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TS魔王の『モン娘』ハーレム綺譚  作者: 九條葉月
第二章

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2.今さらながら、この世界について


 2.今さらながら、この世界について。



 毎朝、俺は姫と鍛錬をしている。


 最初は身体の『ズレ』を治すためだったが、最近は単に姫との戦いが楽しいからやっているきらい(・・・)がある。


 この数日はスレイも参加するようになり、対抗するようにケウも志願。そして今日は話を聞きつけたジーン族の戦士も十人ほど集まり……結果、ちょっとした軍事訓練のようになっていた。


 戦う機会は少ない方がいいが、だからといって訓練を止めるわけにはいかないからな。軍事訓練っぽくなってしまったことに文句はない。


 問題は、俺の得意武器である槍が折れたままだということか。

 訓練用の木槍でもいいのだが、やはり重さや重量バランスが違うからな。訓練の時でもなるべく本物を使った方がいい。


 ドワーフのドワンが何本か作ってくれているのだが、『この出来ではあの槍に敵わない! そんな槍は渡せません!』と意地になっているので結局手元に槍はないままだ。


 正直、実戦を考えれば大業物1本よりも業物5本の方がいいのだが……。一生懸命やってくれているドワンにそんなことを言う勇気はない。


 結果、得意武器無しな俺は必然的に講師的な役割に収まり。皆が思い思いに訓練しているところを見学していた。


 ケンタウロスの得意技はやはり“足”であり、踏みつけや蹴り技など意外にバリエーションが豊富だ。

 馬って横蹴りもできるんだな。


 そして蹴り技の次に得意とするのが槍。これはあまり上質なものを使うわけではなく、突撃の際に折れたら予備のものに交換すればいいという思想らしい。


 ポーランドの騎兵フサリアと考え方は一緒だな。背中に羽根の飾りを付けさせてみたい。


 こと平地での戦いにおいて人馬族は最強の戦力になり得るらしい。もちろんドラゴンなどの規格外は除くが。


 人馬族の他にも、この世界にはラミアやアラクネ、人魚といった“亜人”が多く住んでいるとか。


 …………。


 エリザと税収についての話をして改めて実感した。俺はこの世界について何も知らないのだ。


 一度は死んだ身。後悔はあるが未練はない。元の世界に戻ろうなんて気はないし、ならばもう少しこの世界について勉強するべきだろう。


 俺がそんな決意をしていると、



『――ラークの願いを聞きつけて。全知全能のリュアちゃんただいま参上ー』



 俺の隣に『にゅっ』とリュアが生えてきた。地面から。世界樹だからそんな真似もできるのだろう、たぶん。


 いわゆる一つの深い仲になってからリュアは俺に対しても敬語を辞めたが……やはり平語の方が自然だな。


「というか、俺の心読んだ?」


『ふふん、一流のメイドさんはご主人様の心くらい読めるものなのさ』


「すごいなメイドさん」


 リュアはメイドらしい仕事はまったくしていないけどな。


 まぁ姫が人の心を読んじゃう系の生物(なまもの)なので、いまさら読心術持ちが一人や二人増えたところで驚かないがな。


『個人的にはもうちょっと驚いて欲しいかな。怯えてくれたらなお最高。ガクガクぶるぶる震えるラークとか絶対萌えるのに』


「俺、そんな風に怯えるキャラだったっけ?」


 いつも通りのバカなやり取りをする俺たちである。


『さて。ラークはこの世界のことを知りたいのだね?』


「まぁ、そうだな」


『博覧強記な私が教えることもやぶさかじゃないね。しかし、タダというわけにはいかない。ここは一つ『教えてくださいリュア先生♪』とお願いをして――』


「……お願いします、リュア先生♪」


 少し屈み、上目遣いでそんなお願いをした俺である。何を隠そうリュア本人から教わった技だ。見た目は美少女なのだからこういう“武器”も使いこなせた方がいいらしい。


 男として違和感が凄いが、まぁ“武器”になるなら使いこなすべきだろう。


『くはっ! 思った以上の破壊力!』


 なにやらにょろにょろと身悶えるリュアだった。自分で教えたくせに。


『うぅ、どうして私は映像記憶の魔導具を持っていないのだろう……』


 ビデオカメラみたいなものか? D.P.交換所で探せばありそうだが、(俺の精神衛生的に)悪用されそうだから黙っていよう。


『……過ぎ去った時を惜しんでいても仕方がない。私たちは前に進まなければ』


 格好いいことを言っているが、実際はアレである。


『まず最初に説明しておくべきなのは、この世界はラークの住んでいた“地球”とほぼ同じ世界だということだね』


「……ずいぶん違うと思うがなぁ」


 魔法や魔物、亜人なんて物語の中にはいたが実在はしないはずだし。


『一番納得しやすいのは星座かな?』


 リュアが右手を挙げ、空を指差した。地球と同じ星座ということだろうか?


