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TS魔王の『モン娘』ハーレム綺譚  作者: 九條葉月
第二章

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13.人馬族レース


 13.人馬族レース。



「――さぁ始まりました! 第一回人馬族レース! 司会はもちろんこの私、七色の声を持つ女! ウラド・リュアがお送りいたします!」


 うぉおおおおお! と、いう大歓声が“ 神に見放された土地(アゥフ・ギーブン)”にこだました。


 ……なんだこれ?


 俺の記憶が確かなら、ケウとスレイの個人的な競争だったはずなんだがな。いつの間にやらジーン族の全員が観戦する一大イベントになろうとしていた。


 コースはリュアがロープ代わりに蔦を張った楕円形。見た感じ学校の校庭にあるくらいの大きさか。“ 神に見放された土地(アゥフ・ギーブン)”の地面は固いので整地する必要はないだろう。


 で、そんなコースの周りに観客としてジーン族の全員、500人ほどが集まっていると。仕事とかはいいのかなぁとは思うのだが、まぁ、娯楽は大切だからな。羽目を外しすぎなければいいんじゃないだろうか。


 ちなみに。

 現在周囲の魔物などへの警戒はタロンが作成したゴーレムがやってくれている。正直、ジーン族の負担を考えればこれからもゴーレムに任せた方がいいんじゃ無いかと思う。


 ……あ、でもそれだとジーン族から税金を取らなきゃいけなくなるか。


 俺がそんな思考をしている間にリュアは(無駄に豪華な声優の声真似をしながら)司会進行をしていた。


「さぁ! ご存じの通り今回のレースの勝者にはラークとの『二人っきりデート権♪』が送られます!」


 え? 何それ聞いていないんだけど?

 というか毎日の散歩がデートみたいなものなんだから、別に今さらデート権なんて……。


 うぉおおおお! と、ジーン族の皆が雄叫びを上げ、ケウとスレイはやる気満々に足で地面を蹴ったり肩を回したりしている。


 いやいや、なんでそんなに気合い十分なの? 毎日デートしているよね?



「――いえ、いつものお散歩は他の人もいますし。二人きりのデート権となればやる気満々になってしまうものなのでは?」



 そんな解説をしてくれたのはニィル。


「……なんか、競争で終わらない気がするのは気のせいか?」


「あ~、負けそうになったら物理攻撃で邪魔しても不思議じゃないですよね。特にケウ様が」


「あいつ負けず嫌いだからなぁ。そしてあの様子だとスレイも応戦しそうだし……。しかし、ジーン族のみんなはなんであんなにノリノリなんだ?」


「単純にお祭りごとと勝負事が好きなので。しかも若手の中で実力が抜きん出ているケウ様とスレイお姉様との対決となればこう(・・)もなるでしょう。最近はスレイお姉様が勝負を避けるようになっていましたし」


「う~む……」


 ジーン族の様子を見て、俺は考えた。


「……よし、ニィル。お前さんも参加してくれや」


「は?」


「お~い、リュアー。ニィルも飛び入り参加でー」


「いや、なぜ私が――」


 ニィルの発言はリュアの大声にかき消された。


「おおっとここで乱入者だ! 飛び入り参加者はなんとスレイの実の妹! ニィル! 仲が良かったはずの姉妹が男をめぐって対立してしまうとは! この悲劇の結末は最期まで見届けるしかない!」


 わぁああぁああ! とジーン族の皆がノリよく大歓声を上げていた。


「ノリがいいですね皆さん!? そしてなぜ私!? デートしたいなんて一言も口にしていませんよね!? 知らぬ間にラーク様ルートに入っていましたか私!?」


 全力のツッコミをするニィルだった。

 なんでニィルが『ルートに入る』なんて言葉を知っているんだろう? たぶんこの世界にそんな単語はないよな?


 ……リュアから教えられたかな?


 ならしょうがないなぁーと俺が考えていると、リュアが蔦でニィルを拘束し、スタート地点まで連行していった。ずるずると。


 頑張れニィル。埋め合わせはあとでするから。





 さて、レース開始だ。

 リュアが作ったコースは人馬族には短いみたいなので、3周での勝負。直線のスピードはもちろんのこと、カーブの技術や『足をためる』ことも重要になってくるだろう。


 ……ケウとスレイの様子からして、最初から全速での勝負になりそうだがな。

 逆にニィルは明らかにやる気なし……というか他の二人に遠慮している風なので無気力試合的なものになるかもしれない。


 ま、ニィルの場合は走ってくれるだけでいいので問題はなし。


 D.P.で交換した銅鑼の音と共にスタート。予想通りというか何というか、抜け出したのはケウとスレイだった。ニィルは駆け足程度の速度。


「ほぉ」


 ケウとスレイがいい勝負をしていた。ケウは履き慣れていない靴だというのにな。ジーン族一番の戦士という称号は伊達じゃないのかもしれない。


 二人は常に全力、抜きつ抜かれつの名勝負を繰り広げていたが、二周目に入ったところで――案の定、ケウが動いた。


「おっと手が滑った!」


 真横を走るスレイに向けての、容赦ない右ストレート。どんな滑り方をすればそうなるねん。


 もちろん、長い付き合いであるスレイはケウの行動を読んでいた。

 左手でケウの正拳突きを防御。してからの、カウンター気味の右フック。


「ぐほぁ!?」


 美少女が上げてはいけない声を漏らしながらケウが悶絶する。自業自得だ。


 ケウは大きく体勢を崩したのでこのままスレイが勝つかなぁと思ったのだが、ケウはしつこい――じゃなかった、諦めが悪かった。抜き去ろうとするスレイの尻尾を掴み、思い切り引っ張ったのだ。


「痛っ!?」


 痛みによる反射なのか、あるいは報復か。スレイはケウの頭を思い切り後ろ蹴りした。うん、後ろ足4本で。スレイの筋力なら首が吹き飛んでも不思議じゃないよなぁ。よくもまぁケウは死ななかったものだ。

 なにやら魔方陣が展開していたので防御系の魔法を使ったのだろう。


 しかしそれでも威力は殺しきれなかったようでケウは鼻血を吹き出した。が、気にした様子もなくスレイに踏みつけ攻撃。尻尾を掴まれたままだったスレイは逃げることもできずにその攻撃を食らい――


 はい、本格的な戦いになってきました。


 見学していたジーン族の皆さんもドン引きである。そりゃあ競馬を見に来たら騎手が異種格闘技戦を始めたみたいなものだからな。いくらノリが良かろうが付いていけないだろう。


 これはもう無理だな。収拾つかないし。


 引きつった笑みを浮かべながら俺はD.P.でホイッスルを交換し、思い切り吹き鳴らした。


「はい、ケウとスレイ。反則負け。よって勝者はニィル!」


 ニィルを出したのは『勝者無し』だとまたケウとスレイが争いはじめるかもしれないし、集まったジーン族が納得しないかもしれなかったから。


 ただまぁ、ホイッスル後もケウとスレイはガチバトルを継続しているし、ジーン族の皆はそんな二人にドン引きしていたのでニィルを出す必要はなかったかもしれないな。


 しかし約束は約束。一日デート権はニィルのものとなった。


 まぁニィルならデート権を使うこともないだろう――え? 使うの? ……あー、じゃあまた後日、後日な。




 もちろん。

 レース中にガチバトルを始めたケウとスレイにはお説教した。当然ケウを重点的に。スレイに関しては仲間の頭を後ろ蹴りしてはいけませんとな。



次回、16日更新予定です。

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