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TS魔王の『モン娘』ハーレム綺譚  作者: 九條葉月
第二章

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8.白いアラクネ

 8.白いアラクネ。



 冒険者ギルドとの交渉はつつがなく終了し、とりあえず買い取れるだけの魔石を買い取ってもらうことにした。数としては持ってきた量の三分の一くらいだろうか?


 会計を待つ間にギーガリと雑談する。どうやら俺の話は王都に帰っていたカインから聞いていたらしい。


 と、ミフが(なぜか蒼い顔をしながら)重そうな革製の袋を持ってきてくれた。それを受け取ったギーガリが丁寧な仕草でテーブルの上に置く。


「今日の買い取り額ですが、金貨500枚。あとは大銀貨5枚、銀貨6枚。大きい硬貨だけでは不便でしょうから、おまけとして大銅貨50枚と銅貨を100枚付けておきます。今後とも末永いお取引をお願いします」


 この世界の貨幣価値はまだよく分かっていないが、ギーガリに色々な物価を尋ねてみたところ金貨1枚で前世の10万円くらいだと思う。


 今日だけで5,000万円ちょっとの売り上げか。倉庫の魔石の山がこれからは金貨に見えそうだ。


 金も手に入ったし、留守番のみんなにおみやげも買っていくか。

 さすがにジーン族全員分のおみやげは無理だが――いや、5,000万円もあるんだから大丈夫か?


 しかしドワンたちの給料分も残しておかなきゃいけないし、今回はジーン族全体へのおみやげを買っていくとするか。


「おっと、その前に」


 金貨を受け取りソファから立ち上がった俺だが、銀髪のまま応接室を出てしまってはせっかくのギーガリの裏工作が無意味になってしまう。


 智慧の一端(ソピア)を開いて確認。自身に染髪の魔法をかけてみる。ギーガリは金髪で登録すると言っていたから、金髪だな。


「ほぉ、見事なものじゃな」


 姫の褒め言葉に満足しつつアイテムボックスから手鏡を出して確認。うん、よし。ちゃんと金髪になっているな。


 魔力を常時消費して染髪を維持する形なので、たとえ水を被っても影響はないし、魔力を切ればすぐに元の銀髪に戻るそうだ。消費魔力の『1分で50』というのは多いか少ないか分からないが、自動回復で余裕でカバーできるから問題なし。


「…………」


「…………」


 なぜだか驚愕に目を見開くギーガリとミフだった。染髪の魔法とはそんなに珍しいものなのだろうか?



「――染髪の魔法は常時魔力を消費するからね。魔力の使用効率がとても悪いんだ。常人ならすぐに魔力が枯渇してしまう。そんな染髪の魔法をあっさりと実行して平気な顔をしているしまうキミに驚いているんだよ。全力疾走している最中に涼しい顔をしていると説明すれば分かり易いかな?」



 そんな解説をしてくれたのはいつの間にか室内にいた“元勇者”カイン。吸血鬼だから霧になって侵入したのかもしれない。


「驚かれてもなぁ。別に変な色というわけじゃないんだろう?」


「あぁ、とても自然な金髪だよ」


「じゃあ、いいか。……とりあえず皆のおみやげを買うついでに観光もしていこうと思うんだが」


「それなら私が案内しようじゃないか。ここは母国みたいなものだからね。安心して任せて欲しい。……それに、この前迷惑をかけたお礼もしたいことだし」


 手合わせ中に聖剣を持ち出したことか、それともリハビリのために何日か滞在したことか……。どれも大した『迷惑』ではなかったのだが、後々に引きずっても面倒くさいし、ここは大人しくお礼を受け入れるべきだろう。


「じゃ、よろしく頼むわ」


 そういうことになった。





 とりあえず一番大きな通りを歩いてみることになったが、思ったより清潔だなというのが正直な感想だった。


「ここは王都で、しかも正門から王城へと続く道だからね。見栄も兼ねて綺麗に保たれているのさ。この清潔さがこの国の基準と思われるとちょっと困ってしまうかな」


 苦笑しながらそんな解説をしてくれるカインだった。


 露天も多く出ているので覗いてみるが、リンゴやバナナといった前世の果物っぽいものも数多く置かれていた。


 試しに一つ買ってみたが、うん、やはり前世の方が甘い。けれど『昔ながらの味』という意味ではこっちの方が美味しいのかもしれない。


 もちろん異世界なので見たこともない果物も数多く販売されている。妙に尖っていたり毒々しい色だったりと。試してみたいような、でも見知らぬ街で腹を壊したりしたら大変だしなー……。