『天を見よ! 見えるはずだ、あの死兆星が!』


「北斗○拳かよ」


 ものすごい死亡フラグだな。


 世界樹というのは9つの世界に根を張っているらしいし、異世界である日本のマンガを知っていても不思議じゃないだろうが……。やだなぁそんな俗な世界樹。


 そもそも今は朝。星なんて見えないし。


『いや、ラークの目なら見えるはずだよ? 死兆星はともかくとして』


 真面目な顔で指摘されたので、俺はじぃっと空を見つめてみた。


 なにやらうっすらと星座みたいなものが見える、気がする。


 目がいい人間は昼間でも星が見えるという噂は聞いたことがあるが、俺にそこまでの視力はなかったはず。


 元々この身体はエリザのもの。もしかしたらエリザの視力が異常に良かった――


「いえ、わたくしの目もそこまで良くはありませんわよ」


 エリザがすたすたと歩いてきた。珍しく早起きしたらしい。


「ラークの瞳は赤いですものね。赤い瞳は神話に登場するほどの魔眼。昼間の星くらい見えても不思議じゃありませんわ」


 そういえば、(転生したあとの)俺の瞳って赤色だったな。鏡を見る習慣なんてないから忘れかけていた。


 いや身体は若い女性なのだから日々のお手入れついでに鏡くらい見るべきなんだろうがな、肌の調子も自動回復(イルズィオン)のおかげで万全の状態に保たれるみたいだし、エリザが『ラークには任せておけませんわ! とにかく雑なんですもの!』と乳液やら化粧水やらを塗り込んでくるから見る必要がないというか……。


 ちなみに化粧品はD.P.交換で手に入る。しかもカ○ボウの化粧品だ。異世界にまで進出するとは凄いぞカネ○ウ。


「……ん? 赤い瞳って珍しいのか? スレイも赤い瞳だったが」


『むしろ“死神の瞳(バロール)”と同じ瞳の色で、珍しくないと思えることがビックリだよ』


「同じ瞳の色ってだけで特別視する方がビックリじゃないか?」


『あぁ、異世界人ならそう感じるのかもしれないね。ただ、この世界にとって赤い瞳とは特別な意味を持つ。死神の瞳(バロール)もそうだが……赤い瞳は決して遺伝しない。そして、赤い瞳はこの世界で最初の“勇者”が持っていたとされるんだ』


「勇者か。魔王の俺にとっては天敵に……なるのか?」


 俺の疑問にはエリザが答えてくれた。


「最近はそうでもありませんわよ。先代の魔王は勇者と戦わなかったと聞きますし。魔王がいるから勇者も存在する、という図式は少々古いですわ。そもそも勇者という称号自体も乱立していますもの。今となっては魔王との戦いのために生まれた勇者の方が少ないですわ」


「乱立?」


「本来なら聖剣を抜いた者こそが勇者と呼ばれるのですけれど、別に初代の勇者は聖剣を抜いたわけではありませんし、ならば聖剣を抜かなくても勇者たりうるというのが昨今の考えですわ。最近ではそれぞれの国がそれぞれに勇者を任命しているほどでして」


 この大陸には大小10以上の国があるらしい。つまり最低10人の勇者がいると。


「ありがたみがねぇなぁ」


「ありますわよ? 勇者とは通常その国で一番強い者が任命されるものですし。その『名』があれば一つの戦線を最低限の戦力で維持することも可能ですわ。実際、勇者が病死した途端に滅ぼされた国がありますもの」


 魔法がある世界だから『一騎当千』も可能なのだろう。改めて凄い世界だ。


『ラークも十分一騎当千だと思うけどね』


 リュアがそんな寝言を言っていた。槍一本で千人単位を相手にするなんて無理なのにな。ちょっとリュアは俺のことを過大評価しすぎだと思う。


 俺が否定しようとすると、なにやらざわめきが聞こえてきた。

 どうやら訓練中の一人がケガをしたらしい。添え木をしているから骨折かな?

 回復魔法の使える俺が向かった方がいいだろう。


「ちょいと行ってくるわ」


 エリザとリュアに断りを入れてから俺はその場を離れた。





「……リュア。ラークの“瞳”をどう思うかしら?」


『たぶんエリザと同じ意見さ。赤い瞳は遺伝しない。“初代勇者(ユーナ)”から“ヴィートリアンの聖女”に至るまで。赤い瞳は例外なく“死神の瞳(バロール)”だったとされる』


「亜人であるスレイも“死神の瞳(バロール)”を有していました。……けれど、ラークが例外という可能性も、ありますわよね?」


『否定はしないけどね。中々に分の悪い賭けだと思うよ』


「今はまだ“力”に目覚めていないだけだと?」


『あぁ。スレイの“死神の瞳(バロール)”に刺激されて、もしかしたら目覚めてしまうかも……とは考えていたけれど、幸いにしてまだ(・・)ただの瞳であるらしい。が、魔眼としての力は使えていたからね。そのうち目覚める可能性は十分にある』


「……ラークに話した方がいいかしら?」


『スレイの件があるからそういう魔眼があることは理解してくれるだろうが、下手に意識させると覚醒が早まるかもしれないね』


「そうなると、ラークと接するのが難しくなりそうですわね」


『あの赤い瞳で見つめられながら“自主規制(ピー)”されたり“自主規制(ピー)”されることも難しくなるわけだ』


「…………、……わ、わたくしは何も気づいていないということで」


『エロい妄想たくましい悪役令嬢。略してエロ嬢』


「原形留めてませんわ!? そしてエロくないですわよ!?」



 俺のいないうちにそんなやり取りがあったらしいが、もちろんこちらには聞こえなかった。




次回、24日更新予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] んー、「死神の瞳」としての『バロール』ではなく、「即死無効」として『バロール』があるし…『バロール』という名のスキルを持っていれば必ず瞳が赤くなるということかもしれん(語彙力崩壊。理解できな…
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 王太子一派が独断出来るという事は、つまり国に有能な人達が居ながら王太子一派に相当大きな規模と勢力を許してしまったという事です。だから有能ぽい人が少なくないと…
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