大陸は代々その土地をおさめる魔王と呼ばれる存在によって治世されてきた。大陸全土をおさめるとなればそれに見合う器量、力、知恵が必要となる。
次代の選出は最初期、魔王国建国から数百年間は血縁内で行われていた。が力の不足や胆力の無さから起こる下剋上の頻発などにより治世が乱れ大陸全土で争いが日常となった。
繰り返された下剋上で丁度50代目となった魔王・ピッツァーノが、魔王の選出を選挙制にすると定めそこから2000年に至る現在まで国民による次代魔王の選出が続いてる。
「―――ここまではいいな?」
「……つまりその次代魔王を担う選挙に俺が出馬していると???」
「そういうことだ」
「いやおッッッッッも!!!!!責任重大すぎて俺もう吐きそうなんだけど!??…ァ、じゃあ選挙で一番にならなきゃ俺平和じゃ」
「その場合お前は国を追い出され海に流されるな」
「勝手に喚んどいてダメだったらポイ捨てとか酷くねッ!?やるしかねーじゃんじゃかじゃんッ!!!」
次代の選出には毎回山あり谷あり落とし穴あり、一筋縄ではいかない曲者揃いでとくに今回は偏りが激しいやつらばかり。
「相応しい条件を揃えた者だけ召喚されるように魔王様がしたからお前なら大丈夫だろ?」
足掻けよ。次代魔王第1候補サマ。
―――――――――――
前書きで舞台説明を省略。
タイトル回収はいつになることやら。
この「戦場フリーター&」は日本に生きるあるフリーターがとある世界で生きていく物語である。
―――楽しいも苦しいも、その時の一瞬の行動で決まるものだ。
例えば、俺が休日の夜に2割引のモンブランプリンを買えたとしたら次の日は集中して仕事を終わらせてルンルンで帰宅してご機嫌になる。
でももし2割引なのに気付かなくて買わずに家に帰れば、次の日は残業して疲労困憊のまま帰宅しテンション激萎えで飯を食う。
つまり周りをよく観察するのは俺の幸せに繋がるし、一日をハッピーに過ごす秘訣ってこと。
……イヤ、マァ、それでもこういう状況には対応出来ないんだわ!!!
周囲には大勢の誰か、誰か、ナニカ。…ナニカ?
え、何あれアニメとかで見るようなツノ生えた化け物がいる!?んでその隣りには魔女みたいなお姉さんが居てしかも巨乳、だと…!!?けしからんな!!
よぉぉく見ればロリもショタもイケメンもフツメンも獣耳っ娘までいるじゃねぇかココがパラダイスか!!!!
「キミが、新しく召喚された魔王か」
………?、ナンダッテ……???しょうかんされたまおう???誰のこと??てか誰が言った?
威厳を感じる低い声なのに柔らかい声音で語りかけられそちらを見遣る。
………ェッ?????
「歓迎しよう。私が現魔王、シュガーレス・S・シガレットだ。シュガーと呼んでほしい」
ヒェェェエ!!!お、オジサマが!!ダンディーでえっちな顔したオジサマが喋ったァァァア!!!てかメチャクチャ今大事なこと言ったよな!?魔王?俺が、魔王ッ!!!??
ただただ困惑する俺にオジサマはキレイな微笑みを浮かべながら尋ねた。
「新たな魔王よ、どうか私にキミの名前を教えてくれないか?」
…スキ。じゃなくてだな!!!!
蒼く澄んだ、空のような眼をしたオジサマよ。大歓迎ムードで嬉しそうにしてくれるのはハチャメチャに可愛いから良いんだが………だがッ俺は!ダンッジテ!!!!
「魔王ジャナイデスヒトチガイデスゥゥゥゥウ!!!」
―――……
「そうかい…ならキミを殺さないといけないな。心苦しいが一思いに」
「魔王じゃないけど魔王です多分!!イエ!!!絶対ッ!!!!」
「そうかい?フフ、なら良かった」
あっぶねーーー!!!イマ目がマジだった。控えてた人も剣抜こうとしてた魔女さんも手ぇ動かそうとしてた。他の皆さまも絶対殺そうとしてた!なんなのここ俺タダのフリーターよ?なんで急にコスプレ会場に連れてこられた上に魔王させられそうになってんの!!!?あと魔王って世襲でなるんじゃねーの?勇者召喚ならぬ魔王召喚ってか?イマはそれがブームなのネ知らなかったヨ!!
