4.神殿建設
4.神殿建設。
『ラーク・ハーレム』というものがある。
あるらしい。
いつの間にかできていた。
手を出した以上責任は取る。たとえあちらから出してきたとしても、だ。
しかし、そのネーミングはどうにかならなかったのだろうか? ダサいし、そのまんま過ぎる。
ちなみに命名はリュアである。
メンバーは出会った順にエリザ、リュア、ケウ、姫、スレイの5人。まぁいわゆる“深い仲”になった人たちだ。
その5人と俺は最初に作った居館に住んでいて、必然的に生活リズムが似通ったものになる。一緒にご飯を食べたり、のんびりしたり、風呂の時間は――すでに諦めた。お風呂も一緒に入っている。夜に関しては黙秘権。
あ、あと居館に住んでいるという意味では『人造物の支配者?』も仲間だな。部屋を用意する必要はないらしいが、野外に吹きさらしというのは気が引けるから俺の部屋の棚を定位置にしている。
まぁさすがに30cmほどのゆるキャラ風ゴーレムに手を出したりはしないが。
……ん? よく考えたらゴーレムに夜のアレやコレを見られているのか? 俺の部屋の棚からはベッドがよく見えるだろうし。
…………。
今度、白い布でもかけておくか……いや自我を持っているっぽい存在に布をかけるのは気が引けるな。というか勝手に取ってしまいそうだし。
やはり別の部屋を用意するべきか?
あるいはその時だけ出て行ってもらうとか?
……今さらだよなぁ。
まぁゴーレムから何か言われたら対応するって感じにするか。
さて、そんな俺たちであるから朝食の時もすでにルーティンが決まっている。朝の鍛錬で目が覚めている俺やケウ、スレイが朝食の準備。……ちなみに一緒に鍛錬していた姫はダイニングテーブルで二度寝している。
そして朝食ができた頃に二日酔いのエリザとリュアが目覚めてきて、一緒に朝食。準備をしなかった者が食器洗いなどをするという流れだ。
そんないつもの日常。
そんなルーティンが、今日は少し破壊された。
「――パパ~。わらわ~、神殿が欲しいの~」
ものすっごい猫なで声でそんなおねだりをしてきたのは姫。あまりの衝撃的な光景にのんびりとした朝の時間が吹き飛んだ。そして空気が凍った。さすが“氷竜姫”である。
…………。
神話に語られる龍。
ジーン族らに信仰される神様。
創造神の友。
その年齢、たぶん2,000歳越え。
正直、歳を考えろと――
「――あぶな!?」
かぎ爪で首を狙われた。この駄トカゲ、殺意高すぎである。
「女性に年齢の話題をしてはならんぞ? 首を飛ばされても文句は言えんからな」
「いやさすがに文句くらい言いたいんだが?」
「ふむ、しかしおかしいのぉ。異世界ではこういう『ぶりっこ』をすれば男は皆お願いを聞いてくれると教わったのじゃが」
「……それは、リュアから聞いたのか?」
「いや、ユルからじゃ」
「ユル?」
「創造神と言わなければ伝わらんか?」
「あぁ、あのなんちゃって神さまね」
言動がユルいからな。ぴったりの名前だ。
空の彼方から『この完璧キャリアウーマンな私に対してなんてことを!』と抗議の声が振ってきたが、残念ながら俺には届かなかった。
「で? 何でまた神殿を? 居館じゃ狭かったか?」
ケウの話によると、姫は神殿に住んでいたらしいからな。普通の屋敷じゃ満足できないのかもしれない。
「いやいや、この屋敷は中々に住み心地がいいぞ? ベッドはふかふかじゃし、畳というものも趣がある。なにより、我が嫁殿にすぐ夜這いをかけられるのが最高じゃな」
姫の言葉にリュア(土地神)がうんうんと頷いていた。今度鍵をかけようかな……鍵を壊したり開けたりできそうな連中ばかりだな。エリザも幽霊っぽくドアをすり抜けそうだし。
「……神様がこんなにも頭ピンク色で大丈夫なのかこの世界?」
「ふふふ、知らんのか? 神とは例外なくエロい存在なのじゃぞ?」
「凄いな異世界」
例のごとく空から『異議あり! 創造神は汚れなき存在です! だから楽くんは勘違いしないように!』という声が叩きつけられた。まぁ今回は正当な抗議だと思う。
だというのに、友人であるはずの姫と、なぜかリュアがいやらしいニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「なるほどのぅ、ラークにだけは勘違いして欲しくない、と」
『ラブ臭がするね』
ニヤニヤ、ニ~ヤニヤと頬を緩める姫とリュア。初めてあの創造神に同情したかもしれない。
「……おまえらほんと頭の中ピンク色なのな」
神話に語られる神と、土地神。神が例外なくエロいという学説(?)の説得力が大増量だ。
空の上からユルい創造神が抗議していたが、姫は華麗にスルーして話を再開した。
「うむ、なぜ神殿が必要なのかと簡単に説明するとな。……世界樹があったころ、世界樹はこの大陸の隅々にまで根を張り、清浄なる“気”を送り届けていたのじゃ」
説明する姫の横でリュアがドヤ顔をしていた。リュアの前世だという樹木のことだろう。
「しかし邪神によって世界樹が枯れたあと。その根っこがあった穴を通じて淀んだ“気”が逆流するようになったのじゃ」
下水の逆流……とは、ちょっと違うかな?
