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三十四話

「魔女殿。宴を楽しんでいる場合ではない。早急に頼む。不衛生なネズミを媒介にして病気がもたらされるかもしれない。そうなってからでは遅い」


 呼びつけられて、再度王にせかされた私が部屋に戻れたのは、もはや陽も昇ろうかという時刻だった。

 眠気でふらふらになりながら、部屋にたどり着く。

 ドアを開けて、倒れ込むようにしてベッドに駆け寄る。


「あかずきーん」


 返事はなかった。気配もない。

 赤ずきんは眠っているわけではなかった。そもそもベッドにいなかった。

 眠気がいっきに露散し、代わりに寒気がする。

 赤ずきんと最後にあったのはいつだっただろうか?

 あのパーティ会場だ。

 経過した時間を考えるととっくに戻って来ていてもおかしくない。

 その後、彼はどこに行ったのだ?

 持って来た皮袋の中身を全部ぶちまけ、魔方陣をかきあげた紙を取り出す。

 魔力を一気に込め、赤ずきんの居所を探る。

 いずれの答えも城の中、と出るばかりで、肝心の詳細がわからない。

 それを知るのに必要ななにかが、他人に阻害されているのかもしれなかった。 

 同じ城の中にいるからといって、それはなんら保障にならない。

 赤ずきんは強いが、弱点がないわけじゃないのだ。

 妙な癖のある貴族に捕らえられたのかもしれない。

 なんらかのトラブルに巻き込まれたのかもしれない。

 再度力を込めるが、答えは同じである。

 冷たい汗が頬を滑り落ちた。

 何度も何度も同じ作業をして、へとへとになったところで正気に返った。

 手がかりになるものはないか、ようやく周囲を探る。

 そこでようやくチェストの上に置いてある封筒に気がついたのだった。蝋で封がしてある。

 それをひっぺがし、中身を取り出した。


『俺の部屋に来い。過保護なお前のことだ。来るだろう?』


 紙にはそれだけが書かれていた。流れるような美しい文字だ。

 不愉快だ。

 思わず、それを床に投げつけ、靴でそれをぐりぐりと踏みつける。

 さんざんやって、いい加減紙に穴が空きそうになった所で疲れてやめた。

 部屋に立てかけてあったホウキを持って、ドアから廊下に出る。


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