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TS魔王の『モン娘』ハーレム綺譚  作者: 九條葉月
第二章

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14.ジーン族との契約

旧タイトル:お城で優雅なスローライフ!(仮)


 14.ジーン族との契約。




 とある日。

 俺は朝からエリザとリュアによって身だしなみを整えられていた。もちろんというか何というか、身体は女性なので女物のドレスだ。


 なぜだかエリザが悔しそうな顔をしている。


「くっ、わたくしがするお手入れ以外は何もしていないはずですのに、どうしてラークの肌はこんなにもスベスベぷるんぷるんなのかしら!?」


「そりゃあ自動回復(イルズィオン)のスキル持ちだからね。お肌の調子も常に最善の状態に保たれるのさ」


「羨ましいを通り越して恨めしいですわ!」


「というかエリザだって幽霊なんだから、お手入れなんてしなくても大丈夫なはずだよ? なんだったらお風呂にも入らなくていいくらいだ」


「そんなこと、わたくしの乙女心が許しませんわ!」


「乙女心(笑)」


「なぜ笑われましたの!?」


 仲良く会話しながら俺の髪を手入れしたり化粧をするエリザとリュア。正直、朝ご飯が終わってすぐエリザの部屋に拉致されたので状況が理解できていない。


「え? 何で俺は身だしなみを整えられているんだ? 客でも来るのか?」


「客……うん、客と言えば客なのかな?」


「ラークは私たちの指示に従っていれば大丈夫ですわ」


 答えになってねー。


 まぁ、エリザとリュアは俺の不利益になるようなことはしないだろうし、ここは信じて任せても……大丈夫か? 大丈夫か俺? 不利益にはならなくても面倒くさいことには巻き込まれそうじゃないか?


 よし、詳しい話を聞こう。

 そんな俺の決断は遅きに失したようだ。


「――お姉ちゃん。ゲニさんがやってきました」


 部屋に入ってきたタロンがそんなことを教えてくれた。ゲニはジーン族の族長で、ケウの父親。つまりは俺の義父なので頭が上がらない――はずなのだが、ゲニはまるで俺のことを主君のように扱うんだよなぁ。


 そんなゲニがわざわざ居館を訪ねてきて、しかもエリザとリュアが俺の身だしなみを整えているときた。何もない方がビックリの展開だ。


 何を企んでいるんだ?

 俺が疑惑の目でエリザとリュアの方を見ると――リュアが、わなわなと震えていた。信じられないものでも見たかのように。


 そして。


「――キャラ被りだ!?」


 叫んでいた。


 またかよ。


 何のことかというと、たぶん、タロンがメイド服を着ているから。もちろんタロンの腕はデカいので通常のものと比べると服の裾部分がかなり巨大化しているが、それでも一目で『メイド服』と分かる衣装だ。


 うん、俺の趣味。


 を、知ったタロンが欲しがり、エルフのエイルが作ってくれた一品だ。ゆえにこそ俺がメイド服着用を強制したわけではないことをここに宣言しておこう。

 ……メイドなタロンを見て喜んだのは事実だがな。


「キャラ被りだ!」


 俺からの反応がなかったせいか、リュアがタロンを指差しつつ同じことを繰り返した。


 キャラ被りと言うがな、リュアはメイドらしい仕事を何もしていないだろう? こうして来客対応をしてくれているタロンの方がよほどメイドらしいことをしている。コスプレとしてなら認めるが、メイドとしては絶対に認めませぬ。


「やだ、ラークって意外とダメ人間」


 毎日二日酔いしているダメ人間に言われたくないわ。





 尋ねてきたゲニはなぜか居館に入ってこず、俺が庭で出迎えることになった。


 嫌な予感がする。

 メッチャする。


 俺が連れて行かれそうになっている庭の方から、ものすごい数の気配がしているのだ。それこそ数百人レベルの。居館の周りには水堀と土塁があるので、たぶんその外から。


「……帰っていい?」


「ラークの家はここだろう?」


 無駄な抵抗はリュアにばっさりと切り捨てられた。


 玄関から外に出て、土塁の内側に後付けした階段を上る。この階段は人馬族でも上り下りしやすいよう大きめに作ったので、俺とエリザが並んで上がることも可能だ。


 可能なのだが、だからといって並んで上る必要はない。


 ないはずなのに、エリザは当然のように俺の隣を歩いている。


 まぁ嫁なので隣にいることも自然と言えば自然なのだが、威風堂々とした彼女の佇まいはお嫁さんといった風ではなく、そう、まるで“王妃”のようだった。


 リュアとタロンは俺のすぐ後ろをついてきている。本物のメイドさんであるかのように。


 世界樹と“人造物の支配者(エンペラー・ゴーレム)”にメイドをさせているとか、もしかして、端から見たらすごい状況なんじゃないだろうか?