「いや、おぬしは自動回復(イルズィオン)持ちなのじゃから平気じゃろう。腐っていようが何だろうが腹を下すことはあるまいて」


「…………」


 そう言われると食いたくなくなる俺だった。普通に大丈夫でも『ほれ見ろ』と言われそうだしな。


 話題を逸らすためにも辺りを見渡す俺。と、気づいたことがあった。


「亜人がいないんだな。奴隷制があるんだから、もっと町中にいるものだと思っていたんだが」


 目に付くのは普通の人間ばかりで、亜人らしい存在はいないように思える。


「あぁ、まぁここは大通りだしね。わざわざ亜人を連れてくることもないのだろうさ。王都でも店の裏側だとか、工事現場であれば亜人を見ることはできるよ。探してみるかい?」


「見世物じゃねぇんだからさぁ……」


「そう、その通りだね。ただ、残念ながらこの国には見世物小屋があるし、珍しい亜人は見世物にされている」


「…………」


 あまり愉快な話じゃないな。


 俺の不機嫌さを察したのかカインが少し慌ててフォロ―する。


「い、いや、現国王の治世になってから亜人奴隷の数は減っているんだよ。奴隷取引の際に領主へ払う税金が新設されたし、『治安維持』という名目で奴隷市場の開催日が減らされたからね」


 説明してくれるカインの服の襟を姫がガシッと掴んだ。そのまま少し離れた場所へと移動し、ひそひそ話をはじめる。


「おい、カイン。擁護してどうするのじゃ? 『こんな亜人奴隷ばかりの国は滅ぼしてしまおう』と我が嫁殿に思ってもらわなければならんのじゃぞ?」


 声を潜めているが丸聞こえである。わざとやっているのか天然なのか判断が難しいところ。


 あと、亜人奴隷がいるくらいで滅ぼさないから。そりゃあ俺の感覚からすれば奴隷制度は『悪』だがな、奴隷が合法の国に出張ってまで自分の価値観を押しつける気はない。


 姫に詰め寄られたカインが冷や汗を流している。


「い、いや、こちらにも準備があってだね。ラーク君だと一日で滅ぼしかねないだろう? その場合不幸になるのは亜人奴隷たちだと私を諭したのは君たちじゃないか」


 カインは俺を何だと思っているのだろうか? 国を一日で滅ぼしかねないとかどこの魔王――あ、魔王だったな俺。いやしかし魔王でも一日で滅ぼすのは無理だろう。


 もちろん俺の心のツッコミが届くわけがないので、二人は俺に聞こえてしまう程度の声量で悪巧みのすり合わせ(?)をしていた。


 そんな面倒くさいことをしなくても、直接相談してくれればある程度のお願いは聞くんだがなぁ。姫は嫁なんだし。


 ……俺、もしかしてケチな性格と思われているんだろうか?


 嫁からの評価がひじょーに気になりだした俺。現実逃避を兼ねて視線を漂わせていると――、ふと、視界の端に『白』が映った。


 純白。

 真っ白な蜘蛛。


 正確には蜘蛛の下半身と、人の上半身。

 本来なら蜘蛛の頭部かあるべきはずの場所から、人の腰部分が生えている。


 いわゆるアラクネというものだろうか?


 しかも、白いからアルビノか?

 異世界であるこの世界の遺伝事情がどうなっているかは知らないが、人間や鹿、馬などの普通の動物もいるのだからアルビノが発生しても不思議じゃないだろう。


 蜘蛛の部分は白く長い毛で覆われており、かなりフカフカしていそう。昆虫らしさは薄くかなり美しい――のだが、右足が一本千切れてしまっていた。


 そして上半身。

 肌と髪はアルビノらしい白さ。瞳は淡い青色。


 アルビノと言えば赤い瞳というイメージがあるが、実際は青とか茶色の瞳もいるらしい。とは、中二病だった前世の師匠の談。


 あと、この世界では赤い瞳 = “死神の(バロール)”らしいから、それも影響しているのかもしれない。


 顔は幻想的なまでに整っているが、その視線の鋭さは殺気すら感じさせる。

 まぁ、奴隷だろうから当たり前か。


 ……そう。奴隷。


 彼女の首には鉄製の首輪が付けられていて。首輪から伸びた鎖は商人らしき男の右手に繋がれていた。


 奴隷。

 亜人奴隷。


「…………」


 初めて見たその存在を前にして。俺の足は考えるよりも前に動き出していた。








 ギーガリとミフが驚いていたのは金髪 = エリザベートそのままの姿になったからです。



 ギーガリ

「王都にエリザベート様が現れれば気づく者もいるだろう。もしかしたら王太子の耳にも入るかもしれない。魔王陛下は一体どんな策があってそのような真似を……」


 ラーク

(言えない……今の自分が金髪になるとエリザそっくりになることを忘れていたなんて言えない……)



次回、7月2日更新予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 傍から見ると追放された人が王都に無断侵入して亜人奴隷かっさらう絵面に見えますねぇ!
[良い点] まぁ、魔王ですから、難しい染髪魔法も、国を一日で滅ぼすのも造作も無いでしょうw しかしラークさん、戦闘以外の所には中々抜けていますね。 でも苦しんでいる娘をほっと行けないのは、衝動的過ぎだ…
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