「大陸中から流れ込む淀んだ“気”によって大地は乾き、生物は死に絶え、魔物が跋扈し……いつしかこの場所は“ 神に見放された土地”と呼ばれるようになったのじゃ」
空から『見捨ててないよ! 創造神は見捨てません! だから楽くん“ 神に見放された土地”の開拓発展よろしくね!』と無責任な声が。
人任せか。
もうここまで会話に参加してるなら降りてこいよと思わなくもない。……あ、いや、無駄に騒がしくなりそうだからやっぱり無しで。
空から嘆きの声が降り注ぐがさくっと無視。俺は姫との会話を続行した。
「察するに、その“淀んだ気”とやらを神殿で浄化するってところか?」
「うむ、話が早い。さすがはわらわの嫁じゃの」
男なのに嫁扱いなのは……もういいや、うん。見た目は完全に女だしな。
「ふふん、魔物なんぞ発生する端から食い散らかしていけばよいが、土地を開拓して『氷竜姫国』を作るのなら発生原因を潰しておく方がいいからのぉ」
「ちょっと待て」
嫁扱いは見逃すにしても、なんだそれは?
「ん? わらわの嫁が国を作るのじゃから、わらわの名前を国名にするのは普通のことじゃろう?」
「お前の普通はだいぶ違う」
そもそもなんで建国することになっているんだ? 確かに領民としてジーン族を受け入れはしたが、それでもよくて領主くらいだろう?
俺の心のツッコミを読んだのかエリザが右手を挙げた。
「ラークが建国するのですから『神聖ラーク帝国』にするべきですわ!」
違った。そうだよなぁエリザは心が読めないもんな。というか名前が長い上に壮大すぎる。
続いてリュアが蔦を上げた。
『いやいや、世界樹のあった場所に建国するのだから『世界樹の国』にするべきだと思うよ』
心を読めるくせに俺のツッコミは無視である。
ゲームとか小説のタイトルみたいだな。
ケウはキョロキョロと皆の顔を伺いつつ、
「えっと、普通にラーク国でいいのでは?」
とかほざいていた。
普通に考えれば建国なんて発想に至らないからな?
「……ラーク殿は魔王なのですから、魔王国になるのでは?」
常識人のスレイが身も蓋もない指摘を。うんまぁそうなるよねー。魔王城もそうだが、この世界の住人はもうちょっとネーミングセンスを頑張って欲しい。
『そういうラークはどんな国名にするんだい?』
「いやそもそも建てないから。そういうことを口にすると現実になるんだ。オレ、シッテル」
『まぁまぁ、たとえ。たとえでいいから。それだけ人のネーミングセンスを小馬鹿にするのだから自信があるのだろう?』
小馬鹿にまではしてないが。そこまで言われて引き下がるほど俺は大人しい性格をしていない。
そうさなぁ……。
「……ラークエン国とか? これは『ラーク』と『楽園』をかけた小粋なネーミングでだな――」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
なぜか揃いもそろって呆れたように首を横に振られた。あれ? そんなにヤバい名前だった?
唖然とする俺の肩をゴーレムが優しく叩いてくれた。ありがとう。そして慰めてくるってことはお前もヤバい名前だと思っているのか……。
名前と言えば、この子の名前も付けてやらなきゃな。……ちょっと自分のネーミングセンスを見つめ直してから、だけどな。
すみません、年末年始は更新お休みします。
次回、1月4日投稿予定です。




