邂逅
俺は遅刻ギリギリで席に座ると直後に始業のチャイムが鳴り、中年で愛想の悪そうな顔の担任が入ってきた。
「あー、今日は転校生が来てるぞ。入ってこい」
なんと入ってきたのは俺がさっき弄んだ女だったのだ。さっきのことがなかったかのように服は整っている。
「手短に自己紹介ね」
「黒薔薇宮 輪廻子です。父親の仕事の都合でこの学校に転校してきました」
彼女の声は名前に劣らず凛々しく、それでいて可憐であった。ただ俺にはその声の奥にどこか虚ろと憎しみが見えたような気がした。
「まぁ仲良くしてやってくれ、えぇっとお前の席は……疾風沢の隣が開いてるな。そこに座ってくれ」
彼女は堂々とした立ち居振る舞いで男子の目線を奪う。
「あいつ可愛いな」「放課後はデートだな」「俺の女にしたい」などとそんな声も聞こえてくる。
「まぁ、お前みたいな幸が薄そうな奴とは縁がなさそうだよな」
こいつは俺の前の席の静川だ。執拗に嫌味ばかり言ってくるがいざというときは男らしく、また人情溢れる性格でなかなか憎めない奴だ。
「それはどうかな……?」
「ねぇ疾風沢君、朝のことなんだけど」
なんと、黒薔薇宮の方から俺に話しかけてきた。まさか彼女は俺に気があるのだろうか。すぐに携帯を取り出しメアド交換できるように準備する。
「なんだと!?疾風沢お前!!黒薔薇宮さんと朝何かあったのか!!??羨ましいぞけしからん!!」
「散々遊んでおいて3万円は安すぎるわ。せめて7割増しにしてちょうだい」
何かと思えば、俺の渡した金が少なすぎるとの不満だったらしい。些細なことだと思ったが周囲を見てみると担任を含めたクラスの目線が俺と黒薔薇宮に集中していた。
「わかったわかった。小切手を渡そう。金額の所に好きな数字を書くんだな。」
下手に断って大事になっても困るので、小切手を渡すと彼女の顔から笑みが見えた。
「お前も笑うことがあるんだな」
「っ!べっ、別に嬉しいわけじゃないわ!ただ冷たい風が頬を撫でたのがこそばゆかっただけよ!」