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勇者になることを誓うが人を守れない  作者: T・S
第1章 冒険心は忘れられない
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第13話 冒険の始まり

 村の人たちの視線を感じながら歩き続ける。


 門に着くと、お喋りが消えてより緊張感が増した。

 みんな真剣な顔で門を出て進み続ける。


 辺りにはいくつもの村がある。


 20分ほど歩いていたら、いかにも魔物の村と思わせるような独特な建物がある村が見えた。


「今日滅ぼす村はあそこだ!気を引き締めていくぞ!」

 ディザスさんの掛け声に、冒険者たちは「おー!」と声をあげる。


 村の中に見える人影は...ゴブリン!


 ゲームでよく見るゴブリンとは違って、人間と同じように一人一人顔つきが違うようだ。

 それに髪が生えていて服も着ている。


 村がもう目の前というところで、サリアさんが言葉を発する。

「みな散れ!!」


 村の囲いは余裕で飛び越えられる程の高さに石が積まれているだけのようだ。


 僕たちは村を囲うように分かれて走り、村へと足を踏み入れる。


 戦いが始まった。

 ゴブリンの断末魔の叫びが村全体に鳴り響いている。


「ユーマ、俺についてこい」


「はい!」


 僕はジガン先輩の後を追っていくと、横にある木の後ろにゴブリンがいるのを見つけた。


「ジガン先輩ここにゴブリンが!」


 他の音に僕の声が打ち消されてしまって届かない。


 僕は闇の短剣を手に持ち、ゴブリンに走って近づいていく。


「くらえ!」


 短剣を突きつけようとした瞬間、僕の目に入ってきた情景は、泣いている子供とその子供をかばう親の恐怖する顔だった。


 それを見て僕は静止してしまった。

 魔物を前にしているというのに油断してしまったのだ。


 罠だったかもしれない...なんて思いとっさに後ろへ下がったが、怯えるゴブリンを見た感じその心配は要らなかったかもしれない。


「どうして攻撃を、やめてくれたの...」


 ゴブリンが日本語を喋ったのには驚いた。


「人間の言葉を...!こ、子供を命懸けで守ろうとする姿を見たら、できなかった」


「人間にも私たちの気持ちが分かる人もいるのね

 でも、私たちの村をどうして襲ったりするのよ

 私たちはただ平和に暮らしたかっただけなのに」


 こんなの、人間と大差ないじゃないか...平和を望んでいるのはゴブリンも同じだったのに、偏見というやつのせいか。


「娘にはもっと良くしてあげたかった」


 その言葉を聞いて、僕は胸が苦しくなった。

 もしこの村のゴブリン全員が同じような気持ちなのだとしたら、どんだけ恐ろしいことをしているのだろうか、考えたくもない。


 僕にはもう闘志なんて消えていた。


 僕がここに来た理由は、みんなを守ることを柚美と約束したからであり、たとえ魔物であろうと無害の者を殺すことなんてできる訳がない。


「僕があなたたちを、」

 守ります。そう言おうしたときには、2人のゴブリンは死体と化していた。


「ユーマ大丈夫だったか?

 ほら次行くぞ」


 一瞬の出来事すぎて何が起こったのか理解に時間がかかった。

 気づいたらゴブリンの首が飛び、全身が燃え尽きていった。そしてジガン先輩が来た。


 今、僕の周りには熱風が吹き荒れている。



 つづく

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