 そして。

 土塁の頂上に上がる直前で――



『――刮目せよ! 彼女(・・)こそが今代の魔王である!』



 土塁の上からそんな姫の声がして、直後、地面が揺れるほどの大歓声が響き渡った。


 また女扱いかよ。……じゃなくて。


「いやいや、何が起こっているんだ?」


 思わず階段の途中で立ち止まった俺が頬を引きつらせると、エリザ、タロン、リュアが可愛らしく小首をかしげた。


「魔王の誕生、かしら?」


「新たなる歴史の始まり、でしょうかね?」


「悪乗りの結果、かな?」


 おい最後。

 世界樹の悪乗りとかマジで笑えないんだが。


 土塁の上から姫が『早く来い』とばかりに手招きしている。


 帰りたい。

 ほんとに帰りたい。

 帰ってベッドに入り、すべてを忘れて眠ってしまいたい。


「ラークは逃げるのかな?」


「…………」


 リュアのそんな言葉を受けて、土塁の頂上への歩みを再開させた俺である。


「単純ですわ」


「わ、分かり易くて素敵だと思いますよ。えぇ、素敵なお姉ちゃんだと思います」


 エリザの呆れ声とタロンの苦笑混じりのフォローが胸に突き刺さる中、俺は土塁の頂上に立った。


 途端。

 大歓声が俺に襲いかかってきた。


 目の前にいるのはジーン族、おそらく500人あまり。

 だが、人馬族の下半身は馬なので1人で2人分以上のスペースを取る。結果、1,000人を越えるんじゃないかという『群衆』が俺に手を振ったり指笛を鳴らしたりしていた。


 なんだこれ?


 心の中が疑問符に支配されつつも、笑顔で手を振り返してしまう俺。もしかしたらリュアの言うとおり『ヘタレなぁなぁ流され系』なのかもしれない。


「静粛に! 魔王陛下からのお言葉である!」


 姫の言葉にジーン族の歓声がぴたりと止んだ。いやちょっと待って。急に静まりかえられても困る。いきなり小粋な挨拶をできるような宴会スキルは習得していないのだ。


 俺が心底困っていると、隣に立っていたエリザが小さな声を発した。


「ジーン族は我が家族である、ですわ」


「…………」


 その言葉を繰り返せばいいのだろう。

 エリザが俺の口の前に小さな魔方陣を展開した。たぶん拡声の魔術。


 俺はその魔方陣に向かって声を発した。



『――ジーン族は我が“家族”である』



 耳が壊れたかと思った。

 それだけの歓喜の声だった。


 あれ? そんなおかしいこと言ってないよな? ケウとスレイは俺の嫁だし、そんな嫁の実家(?)であるジーン族は家族も同じ。うん、こんな大歓声を浴びせられるような発言じゃなかった……はず。


 俺が笑顔を固めていると、土塁の上にジーン族族長・ゲニと、ケウ、スレイ、そしてニィルが上ってきた。なにやらいかにも重要儀式で着用しそうな衣装を身に纏っている。どことなく前世のアイヌ民族衣装っぽい。


 ゲニたちは俺から1mほどの場所で立ち止まり、膝を折り、腕を組むという見慣れぬ動作をした。


「人馬族式の最敬礼だよ」


 リュアの説明に苦笑が深まる。俺、最敬礼をされるような存在じゃないんだが。


 俺とゲニたちの間に姫が立った。その手にはD.P.で交換しておいた晩酌用の御神酒が握られている。


 リュアとタロンが、俺とゲニたちに杯を配っていく。


 そして、姫が手ずから酒を注いでくれた。まずは俺、そしてゲニ、ケウ、スレイ、ニィルといった順番に。


 姫に促されるまま、その酒を同時に飲み干した俺たちである。


「神(姫)が手にし、神が直接配った酒。それを飲み交わしたのだからこれ以上ないほどの“契約”だね」


 リュアがそんなことを口走っていた。“固めの杯”みたいなものだろうか?

 というか契約って何のこと――



「――今ここに誓いを」



 ゲニが静かに、されど力強く宣言する。


「ジーン族451人、魔王ウラド・ラーク殿と苦楽を共にいたしましょう。願わくば、同じ時、同じ場所にて死なん栄誉を」


 いや死ななくていいから。俺が死んでも好き勝手に生きてくれ。


 続いてケウが一歩前に出た。


「まだ成人していない子供73人に関しては、成人後の契約をお願いしたく」


 契約は大人になってから。当然の話だな。……当然のように“契約”の話になっているのは不安でしょうがないが。なに? なんの契約を結んだの俺?


「大丈夫ですわ。税率1割。それを兵役で免除という“契約”を結んだだけですもの」


 エリザの説明に首をかしげるしかない俺。それにしては仰々しすぎないか?


「ラークは何も心配しなくてもいいんですの。ただ、これからも、あなたらしく生きてくだされば」


 簡単なような、難しいような……。俺らしくってどういう生き方なんだろうな?


 ま、悩んでもしょうがないか。俺は俺としてしか生きられないのだから。

 もしも間違った道を進みそうになったら、その時は嫁たちが注意してくれるだろう。


 …………。


 一対一でも厳しいのに、嫁たちが結託したら俺でもボコられるからな。逆らわないよう気をつけよう。





 そうして。

 俺は“魔王”としての第一歩を踏み出したのだった。

 まったく自覚のないままに。




タイトル変更記念(?)で、本日もう一話投稿します。

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