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8話 村にやってきた

 朝から歩き続けて夕方になり、ようやくサヤカの住んでいる村に到着した。


「へぇ、ここがお前の村かー。……なんかちっちゃいな」


「うん、200人くらいしか人いないし……」


 まぁ村って言うくらいだから小さくて当然か。


 村にある建物は木造建築のログハウスみたいな建物ばかりで、2階建ての建物は見当たらない。どれも建ててから随分年季が入っているのか古臭い見た目をしている。


 THE貧乏! って感じの村だな。


 そして何故か女の姿ばかりが目に付く。……男は皆、狩りか畑仕事にでも行ってるのか?


「わたしの家に泊めてあげる……」


 そう言ってサヤカはずんずんと進んでいく。


 ラッキー。いい加減寝袋生活に疲れてきてたんだよね。ベッドなのか布団なのかは分からないが、今日は大分質の良い睡眠がとれそうだ。


 そして自宅に向かっているであろうサヤカの後ろを歩いていると、前から2人組の女がやって来た。


「お、サヤじゃーん。帰って来たんだ! どこ行ってたの? あんたのパパすっごい心配してたよ?」


「そうそう、昨日の夜中に娘を知らないかって電話かかってきたもん」


 どうやらサヤカの知り合いのようだ。親しげに話し掛けてきている。


 それにしても父親が心配? まさかこいつ何も言わずに俺をストーキングしてきたのか?


「む。あのヒゲは過保護すぎる……」


「あたしはサヤなら絶対大丈夫ですよって言ったんだけどね?」


「そうそう、サヤに傷を付けれる奴なんているわけないしね!」


 え、こいつそんなに強いの!? 確かに尾行の実力は半端なかったけど、まさか戦闘力もあるとは。昨日、戦いにならなくて良かった。


「ところでさ、サヤの後ろにいる子誰?」 


「あ、それうちも気になってた! 君、可愛いね。6才くらい?」


「この子は桃。わたしの夫……」


「「えぇぇぇぇぇええ!!?」」


 こいつ散々断ったのにまだそんなこと言ってんのか! まさか外堀から埋めようとしてる?


「違う違う。俺はただの旅人。この村には旅に必要な物を揃えるためにやって来ただけだ」


 年齢は教えない。ここで2才とか言ったら信じるにせよ信じないにせよ、絶対に面倒なことになる。


「な、なんだぁ。びっくりしたー」


「ホントホント。サヤの冗談ってたまに冗談に聞こえないんだよねー」


「……ホントなのに」


 いやホントじゃねーから! 




「ここがわたしの家……!」


 あの2人と別れた後もその子誰? と行く先々で聞かれまくるイベントがあり、ようやくサヤカの家に到着した。


 村が小さいから、知らない人がいれば皆すぐ気付くんだなぁ。


 さやかの家は周りの家と比べても何倍も大きかった。玄関の横には庭もあり、そこでは沢山の花と野菜が育てられている。もしかしてサヤカの家って金持ち?


 今この家にはサヤカの他に、サヤカの両親と姉が一緒に住んでいるらしい。


 そんなところにいきなり俺が泊まれるのかって聞いたら余裕って答えられた。本当に大丈夫なのか? 結構怪しい気がする。


 俺がそんな疑惑の目でサヤカを見ている事にも気付かず、サヤカは玄関の扉を開ける。


「ただいま……」


 すると奥の部屋の扉がガラッと勢いよく開き、


「おおっ、無事だったんだねマイドーター!!」


 髭面でガタイの良いおっさんが走って出てきた。どうやらサヤカの父親らしい。にしても暑苦しいなこのおっさん。


「1日家を出ただけで、その反応は、ウザい……」


 どうやら娘であるサヤカも同じことを思ったようだ。父親をウザいの一言で一刀両断する。


 おっさんはその言葉にとてつもないショックを受けたようだ。走ってきた勢いそのままに、俺達の目の前で膝と手を付き、orz←こんな状態になってしまっている。……哀れだ。


 そしてこのおっさんが出てきた部屋から遅れて2人の女性が出てきた。


 これが母親と姉だろう。母親も姉も身長が高く、サヤカと同じくらい綺麗な顔をしている。目付きの悪さはあんまり似てないな。そっちは父親似か?


「お帰りなさいサヤちゃん。お風呂湧いてるわよ? 入るでしょ?」


「うん、入る……」


「サヤ、今回はずいぶん遠くまで修行しに行ったのね。ヒゲがずっとソワソワして大変だったんだよ?」


「良い修行になった……」


 こいつ修行しに森の中に入ってたのか。それにしても良い修行になっただと? お前がしてたのは修行じゃなくて俺へのストーキングだろうが!


「それでサヤちゃん。その子はどうしたの?」


 さっきから玄関にずっと突っ立てた俺に、ようやくサヤカの母親が気付いてくれた。


 するとサヤカはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに大きく頷いて、


「名前は桃。わたしのおっt――」


「ちょっと待てい!」


 こいつまた俺を夫として紹介するつもりだったな? だが残念だったな。ここまでの道中散々夫として紹介されて、その度に否定してきたんだ。今回はそれを阻止して見せる! 流石に家族にまで夫と紹介されるのは、結婚する気なんてさらさら無い俺からしたらかなり困る。


「え、今なんて?」


「お母さん、今、サヤ夫って言わなかった?」


「違う違う。今のは、おっと! そうだったね。それじゃあ早速本人に自己紹介してもらおうかな? カモーン桃っ! て言おうとしていたんですよ、彼女は。な!? そうだよな!??」


「いやサヤそんなこと言わないし……」


「うーん、私もサヤちゃんはそんなふぁんきいなこと言わないと思うんだけどなぁ」


 く、流石家族。サヤカの口下手振りも当たり前のように知っているか。


「おいサヤカ、俺の話に合わせろ。後で結婚する以外で言う事聞いてやるから(小声)」


「分かった……(小声)」


「ね? サヤはそんなこと言わないよね?」


「実は……、まさにそれを言おうと思ってた……!」


「「え!?」」


「い、いつもの笑えない冗談でしょサヤ?」


「……笑えないとはヒドい。でも、これはホント……」


「そ、そんな……。ママ、サヤちゃんにそんなふぁんきいな一面があったなんて知らなかった……」


「サヤ、あんた実は結構なギャルだったのね……」


 なんか俺の話に合わせてもらったら、2人が勝手にサヤカの裏の顔を想像して衝撃を受けている。


 サヤカはそんな2人と未だ俺達の目の前でorz状態の父親を見て話が進まないと思ったのか、


「取り敢えず、家に入っていい……?」


 と尋ねる。


「そ、そうね。さあ、あがってあがって? お話は部屋でしましょう?」


 するとまだ微妙にショックから抜けていない様子の母親からお許しが出る。


 ふぅ、まだ自己紹介もしてないが、これでようやく一息つけるぜ。


「あ、桃、今日家に泊めたい。できれば、私の部屋に。いいよね……?」


 サヤカが何でもないことみたいにぽろっとそう言うと、母と姉の2人は同時に顔を見合わせ、叫んだ。


「さ、サヤちゃんが――」


「さ、サヤが――」


「「男連れ込んできたーッ!!!!」」 

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