12.人馬族の靴。その2。
12.人馬族の靴。その2。
蹄鉄は人馬族から譲り受け。
ドワンが魔物から接着剤の『ニカワ』を製作。
靴部分の素材はエイルの希望に最も近いものをD.P.で交換。エイルは二日ほどでブーツのような、人馬族の足にフィットする靴を作ってくれた。
ニカワで靴と蹄鉄をくっつけ、ニカワが乾くのを待ってから実験開始。協力してもらったのはケウだ。
スレイだと足が8本だからな。作る靴の数も倍になってしまう。試作の段階なのだからケウの方がいいだろう。
人馬族、というか馬の足は結構複雑な形をしているのだが、さすがエイルはぴったりの形の靴を作ってくれた。試しに履いたケウも満足そうだ。
「重さは普通の馬蹄とほとんど変わりませんね。すべてが鉄のものと比べると軽いですし、何より痛くないです」
鉄の靴なんていかにも痛そうだものな。
ケウは足慣らしとばかりに歩いたり軽く駆けたりした後、ビシッとスレイを指差した。人馬族に関連したことだからスレイとニィルにも意見を聞くために見学してもらっていたのだ。
「では、勝負ですスレイ!」
「……なんで?」
スレイの呟きはこの場にいた全員(ケウ除く)の気持ちを代弁していた。いやなんで靴の試験から勝負に繋がるんだ?
「靴の性能を確かめるなら実戦で使ってこそ!」
なにやらもっともらしいことを言っているが、その目は『今日こそ決着を付ける!』と本音を語っていた。俺、人の心なんて読めないはずなんだが。
うん、試作段階の靴で実戦(形式の試合)は危ないので禁止な。
「いやしかし、性能試験なのですから限界を試すべきなのでは?」
ケウがぐむむ~とした顔で反論していると、地面から『にゅっ』とリュアが生えてきた。
「ケウ、察してあげないと。ラークは大切なお嫁さんが万が一にもケガをする場面を見たくないのさ」
「そ、そうでしたか! ラーク殿からの愛に気づかぬとは、このケウ、一生の不覚!」
なにやら話が無駄に壮大になっていた。まぁ嫁さんにケガして欲しくないという点は間違っていないので反論したりはしないが。
「…………」
と、スレイがじーっと俺を見つめていた。いや眼帯があるから見つめているかは分からないはずなんだが、こちらへの確かな視線を感じてしまった。
「ケウだけ心配してもらってズルい」
リュアがスレイの本音(?)を解説してくれた。いやスレイさんよ、お前まで色ボケするとツッコミ役が足りなくなるんだが。
「ケウの言葉にも一理あります。ここはケガをしにくく、かつ靴の性能を確かめやすい方法で勝負をするべきなのでは? たとえば、そう、競争とか」
真っ先に競争が出てくるのは下半身が馬だからだろうか?
スレイの提案にケウが不敵に口元をゆがめた。
「ふ、なるほどいいでしょう。ラーク殿の愛が詰まったこの靴で、見事に打ち倒してあげましょう!」
いや愛なんて詰めてないから。工作好きな少年心とかなら詰まっているかもしれんけど。
あと競争くらいならいいが打ち倒すのは駄目な。
内心でそんなツッコミをしていると今度はスレイが不敵に笑う。
「ふ、ラーク殿の愛が詰まった靴、はたしてケウが扱いきれるでしょうか?」
「…………」
「…………」
睨み合うケウとスレイ。いやスレイは眼帯しているから以下略。
「……競争はいいが、ケガをさせないようにな」
前もって注意しておく俺だった。
次回、11日更新予定です。