「突然召喚されて戸惑っているだろう。今日は私と2人で話しをしよう」
「ッ、発言をお許し下さい魔王様」
「ン。よい、赦す」
右から5番目に立ってたフードで顔が見えない男が1歩前に出た。
「予備魔王と2人きりなど言語道断!!!節度!!節度をお守り下さいませッ!」
……ンンン???なんだって?せつど…??
「しかしノーキッシュ、彼はどう見ても困惑している。この場合は1対1で腹を割って話すのが1番だ」
「いけません魔王様!!こんな素性も分からない男と2人きりだなんて、ナニをされるやら分かりませんぞ!」
俺は一体何を警戒されているんだ???オジサマに手を出すとでも?(意味深)こんな非力な体で????(意味深)
「キッシュの言う通りだよ!予備が魔王様に触れられるなんて思ってないけど魔王様は優しいし、もしソイツが躓いたとき御手をお貸しになったりされたら…もうッ、もう!!」
なにその具体的な状況。オジサマがクッソ優しい人だってことはよく分かったんだけど過保護過ぎじゃない?てかそれ獣耳っ娘がオジサマと手繋ぎたいだけだろ可愛いなオイ。
「パイノン…お前の心配は嬉しいが私はそんなに優しい人格をしてはいない。それに彼は見たところ優しそうだ」
前言撤回ダメだこの人お人好し過ぎる。過保護がいくら居ても足りないくらいの人かもしれない。大丈夫?怪しげな壷とか買わされそうになったことない???
「お前たち、オマケが何か言いたげだぞ。静かにしてやれ」
銀甲冑からいらないお鉢が回ってきた!!?な、何か言わないと……何か…。
「え、えぇっと…し、シュガーさんはおいくつなんですか…?」
空気が凍った気がする。そしてコイツ何聞いてんだ感のある視線が俺の身体を貫いてる気がする。イヤホント俺何聞いてんの?阿呆なの馬鹿なの?
うっかり作り上げてしまった重い空気を破りさったのはオジサマのカッコイイ笑い声だった。
「ふ…ハッハッハッハっ!!!き、キミは!面白い!」
「魔王様のご質問に応えないばかりか年齢を訊ねる、などッ!!やはりこやつは殺しましょう!!!殺します!!!」
オジサマめっちゃ笑ってるぅ!!!でもきっしゅ?さんはバチクソきれてらっしゃる!!どうすんだこれどうすんのもう俺をおウチに帰してくれよぉ!!ちょっと泣きそうなんだけど!!?
「はぁ…笑った。うむ、やはり良い。とりあえず第1候補にするか」
『!!!!』
ざわりと空気が揺れた。荘厳としたこの広間にいる全てのひとから視線を集め朗らかに笑うオジサマ。静かになったのをいい事に俺はとにかく家に帰りたい一心でその言葉を発した。
「すみません、それって帰宅可能ですかね…?」
ニコリと彼が笑う。嫌な予感が走り無意識に手のひらへ力がこもる。
「そういえばまだ言っていなかったな。ここはC.C、全ての生き物が何かを宿した世界。そしてキミがいるこの場所は私が治める国、フレッシュ・スティール魔王国の魔王城だ。これからキミにはこの国の魔王継承権第1位として生活していってほしい」
もちろん、仮住まいとしてこの城の一室を充てがおう。私も応援しているから頑張って魔王になってほしい。
そう…そう言われても、そんなスグには受け止めきれないンですが…???
「あぁ、そうだオマケ。3日後魔王国の民の前で宣誓式が行われる。無様を晒せば一気に最下位まで転落するぞ、気に入っていただけたからといっていい気にならないことだ」
ナニ???最下位になったらなんかダメなの?城から追い出されるとか??
「最下位は朝・昼・晩、《総てを超越したもの》と白飯のみだ。覚悟しておくがいい、フッ」
「あんなの1食でも食べたくないよ…。候補くん達可哀想だなぁ」
「アレを食べるくらいなら1日抜いた方がマシだな」
なんだ…?すべてをちょうえつしたもの……??そんなに激マズ料理なのか。てかここ白米あるのか、つまり俺は生きていけるな良かった。何はともあれこのまま目指せ魔王しないと生きてけないみたいだし、ワンチャン夢の可能性もあるから流れに身を任せとこう。フリーターは長い物には巻かれるんだよ!
「えーと、今日からお世話になります…?皿上 重です。よろしくお願いします」
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→「不思議な力ってすげー!」「混ぜるだけ。」「ちょっと距離近くない???」
の3本(予定)です。
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