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勇者になることを誓うが人を守れない  作者: T・S
第1章 冒険心は忘れられない
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第18話 光と闇

 とりあえずリーナの家に戻ることにした。


 家に着くと、リーナは留守のようだったが、ドアにはノートの切れ端が貼ってあった。


"勇磨くんへ

 生きて帰って来てくれて良かったよ。

 右にある箱に闇の魔法を使ってみてね。

 私の家は好きに使っていいから。

 また後で会えることを願ってる。

 リーラより"

 

 紙に書いてある通りドアより右側に箱が置いてある。

 機械のようなその箱を見つめると、何だか嫌な予感がする。


「よく分からないけど壊せってことだよな」


 僕は闇の短剣を手に取り、箱に向けて振りかざす。

 その瞬間、箱が壊れてできた隙間から光が飛び出し、全身が浄化されて意識が薄くなるような感覚になった。

 でもそれはほんの一瞬で、その後光と闇の波動が絡み合って無音の爆発が起きたようだった。


 箱は跡形もなく消え、代わりにそこには鍵が落ちている。

 何が起きたのかよく分からなかったけど、どこか覚えのある感覚があった。


「なんだったんだ今のは」


 鍵は何の変哲もない普通の鍵のようだ。

 その鍵はドアの鍵穴にバッチリ合い、リーナの家に入ることができた。


 仕組みは分からないがかなり手の込んだ仕掛けをしてくれたみたいだ。


「お邪魔しまーす」


 僕のいた世界と同じ構造をしている家の中が、今の僕にはとても落ち着く空間だった。


 家を好きに使っていいと紙に書いてあったし、まず風呂に入ってスッキリしたい...。


 着替えとタオルどうしようなどと考えながら風呂場を覗いてみると、そこには循環アダプターのない浴槽があり、蛇口やシャワーヘッドもなかった。

 ここは魔法の世界であり、水は魔法で出せてしまうのだ。

 僕は風呂に入ることも手を洗うことすらできない...。


 家の鍵を机に置き、冒険用のパーカーやズボンを脱いで仕方なくソファに座り、今日のことを振り返る。

 ちなみに2重でズボンを履いていた。


 初めての冒険でいろんなことがあったけど、目の前で消えていくゴブリンたちには、涼太と柚美が目の前で倒れていくときと近しい思いを感じてしまった。

 せっかく異世界で冒険ができるという事実で負の感情が紛れていたのに、また目の前に現れてしまっている。


 柚美との約束、みんなを守ることの《みんな》には魔物は含まれるのだろうか。

 いやいや、魔物を守るなんて所詮馬鹿げたことだろうし、そんなことしてたら人間を守ることなんてできない。

 ん、あれ、僕の目的は人間であるあの男を殺すことだったか。 


「良かった勇磨くん無事みたいだね」


 突然現れるリーナにドキッとした。


 リーナは僕の方へ歩いてきて、僕の頭の上に手をポンと置く。


「まだ魔力が体に循環できてないみたいね

 体の魔力への抵抗がなくなるまで冒険者を続けてもらわなくちゃならないわ」


 頭の上に手が置かれている間、ほんの少しの魔力が体全体に行き渡っているのを感じてゾワッとした。


「今日はこれを食べてゆっくりしてね

 あ、そうだ鍛冶屋のケンゴウさんが魔法に関しての本を書いてたからコピーしておいたやつがあるんだけど、暇だったら読んでみるといいよ

 その本に全てが書かれているわけじゃないけど、嘘偽りはなかったから」


「あ、ありがとうございます」

 リーナからおにぎり3つとお茶1本と本を手渡された。



 つづく

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