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6話 危険人物?

 成程、大体分かった。


 途中晩飯も挟みながらのおよそ3時間にも渡った尋問の結果、


・この女の名前はサヤカ。年齢は16歳

・俺が朝方通った場所の近くにこの女の村があり、そこでたまたま俺を見つけた

・ここら近辺を通る人間は珍しく、気になって俺の後をつけた

・移動中の身のこなしや狩りの腕を見て惚れた

・結婚して!


 ということが判明した。


 麻酔銃で俺を眠らせようとしたのも、眠らせてそのまま村に持って帰ろうとしたようだ。


 この女、お持ち帰りの仕方がワイルドすぎて怖い。


「いやいや強引を通り超して犯罪だろ……」


「……どうやって話し掛ければいいか、分かんなかった……」


 コミュ障すぎっ! 話し掛けられなくて最終的に麻酔銃持ち出してくるとか完全に危ない人である。俺の中でこいつの警戒度が跳ね上がった。


「だからって拉致はダメだろ……。まぁサヤカ、お前の言い分は大体分かった。それを受けての俺の返答だが……」


「ドキドキ……」


 自分でドキドキって言うなよ……。ちょっと可愛いって思っちゃったじゃねーか。危険人物なのに。


「当然お前と結婚はしない! ただお前の村には行ってみたい! だから案内してくれ」


「がーん……」


「いや当たり前だろ? こんな出会ったばっかの奴に求婚されて承諾するわけがない。ディズニ〇じゃないんだから」


 デ〇ズニーの世界は凄いからな。出会った当日に恋に落ち結婚までしちゃう。シンデ〇ラなんて正にそれだ。国の王子としてその妻選びは中々問題なんじゃないかと前世の俺は常々思っていた。


 勘違いして欲しくないのだが、俺はディズニーを全否定してるわけじゃない。むしろディ〇ニーのどの作品もめちゃくちゃ好きでブルーレイだって沢山持ってたし、テーマパークにも年10は通ってたほどのオタクだった。当然プリンスやプリンセス達のお話だって大好きだったわけで……。


 だがそれでも現実の、それも自分の話ともなるとそんな博打のような結婚は絶対に無理と思わざるを得ない。


 そもそも俺はまだ2才児だぞ? 結婚なんてするわけがない! この世界の事も良く知らない内に、どこかの村や町に腰を据えるなんてこともしたくない。


「……?」


「あぁ気にしないでくれ。それよりお前の村に行くのは大丈夫そうか? まぁ無理って言われても強引に行くんだが」


「……もしかして、結婚は、親に挨拶してから……?」


「ちげーよ! 頭ん中お花畑かッ!!」


「じゃあ……、婿修行してから……?」


「何でお前の中では俺と結婚する前提で話が進んでるんだよ! 水が無くなったからそれを貰いたいのと、あと乗り物が買いたいんだ」


「残念……。分かった。でもその前に、桃には知っておいて欲しい事がある……」


 桃ってなんだよ! 俺のことか? 俺のことなのか?? 俺は突っ込まないからな! 


「知っておいて欲しい事って?」


「……これ」


 サヤカはそう言うと俺をつけていた時からずっと被っていたフードを下ろした。それまでフードに隠れていたサヤカの髪が露わになる。


 ――綺麗な黒髪だ。


 この髪と言い名前と言い顔と言い、こいつはマジで日本人にしか見えない。ジジイとババアも日本人っぽかったし、ここらの人種は日本人に近いタイプなのかも。


 そして、なんと驚くことに彼女のその美しい髪の上にはある物が付いていた。


 ケモ耳……。


 これはあれか? 獣人というやつか? 


 いやー、この世界にもいるとは聞いていたがこんなにも早く会えるとはな! 人口もかなり少ないと聞いていたからもっと会うのに苦労すると思ってたよ。


 それにしても何の獣人なんだろ? 狐かな?


 そしてさらに驚くことにいつの間にかサヤカの尻の後ろには見事な尻尾も生えていた!


「え、その尻尾どこに隠してたの?」


「無理やりズボンに押し込んでた……!」


「そうなんだ……。大変だったな」


 そんな強引な手段で隠せるものなのか!? いや俺が気付かなかったから隠せてたんだろうけど。


「んで、これが知っておいてほしかったことか?」


「うん、大丈夫だった……」


 何が大丈夫なんだろうか。意味が分からない。


「じゃあ村に案内してくれる?」


「もちろん。……あ、でももう暗い」


「あぁ、俺だってこんな夜中に移動しようなんて言わないよ。俺は睡眠時間を大事にする男だからな」


「わたしも、寝るの好き……」


「そうか、気が合うな。じゃあ俺はこっちで寝るから。おやすみ~」


 明日は村へ案内してもらうことだし、早く寝ちまおう。


 サヤカが寝袋とかを持っているようには見えないが、それはそっちの準備が甘かっただけのこと。女だからと言って俺は自分の寝袋を貸してあげるような紳士な真似はしない。


「うん、おやすみ……」




 普通、こうして野宿をする場合は寝る時、見張りを立てる必要がある。野生動物や夜盗に襲われることがあるからだ。


 しかし俺には目を閉じていても周囲の様子が細かに分かる気配察知という特技がある。これは寝ていても常時発動しているため、わざわざ夜起きて見張りをする必要が無い。


 だからこうやって危険な森の中でも安心してぐっすりと眠れる…………。


 Zzzzzzzzz...

 


 ……ん? 何かが近付いて来る……? 

 あぁ、なんだサヤカか。じゃあ起きなくていっか……。


 Zzzzzzzzz...


 


 朝、目が覚めたら、俺のお腹を枕にしてサヤカが気持ちよさそうに寝ていた。

 

 なんでーーー!!!!?



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